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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第七章 己のあかしはどこにある ~同じ空を見上げるために~
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第95話 彼女の遺志

「この設計図、阿岸君と押垂さんがこどもの頃に埋めたタイムカプセルから出てきたんだよね?」


「ああ。だがさっきも言ったように、元々入ってたわけじゃねぇんだ。俺が箱を開けて中身をあらためている最中に、突然出てきてよ。しかも確認した直後に消えちまって……みんなになんて説明すりゃいいんだ! って途方に暮れながら帰ってきたんだが、こっちにログインしたらちゃっかりインベントリに入ってやがった」


「そ、そんな不思議なことが……」


 佳果と楓也の対話を聞いて、零子が目を輝かせている。だが彼女は、その超常現象とはまた別の点についても気になったようだ。


「ところで、その押垂さんというのは? こどもの頃といいますと、佳果さんの古いご友人でしょうか」


「ああ、押垂夕鈴――俺の幼馴染だ。もう死んじまってるけどな」


「っ……す、すみません、たびたび失礼を……!」


「言ったろ、別に気を遣う必要はないって。そういやあんたとはそのへん、まだ腹を割って話してなかったっけか。……今回の件が片付いたら一度みんなで飯でも行こうぜ? 聞いてもらわなきゃいけねぇこと、色々あるしよ」


「? ……はい、その時はぜひよろしくお願いします」


 零子とは話の流れで手を取り合った関係にある。ゆえに彼女はまだ、陽だまりの風が夕鈴を救うという目的で旅をしている事情を知らない。正式にすべての情報を共有するのは、もう少し後になりそうだ。


「しっかし、意味深なのはあいつが元アスターソウルのプレイヤーだったってことだよな」


 夕鈴ゆうりの手紙には、必要なときに設計図を使うようにと書かれていた。つまり彼女は、まさにいま佳果たちが直面しているこの状況を想定していた節がある。加えて、法界の箱舟と用途を把握していた可能性も高いだろう。アーリアはあごに手を当てて因果関係を推理する。


「おそらくですが……夕鈴ちゃんたちのパーティもまた、過去に法界の箱舟を造ったことがあったのではないでしょうか」


「あいつらが?」


波來ならいさんも冥土の湖畔や夜の水月を知っている様子だったし、そう考えるのが妥当だろうな。ということは彼らも攻略(エリア移動)を目指すなかで法界の箱舟を使った……? でも魔人って、ノーストさんしか存在しないんじゃ……なら何のために?)


 考察する楓也をちらりと一瞥いちべつするウー。

 しかし彼はあえて触れずに続けた。


「それもアーちゃんの言うとおりだにゃ~。この設計図は、手にする資格を持った魂が新たに出現した際、しかるべき時、然るべき場所で前の持ち主から引き継がれるようになっているのにゃ。ヨッちゃんが神社に行くまでは、そのユウちゃんって子が持っていたんだろうにゃあ」


「あん? お前さっきの話、聞いてなかったのか? あいつはもう……」


「うんにゃ。インベントリはその人の魂の領域を使っている――魂は肉体が失われてもなくなることはないから、生死は関係ないのにゃ!」


「!?」


 さらっと明かされた仕様に、佳果は絶句した。今の話が本当なら、やはり夕鈴は設計図の継承についても理解した上で、あの便箋びんせんに同封して自分の元へ寄越したことになる。


(『これはわたし自身が望んだ結果』か。なあ夕鈴、お前なんでそっちに行っちまったんだ? 仮に魂が不滅で、お前が何か大切なもん守ろうとしてるんだとしてもよ……俺はお前のいない現実(リアル)なんて認められねぇ……認めてやれねぇよ)


 佳果が悲痛な表情をする。

 ウーは少し目を細めると、ぼふんと元の霧状に戻って言った。


「いずれにせよ、必要なものはこれで揃ったわけだ。あとは吾輩が船体に化けるためのエネルギーを蓄え終えたら、すぐにでも魔境に向けて出発できるよ」


「ぬ? ガワをどうするのか気になっていたところだが、うぬがになうのか」


「ウー、それどれくらいかかるんだ?」


 シムルが尋ねる。ウーは魔境の話が出た時点でひそかにこの世界の大気中から必要なエネルギーを蓄えていたらしく、あと数日もあれば満タンになるそうだ。ならばまだ時間はあるということで、一同は引き続き、他にやれる仕事をこなしてゆく運びとなった。


 アーリアと零子は熟練度上げと、適宜フィラクタリウムの加工に入る。シムルとゼイアは彼女らの作った魔除けのアクセサリーをどう普及させるのか、プリーヴとともにアスター城へ赴き、サブリナやフルーカと作戦会議を行う。なおこれにはヴェリスも同行する予定である。彼女はこうした活動に興味があるらしい。


 ノーストは一度、待機している魔物たちへ事の次第を説明すると言い残し、村をあとにした。そして残る楓也と佳果はいったん現実世界に戻ることになった。というのも、実は昨日めぐるからアルバイトに関する支援要請を受けていたのである。


「須藤くん、どうしてもぼくらに頼みたいことがあるって言ってたけど……」


「ま、詳しく聞いてみるとしようぜ」

お読みいただきありがとうございます。

久しぶりに名前が登場したので補足しますと、

めぐる君は佳果と楓也が現在お世話になっている

同級生の男の子です。


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