表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十一章 岐路へ立つ魂 ~決意の果てに~
184/356

第176話 現れたのは

 アビヒの森は、密林みつりん地帯と疎林そりん地帯が両極端りょうきょくたん樹海じゅかいである。窮屈きゅうくつな迷路を抜け、俄然がぜんひらけた空間に出たガウラとノーストは、その場で同じ方角を向いて座り込み雑談を始めた。こうすれば、視線のぬしが"背後への注意をおこたっている"と誤認して、不用意に接近してくるかもしれないという作戦だ。彼らは自然体をよそおって待ちせる。


「さて、おにが出るかじゃが出るか」


「……どちらであろうとも、魔獣か魔物という点では変わりあるまい」


「わからぬぞ? 案外わしや夕鈴ゆうり殿のように、人間が出てくる可能性も……」


「いや、この作為さくい的な忍び足――やはり魔物のようだ。もう近くまで来ている」


「! ……あ~、そ、それで今日の晩飯なんじゃが……」


 露骨ろこつに他愛のない話題に切り替え、場の雰囲気をカモフラージュするガウラ。彼は演技しながら耳をませてみると、足音は後方こうほう数メートルの地点までい寄り、そこでぴたりと止まった。察するに、聞き耳を立てているのだろう。


「……食い物の話をしていたら腹が減ってきたわい。そろそろ引き返して、夕餉ゆうげにでもありつくとするかのう」


「ああ。しかし毎日同じ献立こんだてというのも流石さすがきた。せっかく僻地へきちまで遠征えんせいしてきたのだ、ここは珍味ちんみのひとつでも見つけて新天地の開拓と洒落しゃれ込もうではないか。……丁度いい獲物えものがそこにいるようだしな」


(!!)


 木陰こかげに隠れていた何者かが、慌てて離脱をこころみる。だが一瞬でノーストに回り込まれ、すぐにガウラも追いついて挟撃きょうげきのかたちとなった。あらわとなったのは、人間大の虫のような姿。


「……!」


「うぬ、人間()がりと見受けるが……吾らに何用だ。食材となりたくなければ、すみやかに素性すじょうを明かせ」


 思ってもない言葉で威圧いあつするノースト。意外と乗り気である彼に小さく笑ったガウラは、狼狽うろたえる魔物の横まで行って優しく問いかけた。


「驚かせてしまってすまぬな。わしはガウラ、あちらはノースト殿じゃ。彼はああ言っているが、本当は取って食うつもりなど無いから安心せい。して、貴殿きでんの名は?」


「っ……えっと……そのまえに……ひとつ教えて欲しいんですけど……」


 まったく敵愾心てきがいしんを示さず、ぽつりぽつりと敬語で応対してくる魔物。二人は彼が少なくとも争いを望んでいるわけではないと確信し、顔を見合せてうなずいた。


「よかろう。申してみよ」


「あなたは……魔人、ですよね? そしてそっちのおじいさんは人間……普通に考えたら、あり得ない組み合わせ……だと思うんですけど……どうしてこんな場所を探索していたのですか? しかも、二人とも親しげに……」


「ぬ? んんー、それを一言で語るのはなかなか難しいのう」


「……吾は魔人、此奴こやつは人間。その見立みたては間違っておらぬし、連れ立っている事情を話すのもやぶさかではない。しかしどこの馬の骨ともわからぬ不審者ふしんしゃにこれ以上の譲歩じょうほは難しいな。諸々(もろもろ)知りたくば、次はそちらが名乗るのがすじではないか?」


「……はい、おっしゃるとおりですね。あとをつけたことも含めて、たいへん失礼しました」


 魔物はそう謝罪し、さらに続けた。


「オレは……この姿になってからの名前はないんです。そんなものはらないって……最初に拒絶したから」


(ふむ?)


「だから生前の……人間だった時の名前を名乗らせてもらいます。オレは於東おとう――於東昌弥(まさや)といいます」

お読みいただき、ありがとうございます!

もし続きを読んでみようかなと思いましたら

ブックマーク、または下の★マークを1つでも

押していただけますとたいへん励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ