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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第九章 切り拓かれた宿命 ~失われし記憶~
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第139話 面影

「!」


 夕鈴ゆうりおぼしきその人物は、変わり果てた楓也の姿を見て目をいた。彼女はトレチェイスと呼んだ魔物に「ちょっとごめんね」と言って横に移動をうながすと、ひざをついて話しかけてくる。


「大丈夫ですか!? まだ意識はありますか!?」


「う、うん……」


 まるで初対面のような接し方に、一抹いちまつのさみしさを覚える楓也。しかしよく考えれば、この状態で認識できるはずもないだろう。彼は自分が人間であり、訳あってここへ来たものの、難儀なんぎなことに魔物になりかけている旨を伝えた。


「……わかりました。事態は一刻を争います。今からわたしがお助けしますので、結界の外へ手のひらを出していただけますか?」


「こう……?」


「ええ、そのままじっとしていてくださいね」


 そう言って差し出された右手を自らの両手で包み込み、優しく微笑ほほえむ彼女。だがすでに触覚しょっかくは失われており、楓也は何も感じることができなかった。


 一方、それまで黙ってやり取りを聞いていたトレチェイスだったが、二人が手を繋いだ途端とたんに慌てふためいた。


「いやいや、ちょっと待てよジェフィーラ! お前まさか、こんな見ず知らずのやつのために()を使うつもりなのか!?」


「当たり前でしょう」


「ッ……!」


 毅然きぜんとした彼女の表情は、見るほどに生前の面影おもかげを残す。ジェフィーラという名前に心当たりはないものの、まさか人違いということもあるまい。楓也はぐるぐると思考を巡らせたが、再び意識が朦朧もうろうとしてきた。


「け、けどよ! せっかくここまで頑張って集めてきたんじゃないか! ここで使っちまったら、次はいつになるか……! なにか、なにか他の方法だってあるかもしれ――」


「ありがとうトレチェイス。でもね、わたしはこの人を助けたいの。……あなたにはたくさん手伝ってもらったのに、わがままを言って本当にごめんなさい」


「…………」


 彼は今にも泣き出しそうな顔でむせび、押し黙った。

 しかし数秒後、目をギュッとつぶって悔しそうに叫び出す。


「クッソォォォ!! おいお前!!」


「……?」


「ジェフィーラに感謝しろよ!! それと、ここまでしてもらって助からなかったら、絶対に許さないからな!!」


 二人の手の上へ、さらに自分の手を乗せるトレチェイス。その意図を理解した彼女は、ニッコリと笑って祈り始めた。直後、まばゆい光が楓也の魂に流れ込んでゆく。


 心地よいあたたかさがじんわりと広がり、徐々に正気しょうきと信念を手繰たぐり寄せる楓也。今ならば、きっと戻れるだろう。


(そうだ……ぼくの帰るべき場所は……陽だまりの風……!)


 瞬間、彼の魂がつよい振動をともなって輝いた。同時に触れていた結界がひび割れ、バリンと音を立てて瓦解がかいする。青白い非物質的な破片が辺りに降りそそぐなか、人間の姿に戻った楓也は恩人たちにお礼を言うべく、伏せていた顔を上に向けた。


「ありがとう押垂おしたりさん、トレチェイスさんも――」


 ところが、手を握っていたはずの二名は跡形あとかたもなく消え去っていた。そして突如とつじょ、眼前にウィンドウが現れてアナウンスが響きわたる。


『結界の自動修復まで、あと5分です』

彼らはいったい。


※お読みいただき、ありがとうございます!

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