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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十一章 岐路へ立つ魂 ~決意の果てに~
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第189話 懐かしき

 チャロたちが夕鈴について考察を進めていた頃。

 椰々(やや)が手配してくれたホテルの一室で、まぶた越しに伝わる電気の光が急にまぶしく感じられた佳果は、顔をしかめながらゆっくりと目を開けた。


(……ここは…………あー、零子さんが宿まで送ってくれたんだっけ……つーか俺、もしかして明かりつけっぱで寝てたのか? 服そのまんまだし、のどカラカラだわ)


 寝ぼけまなこでミネラルウォーターを飲み、ふと部屋の時計を見る。針は午前二時をまわっていた。徐々に昼間の記憶がよみがえってきた彼は、思わず飛び起きる。


(……っておいおい! 部屋で少し休んだら、みんなであっちにインするって話になってたじゃねーか! マジかよ、まさか寝過ごしちまうなんて!)


 慌てて楓也から借りていた携帯端末を手に取り、おそるおそるホームボタンを押す佳果。いわゆる鬼電おにでんの履歴があるのではと肝を冷やしつつ、画面を覗き込む。ところが予想に反し、そこには何の変哲へんてつもない、普通の待機画面が表示されていた。


(あれ、一件も来てねえぞ……? 見た感じ、別に壊れてるわけでもなさそうだが……ってうぉ!?)


 瞬間、大きな音とともに、楓也と思われるIDからグループ通話の着信が入る。彼はひとつ深呼吸してから応答した。


「も、もしもし……楓也か?」


『あ、ごめん阿岸君!! ぼく、気づいたら寝ちゃってたみたいでさ……自分でも信じられないんだけど、たった(いま)起きたばかりなんだ……!』


「へっ、お前も?」


『……え?』


 お互いに疑問符を浮かべていると、続けて零子と椰々が乱入してくる。


『わぁ~~~皆様すみませ~~~ん! 家に戻って安心したら、なんだか急に意識が飛んじゃったようで……!』


『ごめんなさい! わたしったら大切な約束をすっぽかして寝落ねおちなんて……!』


『……ほえ?』


『え、えっと……?』


 彼女たちも、やはり佳果たちと同じ反応を示していた。


「……あ~その、なんだ。とりあえず全員ギルティってことでよさそうだな」



 その後、四人はあらためて、おのおの風呂などの支度したくを済ませたらアスターソウルで落ち合おうと取り決めるに至った。そして一番乗りでラムスにログインしたのは佳果である。昼間とは打って変わり、暗くひとのない大通りには、虫がコロコロと鳴いていた。


(っと、この村だけは夜があるんだったな。……時間的にあいつらは夢の中か。めぐる(ガウラ)ほうは……さすがにもうログアウトしてるだろうな)


 彼は夜風に吹かれながら、おもむろに静まり返った広場の中心部へ歩み寄る。

 

(――ラムスが解放されてから、もうどのくらい経ったっけか。……思えば宴の時も、箱舟はこぶねの話をした時も。零子さんとはらった時も、チャロとガウラをれて会議した一昨日おとといも。ここでみんなと言葉をわす度、色んなことが起こって…………あれから俺たちは、うまく前に進めてれたのかな)


 感慨かんがいふけるように満天の星空を見上げる。するとにわかにノスタルジーが押し寄せてきて、今までの出来事がすべて遠い昔のことだったように感じられた。広がる無数の輝きに、佳果は目を細める。


「あら、おかえりなさい」


「え」


 不意に、背後から聞こえるはずのない声が聞こえた気がした。それはひどく耳に残っている声色こわいろで、心をでるような響きだった。佳果は振り向きざまに、思わずあり得ないことを口走くちばしってしまう。


「母さ――」


「こんばんは、佳果くん。こんな夜中よなかにログインするなんて珍しいわね」


「あ……」


 そこに立っていたのはシムルの母、ナノだった。

 手にミトンをはめて、土鍋どなべを持っている。


「? ああこれ? シムルとヴェリスちゃんがね、何やら色々と頑張っているみたいだから……ふふっ、今から差し入れを持っていくつもりなんだけど、良かったらあなたも一緒にどうかしら?」

お読みいただき、ありがとうございます!

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