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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十一章 岐路へ立つ魂 ~決意の果てに~
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第172話 寸志

「着いたぞ」


 魔境を探索中のノーストとガウラは、"候補"であるリザードマンの集落に到着した。岩山の所々に洞穴ほらあなが空いており、彼らはここをねぐらとして暮らしているらしい。外には焚き火を使って料理をする者、それを美味しそうに頬張ほおばる者――かたや、やりを持って訓練する者、集会を開いている者なども散見さんけんされる。みな生き生きと活動し、コミュニケーションを取り合っている。


「ほ~……なんだか感動するのう」


「感動? なぜだ」


「わしら人間は基本的に、言葉で意思疎通をはかり、文化をきずけるような知的生命体を自分たち以外に知らぬのよ。佳果から聞いたが、彼ら魔物は感情を持ち、思考し、あまつさえその魂に愛をゆうしておる存在なのじゃろう? ……異次元にこうした同胞(・・)いとなみがあったとじかに知ることができて、わしはおのれが見ていた世界がぐんと広がり、明るくなったような気がするんじゃ。ヌハハ、たかぶってきたわい!」


(……このくらき地で、顔をほころばす理由がそれとはな。われがうぬのような視点を見出みいだしたのは、つい先日のことだというのに)


「さあノースト殿、さっそく聞き込み調査と参ろうぞ!」


「……ああ。だがうぬが先行するとややこしい。吾のあとに続け」


 そう言って彼は、つかつかと集会の行われている場所へ歩み寄った。


「むむ……? あ、あなたはノースト様ではありませんか!」


「久しいな。なに、邪魔()てするつもりはない。取り急ぎ首長しゅちょうがどこに居るかだけ述べよ」


「……どうやら訳ありのご様子ですな。パリヴィクシャ様なら、今は修練場に」


「そうか。ご苦労くろう


 ノーストは何かの丸薬がんやくおぼしき品を即座に二つ生成すると、礼としてテーブルへ置き、早々にその場を離れた。後ろに追従ついじゅうするガウラは当然リザードマンたちから奇異きいな目で見送られたが、あまり気にすることもなく興味津々(しんしん)で質問する。


「今の、丸い白黒しろくろはなんじゃ?」


ひらたくいえば愛と魔力のかたまりだ。この地において、魔物は食事の他にああしたエネルギーかいを摂取して生きている。本来は奴ら自身の力で集めるべきものだが、ここの者どもは日頃からそれなりに働いているからな。ほんの寸志すんしだ」


「なるほどのう(こちらにも色々とルールがあるようじゃな)」


 そして二人は、そのまま修練場と呼ばれている場所へ至った。とりわけ硬そうな黒い岩に連続攻撃を繰り出し、汗を輝かせている者がいる。


「はぁ……はぁ…………ん? ノースト様、如何いかがされましたか? 後ろにいるのは……人間のようですが」


「精が出るなパリヴィクシャ。此奴こやつはガウラ、陽だまりの風の一員だ」


「お初にお目にかかる、ご紹介に預かったガウラじゃ! 以後、見知りおきを」


「陽だまりの……? うむ、われはパリヴィクシャと申す。その節は世話になった」


 彼は布で汗を拭き取ると右手を差し出し、ガッチリと握手あくしゅを交わした。


かたじけない。じゃが自分はその件、特に役立やくだってはおらんからのう。ギルドのみなには貴殿きでんがそう言っていたと伝えておくが、わしに対して恩義おんぎを感じる必要はないぞい」


「また妙ちくりんな人間が出てきたものだ……そうか、あの佳果なる人間が"門番の試練"をしのぐ心を得るため、根回しした者が現実世界(あちら)にいるとは聞いていたが――察するに、貴様のことのようだな。ならばたとえ仲間の手柄てがらだとしても、謙遜けんそんする必要はなかろう。胸を張るといい」


「! ……ヌハハ、まこと忝ない」


 ガウラがとても嬉しそうに笑う。

 彼らの挨拶あいさつを見届けると、ノーストは本題に入った。


「してパリヴィクシャ。うぬはトレチェイスという名に心当たりはないか?」


「!? ノースト様、なぜその名を」


(おお、もしや初っぱなから……?)


わけのちに話す。知っている情報があるなら教えてくれ」


「知っているも何も……トレチェイスは、が弟です」

当時は名前が出ていませんでしたが、

パリヴィクシャの初出は第74話~第75話です。


※お読みいただき、ありがとうございます!

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