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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第八章 影のなかで ~救い、救われし関係~
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第96話 相談

「そっちはそんな感じになってるんだ」


 ログアウトした二人は現在、めぐるの部屋にいる。今日は非番ということで、彼は読書をして過ごしていたようだ。本のタイトルは『アスターソウルの世界』。いずれプレイする時のそなえとして、情報収集をしていたらしい。


「やっぱり実際のプレイヤーから聞く話は質が高いね。本だと娯楽的な側面についてばかり書いてあるから、あまり参考にならない部分も多くて」


「あはは、まあそっちに魅力がある世界なのも事実だし。前に話したかもしれないけど、ぼくたちみたく攻略を進めている人はほとんどいないんだ」


「……エリア移動かあ。今の話だと、佳果くんたち"陽だまりの風"は、魔物と人間がうまくやっていけるように動いてるところなんだよね?」


「ああ、そうだ」


「…………」


 右横に視線を向け、熟考するめぐる。


「あの、須藤君?」


「……昨日、二人にお願いしたいことがあるって言ったでしょ。あれもある種、そういう感じというか、なんというか……」


「? 煮え切らねぇな。俺らはお前にでっけぇ恩がある。まあそんなもん抜きにしたって、ダチだから力になりてぇけどよ。とりあえず、詳しく話してくれないか」


「……ありがとう」


 なぜか少し躊躇ちゅうちょしつつも、めぐるが語った内容はこうだ。

 少し前、彼の働いている食事しょくじどころにて、いつものごとく珍客が現れた。筋骨隆々で眼帯をしているドレッドヘアの中年男性――なんでも店主とは古い付き合いのお偉方えらがただそうで、めぐるは粗相そそうのないように丁重に接客した。


 問題は、その際に持ちかけられた"お悩み相談"。男は自身の父が原因不明の狂気におちいり、医療機関もさじを投げて大変こまっているのだという。症状としては「黒いモヤが」とうわ言を繰り返し、近づこうとする者へ見境なく襲いかかるといった内容だ。手足を縛っていないと、何をしでかすかわからない危険な状態だとか。


「その、あまり思い出させるのも忍びないんだけど……自分はこの話を聞いて、真っ先に依帖えご先生を彷彿ほうふつとしたんだ」


「……センコーとやり合ったあの場面か」


「黒いモヤ……もしかして、須藤君もあれ(・・)を見ていたの?」


「うん。朦朧もうろうとする意識のなかで、おまもりから立ちのぼったモヤと、それを光で消したチャロ(あのこ)の姿……自分も薄っすら覚えてるよ。正直、あれと今回の件に関係があるのかはわからない。ただ……」


「そいつの相談に乗るなら目下もっか、手がかりになりそうなのは俺たちだけ――それで頼ろうと思ったわけだな」


 めぐるはこくりとうなずいた。佳果は少しバツが悪そうに頭をかく。


「あいつチャロっていうんだけどよ。基本的に俺らのほうからはコンタクトできねぇんだ」


「え、そうなの」


「いつも急に現れてはいなくなるんでな。まあ他にもツテはあるから、とりあえずそっちを当たってみるとするが」


(ウーのことだね)


「本当? ……でも協力してくれるどうかは、今から言うことを聞いたあとで判断して欲しい」


 改まった物言いで、めぐるがうつむく。先ほど歯切れの悪かった理由と繋がっているのだろう。佳果と楓也は目を見合わせると、頷いて彼に問うた。


「俺たちはあの修羅場を一緒にくぐった仲じゃねぇか」


「うん。須藤君、水臭いのはナシでいこうよ」


「……わかった、ありがとう二人とも。あのね、実は今回の依頼主なんだけど……"東使とうしぐみ"って暴力団の、組長さんなんだ」

お読みいただきありがとうございます。

ちょっと不穏ふおんになってきましたがたぶん大丈夫です。


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