第7話 魂のエリア
「いっちょうあがり!」
ゲームを始めて一週間が過ぎた。今日も今日とて狩りにあけくれている佳果のレベルは、現在29。レベルが上がると徐々に身体の動きがよくなるため、彼はすでに現実世界を超えた運動能力を手に入れている。
「おつかれさま! あと1レベルで節目だね」
「おう、やっと"ソウルなんちゃら"ってのがわかるわけだな」
「"ソウル・スプレンダー"のことですわね」
「そうそう、それだ」
このゲームでは30レベルになると”ソウル・スプレンダー”――SSと略されるステータス情報が解禁される。SSとは自分の魂が属しているエリアを指す値のことで、ローマ数字でⅠからⅩまである。
実際の表記は《SS-Ⅲ(C)》とった具合になり、この場合、「魂はエリアⅢに属している」と読むことができる。なお、かっこ内のアルファベットはA~E、稀にSが入るようだが、具体的な意味は明らかになっていない。
また、エリアのローマ数字は1上がるごとに、レベルキャップが30ずつ解放されてゆく。つまり理論上の最大レベルは300で、上記の例なら90レベルが上限となる。
ただし、この数字の上げ方――エリアの移動方法は未だ確立されておらず、その影響で大多数のプレイヤーは、初期エリアのまま不動というのが実情であった。
初期エリアについては、チュートリアルの際に"魂の解析"で決定されているという説が有力なのだが、その基準も謎につつまれており、予想は不可能。30レベルになってみないとわからないのだ。
「しっかしよー、俺の初期エリアがⅠだったら、どうすりゃいいんだ? 事実上、30レベルぽっちで頭打ちになっちまうわけだろ?」
「そうだね…………阿岸君が教えてくれたエピストロフという魔法だけど、クリア条件になってるってことはたぶん、最終盤に習得するものなんだと思う」
「そうなりますと、必然的にエリアⅩを目指すかたちになりますわよね。でも各エリアの移動方法がよくわかっていない現状で、もしエリアⅠからのスタートとなってしまった場合……一年でクリアするのは絶望的といえますわ」
アーリアはかれこれ4年以上のプレイ歴があるらしい。だが古参の彼女でさえ、エリア移動の経験はないのだという。たまたま移動に成功した知り合いは何人かいるようだが、彼らもなぜ移動できたのかわからないと口をそろえており、数年がかりで上がった数字もたった1だけ、という人しかいないそうだ。
「だいぶ先行きが怪しくなってきたな……」
「き、きっと大丈夫だよ! ぼく、エリアⅠのプレイヤーって見たためしがないし!」
「わたくしもですわ。佳果さん、ここは前向きにまいりましょう!」
「……ま、ウダウダ言っててもしゃーねーか。あと1レベ、付き合ってくれ!」
「うん!」「お任せください!」
やがて、無事30レベルへと到達した佳果。彼はその場でステータス画面を開き、SSの項目を確認してみる。そこには意外な結果が示されていた。
《SS-Ⅴ(*)》
「おっⅤか! ……ってなんだこの記号は」
筆者も自分のSSが気になります。
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