すずねさんが日頃困っていること1
すずねさんは困っていることが多い。結構多い。それはASDじゃない人とそう変わらない悩みかもしれないし、ASD独特の悩みかもしれないけど、すずねさんはグレーゾーンだからどっちも入るかも、ってことで日頃困っていることを書いていく。
すずねさんは友達が少ない。有名なライトノベルみたいだけど、本当に少ない。自信を持って友達だと言える人は二人。この二人の友人はすずねさんがとても気に入っている人たちなので十分満足している。
では何に困っているのかというと、大きく分けて二つあるのだけれど、仕事をしている中で関わる人たちとどの程度仲良くすればいいのかと、プライベートなことを相談できる人がいないということに困っている。
まず、本題に入る前に、すずねさんのスタンスについて書いておく。すずねさんは人と関りを持つのは好きな方だ。幼いころ自分から話しかけに行っていたように、コミュニケーション自体は好きなのだ。ではなぜ話しかけることすらしなくなったのかというと、一言で言えば自分に自信が無くなったからだ。今話しかけてもいい人なのか、今話しかけてもすずねさんを嫌いにならないか、今話しかけることが相手の邪魔にならないか、という思考を獲得してしまったせいで、話しかけることをめっきりやめてしまったのだ。人との距離も最初は一番遠いところから。相手が何度も好意を見せてきて初めて知り合いから話せる人になり、話せる人に話しかけてなんともなければある程度友好を築いた人だと判断する。その後も何度か試し行為にも似た言動を繰り返して、やっと心を受け入れる。すずねさんの心は結構あらかじめ開いているのでそこは変なところだと自分でも思う。
さて、前置きが長くなったが、本題の一つ目、仕事関係の人間関係についてを書いていく。すずねさんの職場は下請けの工場で、延々と同じ工程をするのが好きなすずねさんにはとてもぴったりな職種だ。労働内容で必然的に男女別になるのでそこも気に入っている。少し話をずらすと、すずねさんは小中高と男性にいい思い出が一人分しかないため男性がきらいだ。そのためそういうところも会社の気に入っているところだ。
女性同士なら話せるかというと、そうでもない。すずねさんはその部署では二番目に古株なため、意見を求められることもあり、そういう仕事の話なら事務的に話せるのだが、雑談になると一気に難しくなる。ただ相槌を打てばいいというわけではないのが女性の会話だ。たまに否定、たまに肯定、たまに聞き返しを…としていくと、なんだか仕事よりも疲れる。これが1対1での会話ならまだいい。二人、三人、四人…増えれば増えるほど、会話の流れも速く、交わされる言葉の量も多くなって最早ラジオを聴いている感覚に陥る。すずねさんの限界は三人だ。それもすずねさんを含めて三人だ。聖徳太子を目指した時期もあったが、彼が本当に多くの人の会話を聞き分けられたか疑問がつくというニュースを耳にしてからそれも諦めた。
また、すずねさんの中で仕事の同僚というのはそれ以上でもそれ以下でもない。今の二人いる友達はどちらも学生時代の同級生なのだが、在学中はクラスメイトとしか思えず、友達だと思えるようになったのは卒業したあとも何度か連絡を取り合う関係だと確認し、関係に名前を付けるとしたらこれは友達だ、と思ったからであって、その基準もなかなか理解されないところではある。同僚の中には連絡先を交換してくれた人やもっと仲良くなりたいと言ってくれた人もいる。そんな人たちと、どの程度仲良くできるだろうか。こちらから話しかけられる人もいればそうでない人もいる。もしすずねさんがそのうちの一人と仲良くなって、贔屓したり仕事に支障がでてしまったりすることはないと言えるだろうか。その一人以外と仲良くできなくなったりしないだろうか。その一人に嫌われて仕事が出来なくなったり仕事場に行けなくなったりしないだろうか。それら全て、学生のときにやらかしてきてしまっているので、残念ながら否定できないでいる。すずねさんと同僚、両者が幸せに生活できるように、すずねさんは昼休みの間中、更衣室の隅っこでスマホゲームをして過ごしている。
二つ目、プライベートなことを相談できる人がいないことに困っている。それはすずねさんの性格のことだったり、恋愛のことだったり、仕事の些細な愚痴を言ったり、逆に相手の悩みを聞いてみたりしたいのだ。そんなの二人いる友達のどちらかにすればいいじゃないかという人もいるかもしれないが、それはできないのだ。なぜかというと、そのうちのひとりは仕事でとても病んでいて話すべきではない、むしろ話を聞いて再建させないといけない相手で、もう一人はとても純粋でこんな話題をしてもいいのか悩んでしまう相手だからだ。そんな理由で、と思うかもしれないが、そんな理由なのだ。すずねさんとは自分から悩みや愚痴を言えない人なのだ。
今回の困ったことはこれで終わりにすることにする。まだ悩んでいることがいくつかあるので、次回以降も書いていこうと思う。驚くべきことに、この小説に早くも感想が書かれているのだ。読んでくれてありがとう。それはどうしても書きたかった。それからやっぱり今回の書き方は書きやすいけれど上から目線のような感じがするのでやめようと思う。