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本番

「待って、これを見て」




そう言ってクリスは〖媚薬〗の小瓶のコルクを抜くと、くいっと一気に飲み干してしまった。


ちょっと!?なにやってるの!


〖媚薬〗は少量で十分効くのにそんなにたくさん飲んだら一体どうなることか。


クリスは深く息を吐いて私をじっと見つめる。


それでもクリスはいつもと変わらず冷静に見えた。




「あのクリス、大丈夫なの?」


「この〖媚薬〗全然効かないんだ」


「えっ!どういうこと?」




嘘!


そんなはずない。確かに私はクリスにメロメロになって大変だったんだから。




「何度試したと思う?五回以上はシルフィの前で使ったんだ」


「ちょっと待って?クリス、他人に使わずに自分に使ったの?」


「俺は素直じゃないからなかなか自分の気持ちを伝えられないんだ。いつも余計な一言を言ってお前を怒らせるだろう?だから〖媚薬〗の力を借りて告白しようと思ったんだ」




何てこと!


既に〖媚薬〗を試していたなんてね。しかも自分に使うなんて···。




「それで、〖媚薬〗の注意書きをよくよく読んだら稀に効果の出ない者もいると書いてあった」


「そんな事があるの?」


「ああ、相手の事を好きすぎると効果が出ないみたいだ。〖媚薬〗に頼れない事が分かった今、本気を出さないとどうにもならない。転勤前にお前にどうしても伝えなければと俺は覚悟を決めて色々と準備したんだ。そんな時、お前が〖媚薬〗を持って現れた。驚いたよ、まさかシルフィが俺の事を思っていたのかと内心凄く喜んだ」




や、違います。


ギャフンと言わせてやろうと思って薬を盛ったんです。


やましい気持ちのある私は、少しだけ視線を逸らせた。




「〖媚薬〗を飲んだお前を見て、この〖媚薬〗は本物だと確信した。その時のお前は、なんというか凄く可愛かったし、俺も本気でやるしかないなと腹を括った」


「やめて!その話はもういいから」




恥ずかしすぎるでしょ!


慌てて私は話を止めようとするけど、なぜかクリスはクスクスと笑ってギュっと私を抱き締めた。


ああ、頭がくらくらする。


なぜにこんな状態に?




「ってことで、これからが本番」




クリスは私の前にひざまずくと、改めて薔薇の花を一つ手に持ち私に差し出しながら囁いた。




「昔から、シルフィの事がずっと好きだった。そして、今もこれからも愛してる。ずっと俺の側にいてくれないか?」




クリスはキラキラした笑顔で薔薇を目の前に差し出す。


跳ね上がった私の心臓。


ああ、この笑顔。


とても美しくて私の頬はまたも赤くなりドキドキはいつまでも止まらない。


〖媚薬〗の効果はとっくに切れているはずなのにあの時と同じ状況になっていることに驚く。


頭の中では鐘が鳴り響き、目の前の笑顔がとても眩しい。


ああ、これは〖媚薬〗のせいではない。


このドキドキと、ときめきは実際に起こっていることなんだ。

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