気づかなかった気遣い
高校生、柏木 優希は目覚ましの音を頼りに起床。
いつものように飯を食い、歯を磨き、トイレをする。いつもと何も変わらない日だ。
いってきます!と元気に家を出るが、優希は正直元気ではない。何せ学校が嫌いなのだから当然である。とういかむしろ好きな人は少数派であろう。
しかし彼は好意を抱いている女子、佐々木 遥と会えるからか、学校に行くこと自体に嫌悪感は抱いていない。が、授業は当然嫌である。
とまあ複雑な気持ちのまま険しい坂道を上り古汚いポストを通り、辿り着くのがここ、「関ケ丘高校」である。
「よっ!優希おはよー!」
と明るい声
「あ、お、おはよう...」
と精一杯に返す
「なーに暗い顔してんのさー!てか顔なんか赤くない!?熱!?熱あるの!?」
「うっさいな!なんでもいいだろ!」
「はぁ!?あたしが話しかけてあげてんのにその態度は何よ!」
自分で言うかと心の中でつっこんだ
が、事実彼女はクラス、いや学年一可愛いと言っても過言ではない。しかしその性格からか見た目は人気でも中身はそこまで人気ではないようだ。
「で、そんなあなた様がわざわざ俺に話しかけてくるってことはなんか理由でもあるんだろ?」
「へー、話が早いのね。」
「で、なんの用?」
「簡単に言うと、委員会の仕事手伝ってよ。あたしほかの男子といると噂されるかもでしょ?でもあんたなら流石に無いと思うから。」
なにを言ってるんだこいつと思いつつ、好感度上げるために委員会に入るお前が馬鹿なんじゃないのかと思う。
「いや、別にいいけど...」
「じゃ、決まりねー!放課後に多目的室しゅーごーでよろ!」
あんな倉庫に集合ってことは力作業じゃねぇかよ!俺は絶対に嫌だぞ!? と言いたいところだが彼女の頼みだ。断れるわけがない。
放課後、約束通り多目的室(倉庫)に到着。
「おー!ほんとに来たんだねー。」
「え?だって呼んだじゃん?」
「いや、だってここ幽霊とか出るって噂じゃない?そんな場所にまさか本当に来るとは...。まさかあたしと吊り橋効果とか狙ってる感じ!?」
「じゃ、あとは頑張ってくれ」
「ごめんなさい調子乗りました。手伝ってくださいお願いします。」
このやり取りをするのが俺は意外と好きだ。実際にこの子と俺はお似合いなんじゃないかと思うくらいノリが合う
「で、俺は何をやればいいの?」
「そこの棚にあるやつ全部下ろしといて。あたしが名簿に書くから。」
正直1番やりたくない力作業だ。なんでお前が楽な方すんだよ!と言いたいところだが流石に女子相手にそんなことは言えるはずもなく。
「りょーかい...」
と寂しげに返事をする。
すると、自分には無理なんじゃないかと思う量のダンボールやらが詰まっていた。
これを生徒、しかも女子に頼むなんて先生は頭がイカれてるのではないかと少し不安になる量だ。
というかそもそも俺の身長は160にも満たない。
やるやらないではなく、無理なのだ。
「佐々木ー、届かないんだけどどうしようか?」
「はー?椅子でも乗って取ればいいじゃん?頭悪いの?」
何も考えずに仕事を請け負ったお前にだけは言われたくはないが、事実である。
が、そもそもあんな重い荷物を持てるのだろうか?と不安になる。
おそらく本来は3人ほどで運ぶものだろう。あとで誰か呼ぼう。と思ったが、友達が少ない俺だ。佐々木に頼んで男子を呼んでもらうしか無いのだろう。
小さい荷物から順に下ろしていく。それを佐々木がなにやら紙にメモをとるというブラック企業である。きっと明日は腰が痛いだろう。
沈黙が続いていた。10分は経つのに必要事項以外はお互い喋ってすらいない。実際彼女はいち早く終わらせてカラオケでも行きたいのだろうが、放課後の教室で二人っきりというシチュに妄想が膨らむ俺である。
「そ、そいえばさ、」
勇気をだして話しかける。
「ん?」
メモを書きながら返事をしてくれた。
「ここに出る幽霊の噂ってどっから来たの?」
と無理矢理だが話題を作る。コミュ障の俺にとってはこんなことが出来ただけでも素晴らしい事だ。
「あー、それ?あたしもよく分かんないんだけど、5年前くらいかな?この教室であんたがいじってるその棚が倒れて下敷きになった人が死んじゃったのよ。それで幽霊が出るんじゃないかって噂になってるだけ。」
え、だけってなんだ。自分がいま作業しているこの棚で人が死んでいるというのに彼女はどれだけ呑気なのだろうか。
「へー、でもさなんでその人こんな教室にいたんだろうね?」
「そりゃあたし達みたいに作業頼まれてやってたんじゃない?このメモも日付が5年前だからその人の途中とか?」
バカなのかこの女は。なんでそう呑気なんだ?
だが、本当になんで先生は生徒にこんな仕事をやらせたのか疑問に思う。
「まさかそれで地縛霊的なアレでその人がここにまだ居るってことなのか?」
頼むから違うと言って欲しかった。
「多分そうなんじゃない?」
最悪の答案が返却されてきた。少し泣き目になったであろう俺の目は事実、泣いていた。
その後とりあえず軽い荷物は下ろし終わった。あとは思い割りになぜか上に乗せられているあの荷物だ。体育祭などで使うのだろうか?とりあえず誰か呼んで手伝ってもらわねば。
「ちょっとあたしトイレ言ってくるから休んでていいよー。」
もちろん休ませて貰う気だったが、ありがたく休んだ。疲れからか急に眠気が襲って来て少し寝てしまった。
「おーい!優希、お・き・ろー!」
なんとまあうるさい目覚まし時計だろうか?見たところ男子も連れてきていないし、せめて連れてきてから起こして欲しかった。
「もー、いくら全部終わったからって棚のすぐ横で寝るのはダメだよ?棚が倒れてきたらどうするの?」
確かに幽霊第2号とかは嫌だ。てか実際さっきまで入隊試験受けていたようなものだ。
「じゃ、帰ろっか?」
見るとあの重そうな荷物が降ろされていた。
佐々木は俺が寝ている間に男子でも呼んでやってくれたのだろう。
「気を使わなくても良かったのに...」
「ん?なんか言った?」
「いや、別に。ありがとうな。」
自分なりの感謝を伝える。きっと耳まで赤くなっているに違いない。
「?...何言ってんの?優希が力貸してくれたから終わったんだよー?感謝するのはこっちだよ!」
まあ確かに感謝されなきゃおかしいくらいの労働はした。だが、最後の最後、手伝ってあげれなかったことが悔しい。
「うし、帰るか!」
「だね!」
あとで聞いた話だが、あの時学校には俺たちしかいなかったそうだ。こんなおいしい空間で、なぜ自分は彼女に何もしなかったのだろうと少し後悔した。しかも、先生も定年退職まであと1年の先生1人だった。
告白するには最高のタイミングだったろうに...
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どうだったでしょうか?自分の初の作品です。
暇だから書いた感じではありますが、コメントなどあったら嬉しいです。
また、一体誰が重い荷物を下ろしたのか...。
そこだけ自分がこだわったところです。
もう少しホラー要素入れたかったのですが自分の実力不足が否めません...(泣)