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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十一章 岐路へ立つ魂 ~決意の果てに~
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第173話 愛のたま

「弟だと?」


「はい。あれとは同時期にここで発生しましたゆえ」


「……だがアスターソウル内には派遣はけんされていなかったはず。となると、ムンディ(あの魔神)抜擢ばってきからはまぬがれていたわけか」


「そうなりますね。そのあたりの基準はとんとわかりませぬが……して、弟をお探しの理由は如何いかに?」


「うむ、実はな」


 ノーストが経緯いきさつを説明する。パリヴィクシャは静かに彼の話を聞いていたが、途中からしかめっ面になり、何かを思案している様子だった。


「――以上が大まかな事情だ」


「……あれが人間と行動をともにしていたとは」


したがって、われらは其奴そやつとの面会を所望する次第。手間てまをかけるが、取りぎを願えるだろうか」


「……それなのですがノースト様。われがここへ帰還した際……トレチェイスは既に行方ゆくえをくらました後だったのです」


「なに?」


「若いしゅが言うには、かなり前にふらっと出ていったきり戻って来ていないそうで。この地において便たより無しは死と同義どうぎですから、我はてっきりどこぞでんでいるものとばかり考えておりましたが……」


「むう、つまりパリヴィクシャ殿もまた、彼の居所いどころつかめていないわけじゃな」


面目めんぼくない。……ただ今の話をうかがった上で俯瞰ふかんすると、ふく首長しゅちょう証言しょうげんしていた内容が俄然がぜん気がかりとなってまいります。丁度ちょうどいま、その件で集会を開いている頃合ころあいなのですが」


「ああ、先ほど一瞬だけ顔を出したぞ。といっても、うぬの所在を確認してすぐに立ち退いたのだが……そういうことならば、改めて話を聞きにゆくとするか。ではパリヴィクシャ、協力に感謝する。身体を冷やしてすまぬな、これからも存分にはげめ」


 謝罪し、きびすを返すノースト。だがパリヴィクシャは「お待ちを」と引き止めた。


「どうした?」


「……たいへん不甲斐ふがいないのですが、副首長らは頭でっかちなきらいがありまして。議論を重ねるうち、話があらぬ方向へ進むことが往々にしてございます。かえって混乱をまねくやもしれぬゆえ……僭越せんえつながら、よろしければ我がご説明をと存じます」


「……ふっ。うぬはなぜ出席していないのかと思えば、そのような背景があろうとはな」


「も、申し訳ありませぬ……すべては自分の至らなさが原因で……」


「よい。魂というものはそれぞれ進捗しんちょくが異なれば、得手えて不得手もある。そのことわりのなかで互いが等身大に生きるため、適切な距離をたもち、自らに相応ふさわしい在りかたで役割にのぞむのは決してずべき行為こういではない。……今まで通り、うぬらはうぬらの流儀りゅうぎつらぬいてこの魔境を処世しょせいしてみせよ」


「! ありがとうございます、ノースト様」


(……フフ、さすがはノースト殿。しかしこの器量きりょうを肌で感じるたび、わしは貴殿きでんに大きな光を垣間かいま見てまないのじゃが……佳果(たち)から又聞またぎきした話によれば、魔物や魔人である彼らの魂において、魔の比率は70%を下回ることがないという。ふむ、例の魔神にまみえる機会があれば、そこのところ詳しくたずねてみるとしようかのう)


 ガウラが感心と関心を示すなか、パリヴィクシャは続けた。


「では早速、証言の内容についてですが……姿を消す数日前、弟は妙なことを吹聴ふいちょうして回っていたというのです」


「妙なこと?」


「ええ。なんでも『これでおれっちは愛に困らない』などと言っていたそうで」


(愛に困らない……)


「何人かは、あれが実際に巨大な愛珠あいしゅを持っているのを見たらしく……いかんせん出来できの悪い弟でしたから、自力で獲得かくとくしたとは考えづらいですね」


「? ノースト殿、アイシュとは?」


「先刻、吾が生成したエネルギーかいの正式名称だ。ちなみにもう一方を魔珠ましゅと呼ぶのだが……愛珠に関しては、感情が発達している者ほど良質で大きな個体を生成しやすい。それが人間である夕鈴ゆうりから渡されたものだとすれば、諸々(もろもろ)辻褄つじつまは合う。おそらく失踪しっそうの理由もそこに関係しているのだろう。なにせ楓也が両名を発見したのは結界付近(・・・・)だからな」


おっしゃるとおりかと」


(……?)


 いぶかしがるガウラをよそに、さらにパリヴィクシャは言った。


さいわい、トレチェイスがどこで愛珠を得たのかは把握しています。ここから数里すうり南下した先にある、地獄の関所せきしょ付近――"アビヒの森"です」

セリフが多めの回になりました。


※お読みいただき、ありがとうございます!

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