表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十一章 岐路へ立つ魂 ~決意の果てに~
185/356

第177話 隠れ里

「! その名は……!」


「……これも因果いんがか」


「? もしかして……オレのこと知ってるんですか……?」


 意味ありげな態度の二人に対し、きつねにつままれたように尋ねる昌弥まさや異形いぎょうと成り果てたその姿に、ノーストは遺憾いかん哀悼あいとう、そして称賛しょうさんの意を込めて返答する。


「昌弥よ。不当な逆境に立たされながらも、よくぞ吾らへと逢着ほうちゃくした。うぬが守った零子(・・)は……今も懸命けんめいに生き、その無念むねんを晴らさんと躍起やっきになっているぞ」


「!?」


 昌弥の心に青天せいてん霹靂へきれきとどろく。硬直する彼の肩をポンと叩いたノーストは、そのまま横を素通すどおりして、元居もといた休憩スペースへと向かった。


「あちらでゆっくり話すとしよう。お互い、知るべき情報が山積さんせきしているしな」



 ひょんなことからき火を囲む運びとなった三名。彼らはノーストがってきた魔獣の串焼くしやきを食べつつ、情報交換をおこなった。


「そう、だったんですか……零子はオレをさがして……」


「今頃わしらの仲間とともに、貴殿きでん痕跡こんせき辿たどっているはずじゃ。しかしまさか、その本人とこうして出くわすことになるとはのう……本当ならばすぐログアウトして、みなに知らせてやりたいところなんじゃが……」


「ありがとうございます、ガウラさん。でもお察しのとおり……零子にこの姿を見せるのは正直、抵抗があります。あの子はつよいけど……それ以上に優しいから。知ればきっと、呵責かしゃく幻影げんえいに取りかれてしまう」


「……」


 ノーストは沈黙した。どうやら自分たちのよく知る零子と、昌弥のなかで時を止めている彼女のあいだには前向きな齟齬そごがあるらしい。彼は少しをおいて、静かに呟く。


「……あの娘の光は、今や燦然さんぜんとしているのだがな。そのような杞憂きゆうなど、容易たやすかすませるほどに」


「え……?」


「いや、捨て置け。それで――うぬは地獄にいた時の記憶がないのだな?」


「は、はい。大穴から出てきたこと自体は薄っすらと覚えているんですけど……気がついたらオレはこの姿になっていて。わけもわからないまま関所せきしょを通されたかと思ったら、この森へ放り出されていたんです。魔獣や魔物が虎視こし眈々(たんたん)と狙ってくる、この殺伐さつばつとした死の森へ……」


(……なんと無慈悲むじひな)


 彼の境遇をおもんぱかり、ガウラが拳を握りしめる。右も左も分からぬ状態でこの地を彷徨さまよい、数多あまたの苦難を強いられる理不尽りふじんな運命。最愛の人を守り抜いた一人の英雄えいゆうが辿る末路として、それはあまりに過酷かこくいびつな悲劇だった。


「だが……うぬは何者にも淘汰とうたされることなく、こうして在り続けている。魔獣や魔物、魔人の区別がついているところからも推量すいりょうできるが……少なからず、こころざしをともにする協力者がいるのだろう?」


「え、ええ……オレと同じ姿をした魔物がつどう、隠れ里があります。オレは早い段階でそこの里長さとおさひろわれたから、ここまで何とかやってこれました」


「ほほう、ノースト殿が言っていた"独自のコミュニティ"というやつかのう。その隠れ里は、この近くに?」


「……申し訳ありません。森のなかにあるのは確かですが、詳しい位置はお教えできないんです。零子の話を聞いた手前、個人的にはお二人を信用しているんですけど……他のみんなは違うでしょうから」


「それもそうじゃな。不躾ぶしつけな質問をしてすまなかった」


「……とはいえ、そこにいる連中は全員が元人間の魂であり、この森の事情にも精通しているはず。夕鈴やトレチェイスについて何か知っている可能性も高い以上、現状これより相応ふさわしい目星めぼしが他にないのも事実だ。なんとか協力をあおぎたいところだが」


「? ちなみにその夕鈴さんや、トレチェイスさんというのは……?」


「吾らが追っている人間と魔物の名だ。夕鈴のほうはガウラと同じく、人間の姿を保っていたという。過去にそうした者を目撃した覚えはないか?」


「人間の姿……いえ、記憶にないですね。でも里長なら何か知ってるかも……そうだ、ならオレがみんなに話を聞いてきますよ。お二人はこのまましばらく待っていてください。魔人のノーストさんがいるなら、戦力的には大丈夫ですよね?」


「ああ、心配要らぬ。では手数を掛けるが、よろしく頼めるか」


「わかりました、さっそく行ってき――」


「その必要はない」


 不意に、視界の端で魔物が出現する。気配けはい皆無かいむで登場したその者は、驚愕きょうがくする全員に向かって「話は聞かせてもらった」と言い放ち、自己紹介を始めた。


「昌弥のいう里長とはそれがしのことだ。名は周治しゅうじ刻宗ときむねと申す。そなたらを、我らが里へと案内させていただこう」

魔境の魔獣は、倒すだけでは蒸発しないため

食べたり道具の素材に利用されたりしています。


※お読みいただき、ありがとうございます!

 もし続きを読んでみようかなと思いましたら

 ブックマーク、または下の★マークを1つでも

 押していただけますとたいへん励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ