第120話 気がかり
「そういえばみんな! 変化に必要なエネルギーだけど、もう蓄え終わったよ!」
羽根を広げ、よろよろくるりと踊り回っているウーが不意にそう切り出した。食事も終わって過去話に花を咲かせていた一同は俄然、彼に注目を強いられる。事前の話ではまだ時間がかかると言っていたはずだが――思わぬ朗報に、佳果が驚く。
「マジか、ずいぶん早いじゃねーか!」
「わはは! 実は主様がちょっと手伝ってくれてさ」
「そうだったんだ……じゃあいよいよ、時は満ちたってことだね」
楓也の言葉に頷き、「準備ができ次第いつでも行けるよ!」と元気よく返答するウー。彼によると、法界の箱舟は変化後の自分に対し"設計図"をアイテムとして使用することで、すぐにでも完成させられるらしい。その後、内部に現れる二つの台座に"フィラクタリウム"と"夜の水月"を組み込めばすべての準備が整う。現在時刻はまだ13時のため、決行は本日付けで確定だ。
世界の命運を分ける一大イベントを前に、陽だまりの風に緊張感が漂い始める。
それぞれが高揚感で勇むさなか、零子は左手を小さく上げて恐る恐る尋ねた。
「……あの、皆様。こんな時に申し訳ないのですが、その前にひとつだけよろしいでしょうか」
「ん? どうした零子さん」
「先ほど佳果さんのお話にも出てきましたが……ウーちゃんの主様というのは、実在する龍神様……なんですよね?」
真剣な眼差しをする零子。『化霞の滝』で出会った当初、彼女は粒子精霊と名乗る彼やその主なる存在について、あくまでもゲーム側の都合によるフィクションだと思っていた。なぜなら、例によってウーの魂は固有スキルで透視できず、異なる次元にいるという龍神のほうもまるで感知できなかったからだ。
しかし点と点が繋がった今、目の前でダンスしているウーが本物の精霊であることに疑いの余地はなかった。ならば、本懐について聞かずにはいられまい。
「そだよ~。ただ前にも話した通り、こちらで顕現していただくのは難しいから会ったりはできないんだ……もし何か質問があるなら、吾輩が代わりに聞くよ?」
「……ありがとうございます。その、夕鈴さんの救済に関して秘匿されている部分が多いのは皆様から聞きました。ですが、昌弥の場合はどうなのかなと思いまして」
「ふむ。くだんの山で囚われているかもっていう、マーちゃんの魂のことだね?」
「ええ。ウーちゃんや龍神様なら、彼が今どういう状況にあるのかわかるかもしれないと考えたのですが……いかがでしょうか?」
「確かにその辺の情報がわかれば、このあとのメンタルもかなり変わってくるよな。ウー、昨日俺たちが零気を使ったときは、現実世界とリンクしていたはずだけどよ。同じ要領で昌弥さんを探ったりはできないのか?」
思いっきり会話の途中ですみません(時間不足)。
明日は区切りの良いところまで進めたいと思います。
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