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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十一章 岐路へ立つ魂 ~決意の果てに~
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第186話 ぺこぺこ

(シムル、結果を出したんだ……! でもわたしはまだ……)


 彼の覚醒かくせいを祝福するいっぽうで、自らの無変化に対する焦燥しょうそうが入り混じるヴェリス。その機微きびを見抜いたシムルは、取ってきたお茶を彼女に渡すと明るい声色こわいろはげました。


「大丈夫だぜ。明虎あきとらさんは、おれがこうなればお前も目的が果たせるって言ってたろ」


「え?」


「今のおれは、ウニョウニョとかキラキラはえるけど……黒系のやばいものに関しては鈍感どんかんだ。この状態でお互いの光を重ねれば、きっとそっちもうまくいくはず」


「……!」


 シムルの言葉に導かれ、ヴェリスは彼の瞳に焦点しょうてんを合わせる。すると、そこに映し出された"月の視る世界"と共鳴が起こり、いつもとは異なる無の感覚がおとずれた。


 それは夜の闇をさりげなく照らす月光げっこうのごとく、黒をあばらずして道標みちしるべとなりる、どこまでもおだやかで叙情じょじょう的な俯瞰ふかん。気づけば彼女は、超感覚制御の真髄しんずいに辿り着いていた。



 すっかり夜更よふけとなったラムス。消灯しょうとうする家屋かおくが増えるなか、煌々(こうこう)と明かりのついている離れの仮宿かりやど一軒いっけん


 帰ってきたヴェリスとシムルが静かに出入り口の扉を開けると、案の定チャロが起きていた。彼女は昼間と同じポージングのまま、魔境のモニタリングを続けている。


「おや、戻りましたかお二人とも」


「こんばんは、チャロ」


「ただいまーっと……あれ、兄ちゃんたちはまだ来てないのか。んで姉ちゃんは……ん? もしかして、あれからずっと監視かんししてたの!?」


「もちろんです。夕鈴ゆうりの鍵を握る、とても大切な情報ですからね」


「け、けどさ……ちょっとくらい休まないと、身体にどくだと思うぜ?」


「? なぜ休む必要があるのでしょう?」


「……チャロ、鏡みて」


 ヴェリスの言葉にハテナを浮かべつつも、彼女は鏡の前に立ってみた。そこには当然、見慣れた夕鈴の顔が映っているだけで――。


「!?」


「はぁ~、もしかして気づいてなかったの? 目のクマすごいし、顔色めっちゃ悪いじゃんか。さてはその様子だと、食事もろくにとってなかったんでしょ?」


「いや、その……だってわたしはAIでシンギュラリティ……寝る必要も食べる必要もないのがアイデンティティなのですよ? それはとても合理的かつ生産的な長所であり、……まあ確かにちょっと寂しい部分のある短所とも言えるかもしれませんが……あ」


 謎の弁明を披露ひろうしていると、彼女のお腹がぎゅるると情けない音をたてる。時間軸移行にともない、みずからの存在が変化していたことをすっかり忘れていたチャロは、自己管理をおこたっていたという事実に直面し、両頬りょうほほを手でおおってにわか紅潮こうちょうする。しかしすぐに青い顔に逆戻りし、ふらふらと身体の均衡きんこうを失った。


「うう……おなかがぺこぺこです……あ、気づいたらめまいも……」


「ったくお前といいホント仕方しかたないなあ! ヴェリス、急いで布団を用意してやってくれ! おれは超特急でめしつくるから!」


「わかった!」

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