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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十一章 岐路へ立つ魂 ~決意の果てに~
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第175話 朧

「魔獣……アスターソウルにおいては、人々の負の感情から発生している存在と聞いておるぞい。確かおぬしらは"尊厳"の有無で識別しているのじゃったな」


しかり。だがこの地の魔獣は当然、人間でなく魔物のそれを源泉とする。尊厳を持たぬのはいずれも同じだが……魔境こちらのほうが相対的に凶悪きょうあく個体こたいが多い。また向こうとは違っておのれ以外の全てを破壊の対象とするため、われらが懐柔かいじゅうすることも叶わぬ。もし遭遇そうぐうした場合は、即刻そっこく死合しあいだ」


「ぬう……するとこの世界は、実質的に人間()がりのしゅつごくしゃを除いて三竦さんすくみのごとき様相をていしているわけじゃな」


「ああ。もっとも、人間上がりとて縄張なわばりをおかされれば知略をめぐらせ、ステルスで殲滅せんめつ行動に出るといった苛烈かれつさを発揮はっきするケースもある。……うぬはそのような殺伐さつばつとした次元の土を踏みしめているのだと、ゆめゆめ忘れるなよ」


「肝にめいじておこう。ま、わしにはノースト殿という規格外きかくがいのボディガードが付いとるがのう」


「それも今に限った話だ。いずれは己の力のみで、いかなる相手にも動じぬ高みまでい上がってもらう。手酷てひどく鍛えるつもりゆえ、覚悟しておけよ」


「やれやれ、とんだ鬼教師もいたものじゃ……」


「ふっ。いつかいただきに手が届いたあかつきには、吾に挑んでくるがよい。越えられぬ壁として立ちはだかってやるぞ」


「! ヌハハ、そりゃ楽しみじゃわい! わし、こう見えて現実世界(あちら)ではプロゲーマーをくだすことを生き甲斐がいにしとった時期もあるんじゃ。さながら全身がコントローラーの本作――トコトンやり込んで、貴殿きでんくだしてみせようぞ!」


 不敵にキラリと目を輝かせるガウラ。途中から何を言っているのかよくわからなかったが、彼のなかに眠れる獅子ししがいるのは理解できた。自分も楽しみだ――ノーストはまた一つ、生きる喜びを得たことで自然と笑みがこぼれている事実に驚く。


(……此奴こやつらの光の前には、呪われた宿命しゅくめいおぼろとなるか。うぬが見ていたら、さぞかしはやし立てたのだろうな。……あれからまことに多くの変化があった。近々、墓参りに行って詳しく報告してやるとしよう)


 かつて失った恩人をおもい浮かべるノースト。彼は軽くなった心にいくばくかの痛みを感じつつ、ほがらかに意気込む老人を横目に歩を進めた。



「道中は枯れ木ばかりじゃったのに、ずいぶん鬱蒼うっそうとしているのう」


 アビヒの森へ入った二人は、毒々しい色の葉をつけた木々を見上げている。縦横無尽じゅうおうむじんに伸びているそれらは、天然の迷路を形作かたちづくっていた。


(トレチェイス殿はこんな場所に一人で……?)


(パリヴィクシャの話によれば、奴は戦闘能力にひいでているわけではなかったようだ。それが無謀むぼうにも、敵のふところに飛び込んだ動機どうき……よもや……)


 考え込む彼らは、周囲を警戒しつつ手がかりを捜索そうさくする。途中、ガウラがしきりに後方を気にし始めた。ノーストが小声で問う。


「どうした」


「視線を感じる」


「視線? ……われには何も感じられぬが、たしかか」


「間違いない。しかしノースト殿が感知できないとなると……これは敵意のたぐいとは異なるのやもしれぬな。どれ、ここはひとつおびき寄せてみるか!?」


「……うぬ、なぜ浮き立っている?」


「クク、バレてしまったか。いやぁ、わしこういう緊張感にあこがれていたんじゃよ」


「……まったく、肝にめいじると言ったばかりの身空みそらなげかわしい。だがまあ、馬鹿ばか正直に進んでいるだけではらちが明かぬのも事実。よかろう、少し開けた場所を見つけたら、しょう休止きゅうしするふりをして油断をさそうぞ」

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