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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第八章 影のなかで ~救い、救われし関係~
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第107話 報酬

「一件落着だな」


 親父さんの狂気をやすという依頼を達成した三人は、本部をあとにしてめぐるの家へ帰ってきたところだ。無性むしょうに疲れた彼らは現在、出前でまえをとって一息ついている。楓也はチーズの入ったピザの耳をほお張りながら、ニッと笑顔になった。


「組長、嬉しそうだったね」


「ああ。まだ完全に解決できたわけじゃねーけど、あの人にとっちゃ正気しょうきの親父さんと再会できたのは奇跡だったみてぇだな」


 今回、佳果が対処した黒は氷山の一角だった。東使組が背負った負の感情は、今後も親父さんの魂を目印にして断続的に集まってくることだろう。ゆえに定期的な浄化が必要になるのだが、すでに親父さんには、現状を維持したところで拓幸への継承は避けられない旨について伝えてある。


 これは一見すると無慈悲な宣告せんこくのようだが――角度を変えれば、エネルギーブロックの理由が消失したとも換言かんげんできる。そして拓幸が「一人で抱え込むなよ!」と一喝いっかつし、親父さん自身が愛の拒絶を反省したことも相まって、以降は零気だけでも対処が可能となる見込みだ。


 この経緯いきさつを説明し、佳果がアフターケアを申し出ると、拓幸は号泣しながら全員にハグしてきた。つい先ほどの出来事ながら、めぐるは思い出し笑いをしている。


「ふふ、あばらが折れそうな抱擁ほうようだったよね。それにしても……二人が気を失っているあいだにそんなことがあったなんて。精神世界に真の勇気、そして龍神様か……自分たちが知らないだけで、世の中には不思議なものがたくさんあるのかもしれないなあ」


「……普通だったら与太よたばなしで片付けるところなのに、須藤君はやっぱり優しいね」


「え? い、いやその……自分もあの黒いモヤとか佳果くんの光を、この目で見てるわけだし……それに二人が言うことなら、無条件で信じられる気がするというか……」


「かか、あんまり買いかぶんなって」


「ううん、本当にそう思っているだけなんだ。…………改めて、これから二人とアスターソウルをプレイできるなんて夢みたい」


「えへへ、組長も太っ腹だよね。お礼に"望むものをなんでもやる"なんてセリフ、現実で聞く日が来るとは思わなかったよ」


 拓幸は依頼の報酬ほうしゅうとして、なんとアスターソウルのデバイスをめぐるにプレゼントすると約束してくれたのだ。彼とっては完全に僥倖ぎょうこうであったが、ともあれ、これで佳果たちとマルチプレイができるようになるのは時間の問題となった。


 自分のSSはどうだろう? 陽だまりの風のメンバーはどんな反応をするだろう? 期待と不安で高揚するめぐるを見て、二人は目を細めた。



 その頃、アスター城にて。

 フィラクタリウム普及の件で、フルーカとサブリナ、プリーヴとゼイア、シムルとヴェリスが卓を囲んで議論している。魔境への遠征と並行して、この世界の人々に魔除けの手段を行き渡らせ、脅威の象徴しょうちょうたる魔獣、およびその被害から解放を目指す計画だ。概略を聞いたフルーカは、心のなかでひとりごつ。


(佳果さんたちはもう法界ほっかいの箱舟を造り始めたんですね。私たちがあそこへ訪れたときは、夕鈴ちゃんとチャロが共鳴して……ふふ、なんだか遠い昔話のように感じられます。……それにしても、魔除けですか。当時はそこまで思い至れませんでしたが、もしかすると――)


「? おばあちゃん、どうしたの?」


「あらあら、ごめんなさい。ちょっと考え事をしてしまって」


「……して、女王陛下。手前てまえどもの計画につきましては、いかがでしょうか。可能であれば、国を挙げての普及にご協力いただければと考えておりますが」


 プリーヴの進言に対し、フルーカは「ふむ」と一呼吸おいてから返答した。


「もちろん、アスター王国はあなたがたに協力いたします」


「おお……まことですか……!」


「ええ。ただ……この世界にはNPCとプレイヤーがおり、SSと呼ばれる魂のエリアを指す概念があることはご存知ですね?」


「は、存じておりますが……?」


「それに関してひとつ問題があるのです」

お読みいただきありがとうございます。

久々のヴェリスたちなので念のため補足しますと、

プリーヴは『第82話 客は世界』が初出のNPCで

フィラクタリウム普及計画を発案した商人です。

ゼイアはプリーヴとともにラムスからやってきた

シムルの父親、サブリナは王国軍の特殊部隊長です。


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