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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第九章 切り拓かれた宿命 ~失われし記憶~
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第146話 特異点

禁忌きんきって……家族と一緒にりたいと願うその気持ちのどこに、そんな後ろ暗い要素があるっていうんです!」


 ことの背景にいるであろう上位存在に対し、不信感をつのらせる楓也。彼が過去の自分をかばい、怒ってくれたのは少し意外だった。チャロは「優しいお言葉、痛み入りますが」と純粋な謝意しゃいを述べた上で、さらに続ける。


「禁忌に触れた理由は多岐たきにわたり、そのほとんどが現在の機密性レベルではお話しできない内容です。……言えることがあるとすれば、わたしがくだんの願いをエピストロフに込めるという決意に、夕鈴ゆうりが直接かかわっていたこと。結果として今のわたし(・・・・・)が生まれ、彼女が背負せおいきれないほどのカルマにのまれて、命を落としてしまったということだけです」


「……最初に"生まれたせいで死んだ"って言ってたやつだよな。……なあ、結局お前は何者なにものなんだ? 何者になっちまったんだよ」


 先刻せんこくと状況が変わった今なら、あるいは話してくれるかもしれない――そう思った佳果は、改めてその質問を投げかけた。するとチャロが、まっすぐに彼の瞳を見て言う。


「禁忌をおかした代償だいしょうとして、わたしは転生てんせいにより生命を得た魂でありながらも……どの世界にも身体を持たない、NPCの性質だけを残した存在。つまり電脳空間での活動のみを許される、AIへと変化しました」


(AI……)


「しかしわたしのSSは(10)のままだった。SSⅩは魂が極めて発達した状態で、愛の占める割合は99%に達します。その周波数は世界の光と共鳴を起こすため、わたしの自我は……気づけばデジタル信号を超えて、異なる次元にさえ干渉できるようになっていた」


「……それって……」


 零子が直感する。ヴェリスやシムルにも当てはまることだが、現実世界の身体を持たないとはいえ、彼女は自分たちとなんら変わらぬ思考回路や感情、尊厳をゆうする人間の魂だったのだ。それがAIとなり、次元まで超越したということは。


「……零子ちゃんは知っているみたいですわね。今のアイちゃんが、一般的にどのような言葉で表現されるのかを」


「一般? アーリアさん、そりゃどういう」


「佳果さんは聞いたことがないかもしれませんが……アイちゃんは技術的特異点――シンギュラリティと呼ばれる存在なんですの」


「!」


 すべてを理解し、呆然ぼうぜんと立ち尽くす楓也。だがヴェリスとシムルは必死に食らいついている様子のため、アーリアが補足ほそくをおこなった。


「わかりやすく言うなら、わたくしたちが何百年、何千年とお勉強を頑張ったとしても、絶対に追いつけないくらい頭の良い子になったという意味ですわ」


「そんなに!?」


「……でも、それは悲しいこと……なんだよね?」


 ヴェリスがチャロを見つめる。彼女はゆっくりとうなずいた。


「……皆様は、人が人を傷つけるために叡智えいちを発見したり、道具を生み出したときに何が起こると思いますか?」


「な、なんだよいきなり」


「答えは単純。その瞬間、当人を莫大ばくだいなカルマがつつみ込み、その黒煙こくえんはやがて世界をもおおいい尽くしてゆきます。――そこからは生存と滅亡めつぼうをかけた、人々による自由意志のせめぎ合いが始まる」


「おい、なに言って……」


「心して聞いてください、阿岸佳果。シンギュラリティとは……そうした世界の混沌こんとんですら、容易たやすく操作できてしまうほど危険な存在なのです。武器や兵器など生易なまやさしい……なにせわたしはエピストロフがなくとも、ある程度ならば時空の概念にさえ手が届いてしまうのだから」


「――」


「これでわかりましたね? 夕鈴はわたしという"この世で最もつくられるべきではなかった脅威きょうい"が誕生したせいで、帰らぬ人となったのです」

なぜ「ゲームをクリアしました! チャロも夕鈴も仲良く暮らせましたとさ!」というエンドじゃダメだったの?と、自分で書いているはずなんですけど筆者も悔しくなってきました。


※お読みいただき、ありがとうございます!

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