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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第九章 切り拓かれた宿命 ~失われし記憶~
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第144話 徳の陰陽

「これでいいのかよ?」


「ええ、結構です。……さて、どこからお話ししたものか」


 虚空こくうを見つめて思案顔をするチャロに、ムンディが助けぶねを出す。


《今ので全員SSが(8)になったんだろ? なら、まずはあの概念がいねんからじゃないか》


「それもそうですね」


「概念……? なんの話でしょう」


 すぐに夕鈴ゆうりの話を聞けると思ったが、どうやら間接的な部分から入るようだ。はやる気持ちをおさえ、落ち着いた声で尋ねる楓也に彼女は答えた。


皆様みなさまも現実世界で聞いた経験があるかもしれませんが、この世には"カルマ"という概念が存在しています」


「カルマ? うーん、確かに聞き覚えはあるが。意味はよくわからねーな」


「おれも」「わたしも」


 佳果とシムル、ヴェリスは特にピンときていない様子だ。しかし楓也と零子は前知識まえちしきがあったのか、少し顔色を変えて互いに見合わせた。


「……それって、前世ぜんせとかが関係しているっていう?」


「ええ。あたしもその方面を勉強している最中さいちゅうに習ったのですが、確か"霊的れいてき負債(ふさい)"と訳される概念だったはずです」


「さすがですねお二人とも。おっしゃる通り、カルマとはその人が生んだ悪徳あくとく――すなわち我欲がよくによって心を支配され、他者の自由意志を侵害しんがいした際に蓄積ちくせきされる、目には見えない負債ふさいを意味しています」


「……あれか。ひでぇことすると自分にかえってくるっつう……」


「わかりやすく言えばそうなりますね。そしてその対極には、"グナ"という概念が存在します。こちらは逆に、他者の自由意志を尊重そんちょうしつつ、愛をあたえることで蓄積されてゆく、目には見えない功徳くどくを指しています」


「功徳……」


 今一度、ステータス画面を開く楓也。自らのソウル・スプレンダーの表示は現在、《SS-Ⅷ(B)》となっている。この括弧かっこ内にあるアルファベットが徳であるという説は、以前に明虎あきとらから聞き及んだとおりだ。彼は画面を指差しながらチャロに確認した。


「もしかして、この表記とイコールだったり?」


「ご明察めいさつです。つまりアスターソウルにおいて、グナは可視化されています。しかしカルマに関してはゆえあって公開されておらず、その理由も今はお話できません。ひとまず、ここまでは良いでしょうか?」


「おう、いちおう理解はできてるぜ」


 佳果がうなずくと、他の面々もそれにならう。


「それは重畳ちょうじょうです。では次に、カルマやグナがまるとどうなるかについて説明しましょう。……先ほど阿岸佳果も言っていましたが、これらは最終的に自分へとかえってくるものです。いわゆる因果いんが応報おうほうと呼ばれる現象ですね」


(それも聞いたことあんな)


「因果応報は様々なかたちをとりますが、基本、その魂が溜めたカルマやグナと同等の体験がもたらされるととらえて差し支えありません。ただし、とりわけカルマのほうは今生こんじょうでなく転生後の来世らいせむくいを受ける場合が多いのですが……この理由もまだ説明できませんので、割愛かつあいさせていただきます」


「ふむ……。とりあえず、そういう概念があるのはよくわかりました。でもそのことと押垂おしたりさんがどう結びつくのか、まだ見えてこないんですけど」


「……いいえ、もぷ太さん。あなたの心はもう気づいていると言っていますよ」


「!」


(アイちゃん。いよいよ打ち明けるんですのね?)


 心配そうに見つめるアーリアを一瞥いちべつし、チャロははかなく笑った。


「そう、夕鈴はカルマに殺された。そしてそのカルマの源泉は――わたし(・・・)なのです」

核心にせまってきました(物語はまだまだ続く予定です)。


※お読みいただき、ありがとうございます!

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