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第148話 空白

「……い…………おい………」


 意識のはしっこで、誰かの呼びごえが聞こえる。どうやら現在、自分は気を失っているらしい。何故なぜこのような事態になったのか――佳果は明晰めいせきのなかで、思い出せる最新の記憶を手繰たぐり寄せてみた。すると、圧倒的な"光"が脳裏いっぱいに広がる。


(あんな白いもんが、世の中には存在していたんだな……)


 目をおおってもなお、まぶしすぎて正面からは受け止められない光。それでいて、優しくすべてを包み込むような暖かいエネルギーの波動。あれを己の語彙ごいから、最もふさわしい言葉をもちいて表現するならば。


(……"神"ってやつか……)


「おい! しっかりしろ!」


 ほうける彼の頭に、さっきよりも鮮明せんめいになった呼び声が響きわたる。よくよく耳をませてみれば、これはおそらく見知った者によるかつだ。覚醒度が急上昇し、バチッと目覚める佳果。視界に入ってきたのは、果たしてこの男だった。


「あんたは……ノーストさんじゃねーか」


「! 意識が戻ったか! 待っていろ、いまみずを持って――」


「いや、大丈夫だ」


 気合きあいで体にむち打って、上半身を起こし周囲を見渡す。遠方に見える荒野と山岳地帯、そしてこの独特の空気感――場所はラムスの村で間違いないだろう。


 他の仲間たちは、少し離れた位置にある広場のほうに姿を確認できた。ゼイアやナノをはじめとして、村人たちが総出(そうで)で介抱を始めている。


「……俺たち、帰ってきたみてぇだな」


「佳果よ、何があったのだ? 先刻せんこく、うぬらは意識のない状態で突如この村に転位してきた。見慣れぬ小娘こむすめも混じっているようだが……あやつ、たところ神の領域にる者だろう? 一体どうなっている」


「小娘?」


 もう一度広場(ひろば)を凝視してみると、そこにはチャロがいた。しかし彼女も何が起こっているのかわからないらしく、村人たちから次々と差し伸べられる手に、ひたすらドギマギする様子が見受けられる。


「あ~、あいつはそんなんじゃなくて……っと、ひとまずみんなと顔を合わせてから話したほうが良さそうだな」


 チャロの横で、楓也やヴェリスが血相を変えて誰かさんの捜索そうさくを始めている。このまま彼らに無駄な心労をかけるのは忍びない。


「……承知した。だがのちほど洗いざらい話してもらうぞ? うぬらが三ヶ月(・・・)も行方不明になっていた理由を」


「……は?」



 やがて場の収拾しゅうしゅうがついたころ

 魔境へ出発する前と同じ要領で、陽だまりの風はアーリアの用意した席に着座し、今回の件について話し合う運びとなった。


「で、話を整理するとだ。俺たちは魔境の玄関口でエリアⅧに移動したあと、チャロ(こいつ)のくだらねぇカミングアウトを一通り聞き終えたところで、太陽の雫から謎の上位存在が顕現けんげんした。で意味深いみしんなセリフをきやがるなぁと思っていたら、なぜかこの村に戻ってきてたわけだな」


「……くだらなくないですもん……」


 ふくれっ面でなみだのチャロに苦笑して、楓也が補足ほそくする。


「そして、その間にこっちではどういうわけか三ヶ月もの時間が経っていた。ノーストさんはとっくに魔物たちの魔境入りを完了させたのに、ぼくたちが待てど暮らせど現れないものだから、不審ふしんに思って毎日ラムスに様子を見に来てくださっていたと」


「ああ。普及計画を宙ぶらりんのままに、どこをほっつき歩いているのかとみなもたいそう心配していたのだぞ」


「んー、つっても俺らだって正直(しょうじき)、意味のわからねぇ状況だしな。さっきちらっとログアウトしてみたら、あっちはあっちで全然覚えのない天井に出迎でむかえられちまったしよ~」


「……あの瞬間、わたくしたちの身に何が起きたのでしょう。アイちゃん、心当たりはありませんか?」


 アーリアがすがるように問いかける。すると彼女は真面目な表情に戻り、少し思案してからこう言った。


確証かくしょうはありませんが……おそらく時間軸の移行(・・・・・・)が起きたものと推測されます」

新章突入です。


※お読みいただき、ありがとうございます!

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