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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第九章 切り拓かれた宿命 ~失われし記憶~
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第133話 本命

 ムンディが漆黒のきりまとった。

 外側の黒と同質の禍々しさを帯び、る者の精神をむしばむ魔の深淵しんえん


《この"はざま"では、誰でも平等にこういうもんが視えちまう。黒いモヤ(負の感情)だけならまだしも、これのドス黒さは洒落しゃれにならないぜ? 悪いことは言わない。兄ちゃんたち以外は離れて、そっぽでも向いてな》


「!」


 箱舟でこっそり佳果とウーの会話を聞いていたアーリアは、瘴気しょうきがどれほど危険な汚染物質なのかを把握していた。彼女は振り返ると、零子とヴェリス、シムルに避難ひなんをうながす。


「……みなさん、ここは彼の助言に従いましょう」


「で、でも姉ちゃん!」


「先ほどムンディさんは、こちらの適性をみるためにわざと負けてくださいました。そして現在、わざわざ最後の警告をしていただいている――シムルくんなら、この意味がわかるはずですわね?」


「っ……うん。魔神ましん様にその気があれば、おれ達はとっくに死んでたってことだろ。んでもって、それは今この瞬間も続いている」


 無言で肯定するアーリアに、シムルはきつく目を閉じた。


「兄ちゃんたちが心配だ。けどおれには……絶対にヴェリスを守るって誓いもある」


「それはわたしも同じだよ、シムル」


「……なら、今はお二人とムンディさんを信じましょう。ここにきて戦力外通告は悔しいですけど、あたし達はせめて……祈りをささげて応援しなくては」


 後ろ髪を引かれる思いのなか、四人はうなずいてその場から離れた。残った佳果と楓也は、脂汗をかきつつも対峙を続ける。その後ろで、ノーストが宙に浮かびながら言った。


「陽だまりの風がここへ来たのは、われらを否定せず……その愛の光をもって、共存の道を模索もさくしてくれたからに他ならぬ。……ともに答えを見つけようというアーリアの言葉。吾はうぬらの勝利を見届けることで、その真意を魂に刻むつもりだ。どうか健闘を」


「……へっ! こりゃあ、しくじれねぇな楓也」


「もちろん! ぼくたちはまだ何もせていないんだ。こんなところで立ち止まってる暇はないよ!」


《意気やよしって感じだな。じゃ、そろそろいくぞ》


 刹那せつな、大量の瘴気が彼らを覆い尽くす。

 その光景を眺め、ムンディは思った。


(俺様は腐っても魔神。ここに至ったあんたらの魂が十分に成長していなかったり、もし対策をおこったっていれば……初撃で殺していたところだ。それにしても、この拭えない因果いんがの違和感。おおかた黒龍あたりの仕業しわざなんだろうけど、こっち(・・・)のほうが本命ルートだよな? ったく、上は何を考えてんのかねえ)



 東使とうしぐみの親父さんを救ったあの時、佳果は負の感情の濁流だくりゅうに飲まれたすえ、楓也に絆のひかりをもらい、夕鈴への想いをちからに変えることで九死きゅうしに一生を得た。しかし今回の相手はさらにおぞましいマイナスエネルギーである"世界悪意"。最初から全力でのぞまなければ、為すすべもなく敗北をきっするだろう。


 佳果は熱き想いで魂の振動を最大限に高め、心にホワイトホールを形成する。楓也は逆に、演技による世界悪意との同調をはかり、魂の振動を最低限にとどめて闇をあざむいた。どちらも魔におかされた上で発揮はっきされる"真の勇気"だ。


(……あれ? なんか前と比べて、さらにあったけぇ気がすんな)


(はざまだと良い意味で補正がかかるのかな? ……よし、これならなんとか狂気きょうきに染まらず済みそうだ)


 二人は瘴気にはばまれ孤立をいられたが、感じていることは同じだった。このまま第二関門を突破して、ノーストを魔境に送り届けてみせる――今はそれだけに集中すればいい。みなぎる決意を胸に、彼らは流れ込んでくる凝縮された負の感情にあらがった。

龍神の言っていた"滅びる未来"は回避できたようです。


※お読みいただき、ありがとうございます!

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