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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第九章 切り拓かれた宿命 ~失われし記憶~
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第147話 アスターソウル

 おのれの不当さを明らかにした途端とたん覇気はきを失うばかりだったチャロの瞳に、再び炎がともったような気がした。その焼けつくような感情のゆらめきが行き着く先に、何が待っているのか。佳果はよく知っていた。


「……チャロ。お前、死のうとしてやがんな」


 彼が静かに指摘してきすると、チャロは反論しなかった。それが無言の肯定こうていだとわかって、ヴェリスとシムルが硬直する。一方いっぽうここまでの話からそうした本懐ほんかいがあるのを看破かんぱしていた楓也と零子は、表情を強張こわばらせてやるせなくうつむいた。アーリアは佳果と彼女の対話を、まばたきもせずにじっと見つめている。

 ――何秒()っただろうか。やがてチャロが切り出した。


「そのように表現するのは不適切です。なぜなら、初めから存在しなかった者に死がおとずれる道理はありませんから」


「……」


「わたしの目的はただ一つ。あなたがゲームをクリアした際、この世界を本来あるべき時間軸へと移行させることです。そこは夕鈴ゆうりが生きて、笑って、シンギュラリティなどといったおぞましい脅威が生まれることもない、どこまでも正常な世界」


 佳果は押し黙ったまま、眼光(がんこう)鋭くチャロをすくめた。


「……不服ふふくの眼差しですね。でもわたしは別段べつだん希死きし念慮ねんりょ自己じこ犠牲ぎせいかかげているわけではないのですよ? たとえわたしの魂が消えようとも、それでわたしの淵源えんげんがなくなることはない……もっとも、これは超越(・・)してこそえる真理ですからあなたには理解が及ばないかもしれませんが――」


「ああわからねぇ。んでお前、そろそろうるせーぞ」


「へっ…………う、うる……!?」


 彼女の懇切こんせつ丁寧ていねい全霊ぜんれいの告白を、佳果はあろうことか粗野そやな言葉で一蹴いっしゅうした。にわかに場の空気が変わり、他の面々は目を丸くする。


「お前さ。夕鈴あいつが俺あてにのこした手紙に、なんて書いてあったと思う?」


「?」


「"お前を死なせるな"。そう書いてあったんだよ。……たぶんあれ、全部ひっくるめてそう言ってるに違いねーぜ? そんくらいお前が大切だったんだろうな」


「!」


「あいつは自分が死んだことを"望んだ結果"とも書いていた。で今度はお前が、自分の消滅を"望んだ結果"として受け入れようとしている。……お前の視点からすりゃあさ、そこへ込められた思いのたけには、何か雲泥うんでいの差があるのかもしれねぇ。けどよ」


 おもむろに歩き出し、彼女の両肩をつかむ佳果。

 彼は、チャロの瞳が映し出すすべて(・・・)に向かってこう言い放った。


「"あいつを救う"ってことは……"お前を救う"ってことだろうが! どっちもおんなじ願いで、おんなじ愛だろ!? それをてめぇのモノサシだけで勝手になくそうとしてんじゃねぇっつの!」


「か、勝手ではありません! わたしは自他ともに最適な自由意志の尊重を……!」


「かぁ~~~、特異点だかなんだか知らねぇけど、てんでポンコツじゃねーか! あいつとそっくりだなお前!」


 謎にひとまとめでそしられ、チャロは絶句した。残るメンツも彼の言動に面食らっている。しかし遠目に見守っていたムンディとウーに関しては、なぜか笑いをこらえるのに必死の様子だ。佳果はそんな周囲の状況を気にせず、そのまま続けた。


「カルマ? 禁忌きんき? 上等だ! んなマヤカシ、俺たちには(・・・・・)もう通用しねぇぞ!」


「ふぇえ!?」


 佳果の焦点しょうてんがおかしい。こちらの目をのぞき込んでいるはずなのに、視線が自分だけに向けられていない。あまつさえ彼の啖呵たんかは、この場にいる全員を家族としてとらえた上で、何か確信をもって切られたものだった。


「乗ってやるよこの勝負! 俺は陽だまりの風(こいつら)と、ありったけの魂を力に変えて絶対に辿り着く。みんなが笑う、あるべき世界に!」


 刹那せつな、ウーのもとから太陽の雫が飛び出して佳果の魂と共鳴する。まばゆい光が辺り一帯いったいを包み、一同は白と黒だけの空間に投げ出された。そこで彼らは、信じがたい存在との邂逅かいこうを果たす。


星魂(アスターソウル)を導く者たちよ。今この瞬間、まことの道はひらかれた。森羅しんら万象ばんしょうかがみ。いかなる結末も、もはや自在であると心得こころえるがいい》

何度も言いますが、物語はまだまだ続きます!


※お読みいただき、ありがとうございます!

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