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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第八章 影のなかで ~救い、救われし関係~
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第108話 因果応報

 フルーカの語る問題点――それは、この世界の人間が総じてSSによって行動範囲を制限されているという仕様に関係する。アスター城や城下町の周辺は、エリアⅣ以降でないと入場できない。つまりエリアⅢ以前の者がつどううヴァルム・フリゴ・アラギの住人たちへフィラクタリウムを頒布はんぷするには、各地に出張所を設ける必要がある。


「それらの設営は王国側で受け持ちますが……問題は頒布後に起こるであろう、悪徳あくとくの横行です」


「悪徳……? 女王様、そいつぁ一体」


 ゼイアが首をかしげる。他の面々もに落ちていない様子だ。フルーカは神妙な面持ちで補足した。


「順番に説明しますね。まず"加工"されたアイテムはインベントリに格納することができません。よっていくら小さなアクセサリーといえども、各地には何十万、何百万という人々が生活していますから……彼らに広くフィラクタリウムを行き渡らせるとなれば、第一に搬入はんにゅう難儀なんぎです」


 アスターソウルは車などの移動手段がなく、基本的に徒歩をいられるため非常に交通の便が悪い。当然、膨大な物量を運ぶにはそれ相応の時間が掛かることだろう。


 また、アスター王国は決して公務員の数が多いわけではないゆえ、フルーカが動かせる人員は実のところ、需要の母数に対して非常に少ないのが現状だ。仮に国民へ協力を呼びかけるにしても、無償にちかい本計画に参加してくれるような有志の数が限られるのは想像にかたくない。


「第二に、物流が遅れるほど先にフィラクタリウムを手にした者が有利となる状況が続きます。……この世界は情報伝達の手段にも乏しく、人々の多くは閉鎖的で、外を知ることに消極的なきらいがありますので……」


「……なるほど。都市部からほど遠い地方でひっそりと暮らしているような者たちがフィラクタリウムの存在を認知するのは、かなり後のことになるでしょうな。そうなると、安価に入手した製品を何も知らぬ者へ高額で売りつけるやからが出てくる道理」


 プリーヴのげんに、シムルやヴェリスもようやく合点がいった。


(……世の中、いい人ばかりじゃないのはよく知ってる。すごく厄介な話だな)


(情報伝達……なにか、わたしにもできることがあれば……)


「というかよぉ。一人一個までとか条件つけるにしても、そのうち"どうせわからねぇだろ"って利益目的で何度も買いにくるやつらすら現れるんじゃねぇか?」


 渋い顔をするゼイアに、フルーカはこくりとうなずいた。


「ええ。つまり私たちがかかげようとしている善意は、私たちの手を離れたところで悪意に変わり得るということです。結果、生まれるのは幸福と不幸のゼロサムゲーム――敗者は悪徳に搾取さくしゅされ、そこには負の感情が溜まってゆく流れとなります」


「負の感情……おばあちゃん、それって……」


「……ヴェリスちゃん。皆さんも、心して聞いてください」


 改まったフルーカの様子に、全員が固唾かたずを飲んだ。


蓄積ちくせきされた負の感情――世界に充満しているその黒き想念は、私たちの気づかないところで生命を宿し……やがて我々に敵意を向ける日が必ずやってきます。人はそれを魔獣(モンスター)と呼んでいるのです」

お読みいただきありがとうございます。

現実世界にも置き換えられる話かもしれません。


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