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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第八章 影のなかで ~救い、救われし関係~
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第106話 とらわれた未来

「!?」


 龍神の口から、予見めいた不穏ふおんの末路が語られる。楓也はすぐに明虎あきとらの言っていた『陽だまりの風が止むようなことがあっても』というフレーズを思い出した。


 同時に、彼がクイスの件において"未来が見えなかった"と謝罪したシーンや、チャロが依帖えごの背後にいた黒に対し『本来ならば起こり得なかった未来すら強いた』とたしなめた場面もよみがえってくる。


 よもやと、考えふける楓也。その横から佳果がおくさずに問いかける。


「待ってくれ。そりゃ、俺たちの歩いてきた道が間違ってるって意味か?」


《いや、そうではない。汝らは自らの意志でここまで辿り着き、そして"あるべき場所"へゆこうとしている。それは確かなことで、まったく否定するつもりもない》


「なら、滅びる未来に向かって進んでるっつーのは……」


《うむ。婉曲えんきょく迂回うかいせよと伝えたかったのではなく、実際にそうなる未来が確定していた、という意味だ。我々のような存在は、ある程度の因果を見ることができるのでな》


(! やっぱり……!)


 楓也のなかで確信が強まってゆく。

 人のこころがないのかと尋ねたとき、明虎は"鋭い"と返答した。いっぽう神の領域がうんぬんと胡散うさんくさい物言ものいいをしていたダクシスは、チャロを"神に至りし者"と表現していた。加えて彼らは、たびたびこちらへの間接的な支援を行っている。つまりあの二人もまた、この龍神と同じような存在なのではないだろうか。


(でも彼らは元プレイヤーだし……波來ならいさんは現実世界で生きている人間のはず。それに"陽だまりの風が止む"というのが"滅びる未来"とイコールなら、あの人は今こうして、ぼくらと龍神様が接触する事態は想定してなかったことになる……ぬぬ、調べなきゃいけないことが増えてきたなあ)


 全て聞かれているのを承知で、あれこれと熟考する楓也。少し期待してちらりとウーに眼差しを向けてみるが、相変わらず彼はニコニコしているだけだった。

 つゆ知らず、佳果は質問を続ける。


「……よくわからねぇけどよ、そもそも未来ってのは確定してるもんなのか」


《それも違う。大筋は決まっているものの、未来は常に可変的であり流動的だ。そして時空に縛られているがゆえ、波長の異なる我々に全てを見通すことはできない。しかし……特定の条件が重なったとき、因果が誘導され、かたよった収束をする場合がある。その不自然なひずみに関しては、多次元に影響を及ぼすためとりわけ正確に読み取れるのだ》


「……色々と疑問は尽きません。ですがとりあえず、ぼくらが滅びるという未来はいびつであり、それを矯正きょうせいするために今回お力を貸してくださったと解釈しても?」


《差し支えない。汝は利発りはつな青年だな》


「恐縮です。……他についてはおそらくお答えいただけない範囲ばかりかと存じますので、自重いたします。ただ最後にひとつだけ確認したいことが」


《聞こう》


「ぼくたちの住んでいる現実や、アスターソウル。そしてこの意識のなかの世界や魔境、先ほどウーが言っていた龍神界など――これまで聞いたお話から類推るいすいすると、いずれも異なる次元にあるのはなんとなく想像できます」


(そうなのか……? 楓也、お前マジですげぇな)


「もはや、ぼくにはそれらの世界がいずれも架空かくうではなく実在していて、繋がっているとしか思えません。……今までの出来事やこれからぼくたちが成そうとしていることは――夢や妄想ではないんですよね?」


《……その答えは、目を覚ませばおのずとわかるだろう。ちょうど覚醒度が上がってきた頃合いのようだしな》


「あん? ……そういや、なんか視界が明るくなって……」


『おお、二人とも無事に回復したみたいだね! じゃああっちでまた会おう!』


「……ありがとうございました。またいずれ、お話を伺えれば」


 龍神は黙ってうなずいた。次の瞬間、佳果と楓也は現実世界で意識を取り戻す。視界のはしで、深刻な表情をしていた拓幸とめぐるが笑顔になるのが見えた。


「よ、よかった……! 二人とも、もう目を覚まさないんじゃないかって……!」


「かぁ~~~心臓に悪いぜお前ら! 身体は平気かよ!?」


「え、ええなんとか。すみません、ご心配をおかけしました」


「ふわぁ~、どうやら気絶しちまったようだな。てんで寝た気はしねーが」


「? 佳果くん、それって……」


「ううぅ」


 四人が騒ぐなか、突如うめき声が聞こえてくる。全員そちらを見やると、そこには「拓幸……?」とほうける親父さんの姿があった。正気に戻っているようで、暴れる様子はない。何より自分を認識してくれているという事実に、拓幸はうち震えた。


「!! 親父おやじぃ……!!」

お読みいただきありがとうございます。

もうすぐアスターソウルのなかに戻ります。


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