表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第九章 切り拓かれた宿命 ~失われし記憶~
139/356

第131話 存在意義

 ムンディ=マリティアと名乗る魔神ましん。なぜか彼をまじえてシートに座り、さながら花見のごとく魔境へと続く門を見上げる陽だまりの風。奇妙な状況のなか、緑茶をすすったムンディは「ぷひゃぁ~!」と大袈裟おおげさなリアクションをした。かなり美味うまかったらしい。


《いや~、前にくれないの茶をもらったときも思ったが、こんだけ良質なエネルギーがつくれるようになったんだよなぁ地球は。けっこうけっこう》


「いや紅茶って言えし。つーかなに目線めせんだよ……」


《神目線だが?》


 佳果とムンディの掛け合いに脱力しつつ、楓也が尋ねた。


「あの、魔神様」


《ムンディでいいぞ。別にうやまう筋合いもないだろ》


「……ではムンディさん。あなたは以前にも、こうして誰かと対話を?」


《ああ。あんときはガキンチョ二人とばあさんに、変人のパーティだったか》


(夕鈴ちゃん達のことですわね。やっぱり、皆さんも法界の箱舟を……)


 アーリアが確信する。佳果にあの手紙をてた夕鈴は、過去にこの場面を経験していた。つまりこれはアスターソウル攻略の一環であると同時に、現実世界の救済にも関わる重要なイベント。しかし、ともすればぬぐえない疑念がひとつ浮上する。ノーストは何かを察したような顔で確認した。


「――答えろ魔神。そやつらは、誰を(・・)魔境入りさせた(・・・・・・・)?」


(あ……)


(た、たしかにノーストさんは、世界で唯一の魔人って言ってたもんな)


 彼がその質問を持ち出したのも当然の成り行きである。ヴェリスとシムルは真剣な眼差しでムンディの返答を待った。すると胡座あぐらをかいている彼は、湯呑ゆのみくるぶしまで下ろし、虚空こくうを見つめて言う。


《……あんただよ》


 瞬間、ノーストは目をいたが、すぐにゆっくりとまぶたを閉じて溜息をつく。理解の追いつかない零子は、沈黙する二人を交互に見遣みやって狼狽ろうばいした。


「えっ、えっ……? どういうことですか?」


「簡単な話だ。粒子精霊のやつが言っていただろう? われには生まれる前の記憶がないとな」


「……俺もまだ全体像がみえて来ねーんだけどよ。つまりノーストさんが魔境入りするのはこれで二回目ってことか?」


此奴こやつが言うにはな」


「うーん……ムンディさん。ノーストさんたちは、初回の時も今と同じように飢餓きがの問題を抱えていたんでしょうか?」


《そうだ。要するにあんたら魔人や魔物は、一度は魔境に到達して安らぎを得た。けど再びエネルギーが枯渇こかつした状態で、あっちの次元に放り出されたんだ。ガキンチョたちと出会った以降の記憶を、きれいさっぱりくした状態でな》


 一同に衝撃が走る。かつて夕鈴たちも、かげで世界を救っていたのだ。しかしそれ以上に、同じ苦しみを繰り返させられているノーストらの心中しんちゅうが察するに余りある。なぜそのような悲惨ひさんなループが発生したのだろうか。


《そうなった原因を語るにはまず、あんたらの存在について触れとく必要がある》


「吾らの?」


《ああ。知ってのとおり、魔獣ってのは生命から放たれる負の感情を依代よりしろに生まれてくる。でも負の感情ってやつはさ、毎日毎日、世界中でどんどん溜まってくわけよ。んである時、魔獣の誕生が追いつかなくなるタイミングがやってくる》


(誕生が追いつかない……? もしかして、魔獣の総数って決まってるのかな)


 楓也が勘ぐるなか、ムンディは続けた。


《行き場をうしない、膨れ上がった負の感情はやがて瘴気しょうきへと姿を変える。そして最終的にはより高次の存在――まあいわば俺様みたいな存在が活動するためのエネルギーに成り果てるわけだな》


「それと吾らに、一体どういった関係がある?」


《……魔神ってのは不便でさあ。そのエネルギーがないと役目を果たせないから世界に悪影響を与え続ける。なのに負の感情がでかくなり過ぎると、それはそれで生命が全滅して供給源がなくなっちまうんで……立場に相応ふさわしいやり方で、等しく好影響ももたらさなきゃいけない》


「!?」


《とどのつまり。魔獣が上限に達した際、過多のエネルギーを使ってあんたらのような魔人や魔物をしかるべき世界へ送り込んだり、手ずから色んな次元に干渉して生命にちょっかい出すのが俺様の役目。その目的はただひとつ――愛の光を誘発すること(・・・・・・・・・・)だ》

魔があり続ける理由。


※お読みいただき、ありがとうございます!

 もし続きを読んでみようかなと思いましたら

 ブックマーク、または下の★マークを1つでも

 押していただけますとたいへん励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ