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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第七章 己のあかしはどこにある ~同じ空を見上げるために~
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第94話 次元トーク

「よし、そろったようだな」


 ラムスの村の広場に集まった一同。佳果の眼前に、それぞれが持ち帰った戦利品が並んでいる。真っ先に目を引くのは巨大なフィラクタリウムだ。こちらはノーストの探知によって発見された鉱脈から掘り出されたもので、ここまで大きいものはベテランでも滅多にお目にかかれないらしく、ゼイアと村人たちが興奮している。


「でかしたなぁシムル! こんな大モノ採ってくるたぁ俺も鼻が高い! ほらお前らも見ろよ、これうちの息子とヴェリスちゃんがやった仕事なんだぜ!?」


「お~、さっすがゼイアさんトコの子だ!」


「嬢ちゃんも参加してたのかよ!? すっげぇな!」


「おい、よせってみんな……」


「えへへ! 二人でがんばった甲斐かいがあるね、シムル!」


 盛り上がる大人たちを前に赤面するシムルと、達成感で微笑ほほえむヴェリス。その光景を少し後ろで見ているノーストは、心なしか誇らしそうな顔をしていた。ゼイアはそんな彼の機微きびに気づくと、バンバンと背中をたたきに行った。


「ガハハ! いや~ノーストさん、今回はありがとうな! フィラクタリウム以外もたくさん鉱物が採れたおかげで、しばらくこの村は安泰あんたいだ! ……しっかしあんた、どっか行っちまうって話みたいだけどよぉ。その探知能力、天職だと思うぜ? なんなら、ずっとうちにいりゃあいいのによ」 


「む……その厚意を無下むげにするのは忍びないが、昨日さくじつ説明したとおりわれは魔人だ。そういうわけにもゆかぬ」


「く~やっぱダメかぁ? せっかくまた"家族"が増えると思ったのによ」


「……!」


 経緯いきさつを知ってなお、忌憚きたんなく接してくるこの男。ノーストは込み上げる懐かしき感情を、小さなため息とともにかき消した。この者たちの未来を、私情でおびやかすわけにはいかない。彼は話をらすように、楓也へ話しかけた。


「……それで、うぬは無事に夜の水月を入手したのだな」


「はい。ちょっと手間取りましたけど、このとおりです」


 テーブルに置かれた結晶体は、漆黒の闇をまとっている。つかめば固体のごとく感触はあるが、見た目は黒い炎にちかく、物体なのかそうでないのか判断がつかない。絶えず揺らめくその様相を眺めていると、次第に心が不安定になってゆく――アーリアはヴェリスの目を手でおおって心身への悪影響を防ぎながら、猫の姿になっているウーに向かって尋ねた。


「ウーちゃん。これらのアイテムはどういった目的で船に使われるんですの?」


「んとね、フィラクタリウムは次元じげん干渉かんしょう瘴気しょうき()けで、夜の水月はその際に出動してくる精霊のたぐいや、天使除けの役割を担うにゃ!」


「?? ま、まってください、情報量が多すぎます……」


 零子が両手の人差し指をこめかみに当てて、はてなマークを浮かべまくる。しかしウーの言葉が理解できないのは、他の面々とて同じだ。佳果はウーのあごの下を撫でながら、神社で起きた気になる現象について聞いた。


「そういや俺が持ってきたこの設計図もよ、手品みたいにいきなり現れたんだが……もしかしてあれも、次元干渉ってのに関係しているのか?」


「次元といえば、夜の水月もどうやらディメンションアイテムってカテゴリらしいよ。ねぇウー、そもそも次元って一体なんなの?」


「ごろごろ……うにゃー、ごめんね二人とも。次元についてはあまり詳しく教えちゃダメって主様ぬしさまから申しつかっているのにゃ。でも、この世界と魔境がまったく違う次元に存在しているってことなら説明しても大丈夫にゃ」


「違う次元だぁ?」


「そうにゃ。ちなみに異なる次元じげんかんをまたぐ時は、それらをへだてている"はざま"を通る必要があるにゃ。はざまはとても不安定な時空間で、橋渡しには法界ほっかい箱舟はこぶねが必須になるという寸法にゃ」


 ウーの説明によると、船に乗ってこの世界から魔境へおもむく行為自体が"次元干渉"に該当するらしい。その際、経由するはざまには瘴気と呼ばれる汚染物質がまん延しており、フィラクタリウムの魔除けをもちいず、生身で行けばどのような存在であろうとも魔に染まってしまうのだそうだ。


冥土めいどの湖畔は人間であれば通れる仕様だったけど、はざまってところはそうもいかないわけか)


 目を閉じて、今後の策を練る楓也。少し雰囲気の変わった気がする彼を横目で見つめつつ、ヴェリスはもうひとつの疑問をウーにぶつけた。


「精霊と天使って?」


「言うなれば吾輩わがはいのお仲間にゃ。ただ、彼らと吾輩では背負っている役目が違っていて……はざまをある程度すすむと、一気に瘴気が晴れる瞬間があるんにゃけどね。彼らはその先で、次元干渉した者たちを待ち受けているのにゃ」


「……なんのために?」


「それはもちろん、船を撃墜げきついするためにゃ!」


「げ、撃墜ぃ!?」


 シムルがゾッとした顔で驚く。なんでも精霊や天使には色々と種類があるとのことで、はざまにおいては治安維持を務める彼らが出没するゾーンがあり、対応策を持たない不審な船が侵入してくれば即刻、門前払いにあうのだとか。


「……その対応策というのが、夜の水月なんですのね?」


「アーちゃんの言うとおりにゃ。そして夜の水月とフィラクタリウムは相反する性質を持っているから、二つのパワーバランスがちょうど均一になるよう組み込めば、船をどっちつかず(・・・・・・)の存在にすることもできるにゃ。魔境はそういう曖昧な存在以外が入れない領域なので、これらのアイテムがどうしても必要だったというわけなのにゃ」


 ウーの解説により、おおよその事情は把握できた一同。

 最後は設計図についてだ。

お読みいただきありがとうございます。

筆者もウー猫をでたい。


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