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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十一章 岐路へ立つ魂 ~決意の果てに~
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第188話 不安定

「……」


 ノーストは無言で現場に近づいた。あちこちに、するど鉤爪かぎづめで引っいたような縦裂じゅうれつが残っている。またみ出してわかりづらくなっているものの、その付近には何らかの液体が飛散ひさんした形跡けいせきもあった。後ろから歩み寄ってきたガウラは、いぶかしげに言う。


「この油めいた地面のシミ……血しぶきのごとく広がっておるのう。しかも大量に」


「ああ。そして、明確な殺意さついをもってきざまれている爪痕つめあととの位置関係を見るに……まるで二体の大型魔獣が争ったといわんばかりの様相ようそうだな」


 ここまでの道中、結界に近づくにつれて魔獣の数は激減していった。それはおそらく、障壁しょへきからフィラクタリウムと同じような魔除けの波動が出ているからだと推察すいさつされる。しかるに壮絶そうぜつな争いの名残なごりがこの場にまざまざと保存されている理由――ノーストとガウラは俄然がぜん、夕鈴たちの行方ゆくえ不穏ふおん気配けはいを感じ取った。やはり火種ひだねとなったのは、の所有権だったのだろうか。


「……いずれにせよ、これが内部まで続いているというのはどうとらえるべきかのう? 結界とは本来、魔に関わる存在も、愛の光がつよい人間も通さない仕様になっていると聞いたぞい。そのセキュリティを突破できるほど破天荒はてんこうな魔獣が現れた、と考えたほうがいいんじゃろうか」


「いや、不適合者による侵入など、われの知るかぎり前例がない。よって可能性があるとすれば……楓也が結界を破壊したあの時、自動修復がなされるまでのわずかな間に入り込んだのやもしれぬな。だがチャロ(あの小娘)はこれを管理しているのが上位存在だと予想していた……神の領域にある者が、そのような失態をさらすだろうか? まして、吾がここを通過した際に魔獣の姿はなかったはず」


「むう……いったい何がどうなっておるんじゃ……」


 謎が謎を呼び、思案顔で立ち尽くす二人。しかし結界をくぐることができない以上、彼らの調査は実質ここで頭打ちとなってしまう。



「――夕鈴とトレチェイスの魂を喰らった魔獣が結界を越えている可能性ですか……これは少々、由々しき事態になってきたかもしれません」


 数時間の仮眠かみんてヴェリスとシムルに起こされたチャロは、ぼやっとしていた頭をフル回転させ、深刻な表情をしていた。


「由々しきって、なんでだ?」


「……くだんの魔獣たちが今もなお、結界内で争っているならば特に不思議はありません。ですが映像の中に、それらしき存在や現象は確認できない……加えて、あそこにあるのは次元のはざまと魔境を繋ぐ門、ただひとつ」


「…………つまり?」


 ヴェリスが不安げにたずねる。

 チャロは少し間をおいて返答した。


「もぷ太さんが結界を解除し、皆様の祈りとわたしが繋がるまでのあいだ……門は開け放たれていた。そしてその際、ムンディは魔法をつかって内部の時を無限に引き延ばしていましたが、まもなく太陽神が出現して時間軸移行が発生――当時、周辺の時空は極めて不安定な状態におちいっていたものと思われます。そう、上位存在であれば秘密裏ひみつり介入できるほどに(・・・・・・・・)


「! 姉ちゃん、それって!」


「ええ。おそらく魔神ましん側に動きがあったのでしょう。あの場の誰にも気づかれず、"魔境の魔獣"を次元のはざまへ送り込んだその真意しんいはわかりねますが……とはいえ、これで一つはっきりしたことがあります。夕鈴は……彼女は、上位存在にとって何か重要なものをかかえているようです」

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