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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第九章 切り拓かれた宿命 ~失われし記憶~
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第137話 片鱗

「さあ、見物みものだねぇ。マイナスにマイナスを掛けるとどうなるか」


 明虎あきとらは外側の黒を盾に、悠然ゆうぜんと構えた。そうやってガスの稲妻を受け止める度、闇と光がしきりに明滅する。しき存在は断続的に苦悶くもんの声を上げた。


《ぐ……お………ぉ……ぁ……あ……》


「なかなか良い反応をするじゃないか。……このままお前がすべてたいらげろ」


波來ならいさん? なんか様子が変だな)


 楓也の目には、彼が怒っているように見えた。普段のらりくらりとしているのに、一体どういった経緯いきさつでこの場に立っているのだろうか。

 あれこれかんぐっているうちに、支えていた佳果が意識を取り戻す。


っつ~……何がどうなってやがんだ?」


「! 阿岸君、大丈夫?」


「ああ。ビリビリしたが、瘴気しょうきと違って汚染されるような感覚はなかったぜ。……つーかムンディ、話が違うじゃねーかよ!」


《すまん、俺様もこうなるとは思ってなかったもんでな》


「……先ほど上がからむとおっしゃっていましたが、何か関係が?」


 駆け寄ってきたアーリアが質問する。ムンディは外側の黒を見ながら答えた。


《そのとおり。あのガスは、より上位の意向いこうが生み出した♯∽Δ�§¶の片鱗へんりんだ。本来はあんたらのそれが適用されて、余裕よゆうでパスできるはずだったんだけどさ》


「……? ヴェリス、いま魔神様がなんの片鱗って言ったのかわかった?」


「わかんない」


 シムルとヴェリスが首をかしげる。単純に聞き取れなかっただけかもしれないが、それにしては音が不自然に潰れていた気もした。彼らと同じく、佳果と楓也もハテナを浮かべている。


(逆再生っぽかったな)


(そういえば以前、波來さんが同じ発音をしていたことがあったような……)


 要領を得ない陽だまりの風。零子はいぶかしがるみなを代表し、「すみません、もう一度言っていただけますか?」とムンディに催促さいそくした。しかし彼はまたガリガリと頭蓋骨をかいて、ぶっきらぼうに断る。


《……あ~、今のはなかったことにしてくれ。どうしても気になるってんなら、後で姉ちゃんにでも聞くといい。たぶん"そこはかとなく"なら教えてくれるぞ》


 そう言ってムンディはアーリアの肩をポンとたたき、明虎の方へ歩み寄っていった。一斉に向けられた視線に彼女が苦笑するなか、不意に雷鳴らいめいむ。


《で、そっちは終わったみたいだな》


「残念ながら。楽しい時間はあっという間だよ」


 明虎の横に、白くなった霧がプスプスと音を立ててただよっている。


「まあやり方(・・・)がわかった以上、今後はいくらでも楽しめるけどね。いやはや有意義な収穫だった。……クク……フフ……ハハハ」


《……あまりやり過ぎると身を滅ぼすぞ》


「ご忠告ちゅうこくどうも。……それじゃ、私は失礼をば。陽だまりの風もごきげんよう」


 こうして台風のごとくワンマンプレーをかました彼は、霧ごと無音でどこかへ消え去っていった。残された一同は、開けっぴろげになった門を見つめて沈黙している。佳果がぽつりと言った。


「いや結局なんだったんだよあいつは」

伏せ字につきましては第45話で言及していますが、

エリア(8)以上でないと認識できません。


※お読みいただき、ありがとうございます!

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