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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十一章 岐路へ立つ魂 ~決意の果てに~
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第184話 変人の望み

「あ、勝手にった!」


「作りすぎたと聞こえましたが。余っているなら問題ないでしょう」


「しかも盗み聞きしてるし!」


「……ねえ明虎あきとら


 焚き火のゆらめきを見つめながら、割りって彼の名を呼ぶヴェリス。

 シムルと明虎は、同時に彼女のほうへ向き直った。


「ありがとう」


「……はて、なんの話ですか」


「一つ目は、遊園地でわたしを助けてくれたこと。二つ目は宿で黒にやられたとき、シムルとアーリアに祈りの光を教えてくれたこと。三つ目は、次元のはざまで佳果を助けてくれたこと。お礼をいう機会、今までなかったから」


「……また随分ずいぶんと古いネタを持ち出してきたものです。そんな些事さじ、とうに忘れていたというのに……おかげであなたから対価をもらわなければ気が済まなくなってしまった。フフ、悪手あくしゅを打ちましたねぇヴェリスさん」


(マジかこの人……)


 心から誠意を伝えた少女を相手に、大人おとなげない態度で見返りの要求を始める明虎。シムルがドン引きしているなか、ヴェリスは本心を探ろうと彼に超感覚を向けてみた。しかしそこにはうつろな何かが在るだけで、まったく読み取れる情報はない。観念かんねんする他なさそうだ。


「……いいよ。わたしにあげられるものなら、何でも」


「お、おいヴェリス、無理にこたえる必要なんて……!」


「では遠慮なくいただくとしましょうか」


 そう言って彼はヴェリスの持っている木のうつわから魚肉をうばい、平らげてみせた。彼女とシムルは目をしぱしぱさせている。


「ふむ、やはり"万物のささやき"を正確に聞き分けているようですね。味付けまで素材の願いに沿っている。だからじつに自然で、実に美味びみだ」


「あの、明虎さん……?」


「合格です。あなたがたが望ましい方向に育ち、私は今とても気分が良い。対価はこれで十分じゅうぶん、不足はありません」


 彼は満足そうに食器を地面に置くと、おもむろにシムルの頭へ手をかざす。瞬間、辺りはやわらかな光に包まれた。


「! この光、あっちで佳果が使ってた……」


「れ、零気れいきってやつ!?」


「さて、愛のエネルギーが活性化したこの状態ならば、視えずとも感じられる(・・・・・・・・・・)はず。あらゆる物が発する固有の周波数。その先にある集合意識。それらの流れは押しべてどこへ向かっていますか?」


「え? ……ええっと、空の上……かな? ……つまりこれ、さっきヴェリスが言ってた"世界の光"ってことだよな?」


しかり。しかしその波はやがて世界の光すらも超え、太陽の星魂せいこんへと伝播でんぱし、ならされた上で反射する。では反射した波がどこに向かうのか……そのまま天に意識をゆだねて、探知してみてください」


「……意識を委ねる……」


 言われるがまま、シムルは目を開けた状態で天をあおぎ、大いなる流れの果てに意識を融け込ませた。すると明虎の問いに対する答えが、常に視界のなかに存在していたという真実に気づく。


「月……!」


重畳ちょうじょう。そして月の願いとは、太陽とともに世界を照らすこと。既に太陽をたずさえているあなたなら、その声を聞くなど造作ぞうさもない」


 明虎は零気を止め、ゆっくりと歩き出す。

 そうして再び闇にまみれながら、去りぎわに言い残した。


「彼が"その境地"に至れば、ヴェリスさん。あなたも目的を果たせるはずです。それではごきげんよう、ご馳走様(ちそうさま)

お読みいただき、ありがとうございます!

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