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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第九章 切り拓かれた宿命 ~失われし記憶~
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第130話 第二形態

「ま、魔神ましんだぁ……!?」


 深刻な顔で驚く佳果。龍神に会った経験のある彼にとって、そのたぐいが存在していること自体に疑いはない。ただ心のどこかで、神とは清く厳粛げんしゅくで、自分たちに対して好意的な存在と考えている節があった。


 しかしこのドクロがノーストの説明にたがわぬ魔の神――奥魔おうまの総本山である場合、少なくとも人間にとって手に余る脅威きょういなのは事実。なぜなら人間は外側の黒を感知するすべを持たない。その上、佳果や零子、依帖えごの前例があるように、それらは時として生殺せいさつ与奪よだつ発揮はっきるほどの干渉性をもって、世界に悪影響を及ぼすことがあるからだ。


 ならば、諸悪しょあくの根源である可能性を持つ以上、たとえ魔境()りという本懐ほんかいを後回しにしてでもこの門番を捨て置くわけにはいかないだろう。楓也は静かに倒れているドクロを見て、ごくりと固唾かたずむ。


「……待ってください。今の話が本当だとして……じゃあぼくたちは、仮にも神様である存在をコテンパンにしたと? そんなこくじょう、ありないんじゃ……」


「――そう、あり得ぬ(・・・・)。問題はそこにつきる」


 ドクロの骨に触れながらそう断言するノーストに、全員が緊迫する。真意を確かめる意図いとを兼ね、ヴェリスが尋ねた。


「ノースト。さっき何か吸収してたよね?」


「ああ、無尽蔵ともいえる魔のエネルギーを奪い、全回復させてもらった。ちなみにうぬらが魔法へ利用しているのもそちらの方だ。そしてそのエネルギーは、まとっていたモヤの方ではなく……此奴こやつ自身が有するもの。げんに、依然として供給は途絶とだえておらぬ。このようにな」


 オーラが消えているにもかかわらず、ノーストへしゅるしゅると取り込まれる黒の流動りゅうどう。それを見て佳果は"まさか"と直感を働かせた。ここまでの話を総括そうかつすると、魔神であるこのドクロが眼前にしている理由が見つからない。つまり現在の沈黙はあくまでいつわりの――そう思った瞬間だった。


《やっと気づいたな》


 闇の暴走とともにドクロがゆらゆらと起き上がり、その姿を変えてゆく。一同はバックジャンプで一気に距離をとり、様子をうかがった。すると人型ひとがた骸骨がいこつになった魔神は、なぜかアロハシャツに短パンというラフな姿をかたどった。あまりにもTPOをわきまえないその容姿に、全員の時が止まる。ノーストはあきれて言った。


「話す気になったのかと思えば……ふざけているのか? それともお得意の精神攻撃でもしているつもりか」


《え、なんでだよ。かっこいいだろこれ》


 魔神がくるりと一周し、羽織はおったシャツのすそをふわりと広げてみせる。

 陽だまりの風は混乱した。


(あいつ、さっきまで戦ってたやつ……だよな?)


(骸骨がオシャレを……じゃなくて! あれは魔神だ、まどわされるな!)


 急激な雰囲気の変化にペースを狂わされる佳果と楓也。

 ヴェリスとシムルも同じく、変な汗をかいている。


(かっこいい?)


(くっ、これも油断をさそうための策略ってか!?)


 いっぽう同方向に飛んだアーリアと零子は、こそこそと内緒話をしていた。


「なんですかこの状況……! お姉さま、あたしたちはどう立ち回れば……」


「うーん、ノーストさんはもともと話す気でいらっしゃったみたいですし……とりあえずお茶でもれてみましょうか?」


(ええっ! お姉さまメンタル強すぎぃ!)


 彼らの反応をすべて読み取った魔神は、頭蓋骨をガリガリといて言った。


《ま、警戒されるのは無理もないし、く必要もない。ただ茶にはちょっと興味あるぜ。姉ちゃん、ぜひれてくれよ》


 そう言ってボフンと霧状きりじょうの床にあぐらをかく魔神。彼は頬杖ほおづえをつき、唖然あぜんとする陽だまりの風を眺めてニヤリと笑った。


挨拶あいさつが遅れたな。俺様はムンディ=マリティア。あんたらが言うように魔神をやってるもんだ。……ああ、いにしえじゃ"世界悪意"と呼ばれてた時期もあったっけか》

果たして骸骨に茶は飲めるのか。


※お読みいただき、ありがとうございます!

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