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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第九章 切り拓かれた宿命 ~失われし記憶~
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第141話 光の柱

 ムンディの魔法で猶予ゆうよを得た一同は、さっそく祈りの準備に入った。


「ヴェリスちゃん。参考までにお聞きしたいのですが、世界の光というのはどんなふうにイメージしたら良いでしょうか?」


 超感覚のないアーリアや零子、楓也にとって、世界の光とはヴェリスから伝聞でんぶんしたに過ぎず、かなり漠然ばくぜんとした存在である。また佳果とシムルも、ゾーン状態に入った際にうっすらと感知はできるものの、イマイチ想像がつかなかった。


「ん~……天国てんごく? あったかほわほわで、きらきらの雲がいっぱい」


「ふむふむ」


「夕焼けみたいな色のお空もきれいだよ。あと、すごく静かで落ち着くんだけど……心はにぎやかなの。深呼吸するとぽかぽか気持ちよくて、眠くなってくる感じ」


「……だんだんと視えてきた気がします……!」


 零子が目を閉じてイメージをふくらませる。他の面々もそれにならい、各自かくじ浮かべたビジョンに意識をゆだねていった。さらにヴェリスが続ける。


「あそこはわたしたちの魂とつながってて、自分の光も、世界の光も……本当はひとつなんだ。だからみんなとも一緒だって感じられる。それはどこにいても、いつでも変わらない」


(ほう、このガキンチョ……)


 ムンディがあぐらをかいて、意味ありげにヴェリスを注視している。つゆ知らず、祈祷きとうの準備がととのった陽だまりの風は、それぞれが思うところを精一杯に念じ始めた。



(なんだか随分ずいぶんと遠くまで来ちまった気がするな。夕鈴あいつを助けるために必死こいてきた旅路たびじだが……こいつらがいなきゃ、俺は今頃ここに立っていなかっただろう。陽だまりの風に出会えたこと、心から感謝しているぜ。……叶うなら、あいつにも話してやりたいな。俺にこんなまぶしい家族ができたってこと。そのおかげで、"誰かの力になりたい"って、よどみなく思えるようになったことも)



佳果の光が、柱となって天に届く。



(失敗続きで、人に助けてもらってばかりの人生だった。そんな自分を変えたくて、沢山たくさんの"ぼく"を演じたけど……阿岸君たちがいたから、どの自分が一番好きなのか見つけることができた。そしてそれは、きっと誰もが探し求めている答えなんだとも思う。ならぼくは、ぼくにできることを通してこれからも表現し続けるよ。みんなが笑って過ごせるように。愛する人たちが、もう一度輝けるように)



 楓也の光が、柱となって天に届く。



(わたくしはもしかすると、アーリアを隠れみのにしておのれをまもりたかったのかもしれません。……あの日、佳果さんと出会わなかったら。今日まで過ごしてきた、みなさんとの宝物のような日々がなかったら。わたくしは人を愛する喜びも、残酷ざんこくさも、本当の意味で理解することはできなかったでしょう。……この導きに深く感謝を。それと――ねえ、聞こえる? わたし、今でもあなたを親友だと思っているわ。だからこれからは贖罪しょくざいではなく……恩返しをすると心に決めたの。この想いがいつか世界に、あなたの元に届いたら嬉しいな)



 アーリアの光が、柱となって天に届く。



昌弥あのひとが亡くなってから、がむしゃらに前へ進んできました。これまであたしのあゆんできた道が、どこに続いていて、どこで終わりをむかえ、最後に何が残るのかはわかりません。正直にいえば、不安で押しつぶされそうになるときだってあります。……でも不思議ですね。皆様がいると思うと、どういうわけか怖い気持ちがふっと楽になるんです。あたしは、そんな陽だまりの風とともに真実へ辿り着いてみせるつもりです。そして、もしその先に普遍ふへんの光が見つかったときは……それで世界を照らすお手伝いもしたいと思っています)



 零子の光が、柱となって天に届く。



(最初は村のため自分のためって、そういう大義を口実にして足掻あがいてみたけど……気づけばおれは、すべてをあきらめてドブの中でおぼれてた。絶望して、大切なものまで手放しかけた。……けどさ、ヴェリスや兄ちゃんたちが教えてくれたんだ。"まもる"ってことの難しさと気高さ――おれはヴェリスやみんなを、この手でまもれるようになりたい。そんでそれと同じくらい、困っている人がいたら支えてやりたい! 誰かの大切はおれの大切でもあるってわかったから。……なんでかな。これが巡り合わせだって言ってたアーリア姉ちゃんの言葉、最近になってよく思い出すよ)



 シムルの光が、柱となって天に届く。



(わたしがこの世界に来たのは、きっと佳果たちと出会うためだった。……なら前の世界も、誰かと会うために生まれていたのかな? ……わからない。でもね、あの時わたしが世界にどれほど負の感情を与えていたのか。あのおじいちゃんとお兄さんは何を思ってわたしにパンをくれたのか――それだけは、今ならはっきりとわかるよ。だからこそ、わたしは、わたし達はきらきらにならなきゃいけない。……どうかお願いします、みんなのお祈りを聞き届けてください)



 ヴェリスの光が、柱となって天に届く。

 その瞬間、全員の脳内にアナウンスが響きわたった。


《報告を承りました。これより、適切な処理を開始いたします……なんて、形式ばった言い方をする必要はもうなさそうですね。皆様、よくぞここまで辿り着きました》

最後のセリフ、前半は第25話のときと同じです。


※お読みいただき、ありがとうございます!

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