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第154話 月夜

 食器を片付けた三人は、明日のゲームプレイに備えてそれぞれ部屋へ戻ることにした。めぐると別れ、月あかりの差し込む長い廊下ろうかを進む佳果と楓也。


「にしても、ここまであり得ねぇ現象を起こせる力を持ってんならよ。太陽神っつーのは、なんでみんなが幸せになれるような時間軸に移行しないんだろうな」


「……そっか、阿岸君はまだ自由意志について詳しく聞いたことがないんだっけ」


「自由意志? そういやちょいちょい聞く単語だが……なんなんだそりゃ?」


 楓也は立ち止まり、窓から顔をのぞかせるまるい月を見上げて言った。


「ぼくなりの言葉で表すなら、愛に向かって前進したり、魔に引きずられて後退したり。そういうおのれ進退しんたいについて、自分自身で決められる意志のこと……かな。半分くらいは波來ならいさんの受け売りだけど」


「あいつの? ……んー、つまり"全てはてめぇのこころ次第"って意味か」


「あはは、そっちのほうがシンプルでいいや! ……正直ぼくも、まだ完全に理解できたわけじゃないんだ。でも神様をやってる黒龍様やムンディ、近い存在のチャロさん、つかえているウーに他の精霊様……その全員が、これでもかってくらいそれを重んじているのはわかる」


「何かにつけて、やれ言えねぇだのできねぇだのって……こっちの追及ついきゅうかわしまくってくるアレも、その一環ってことか?」


「ふふ、たぶんね。……最近わかるようになった気がするよ。アレってさ、人が自由に生きるための配慮なんだろうなって。ぼくらはきっと、幸せになるのも不幸になるのも自由なんだ。だから神様みたいな存在は、その可能性を奪うような真似まねを――自由意志の侵害を忌避きひするのかもしれない」


「……だが俺はあの時、その侵害ってやつをチャロ(あいつ)の向こうにビリビリ感じてたぜ」


「……うん。しかもその流れで、太陽神様は時間軸移行を起こしてる。……ぼくらが元々いた時間軸、よほどフェアな状況じゃなかったんだろうね」


 そこまで言うと、楓也は「ふわぁ」と一つあくびをして涙を浮かべた。


「きっと他のみんなも、ぼくらと同じ想像をはたらかせてると思う。……まあいずれにせよ、今はこの時間軸が正規ルートだと信じて進むしかないんだけどさ」


「…………だな。んじゃ、そろそろ休んどくか」


 おやすみと手を振って分かれる二人。部屋に戻り床にいた佳果は、手枕てまくらをして高い天井の闇を見つめた。


(喋りまくったら疲れたが、おかげでだいぶ頭はスッキリした……明日はいい状態で夕鈴あいつの話に集中できそうだ)


 ラムスで解散したおり、チャロは夕鈴が魔境にいた件について翌日に話すと約束してくれた。あの時はなぜ先延ばしにするのかと思ったが、こうしてクールダウンしてみると、結果的にそのほうが良かったと理解できる。彼女の気配きくばりに感謝しつつ、佳果は眠りに落ちた。

人を不自由にするものがあるとしたら、

それは人自身が自由の先に見つけたものなのかもしれません。


※お読みいただき、ありがとうございます!

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