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数学だって役に立つ  作者: ウサギ
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2.市街地02


次の日、ニアをつれて悠は買い物に向かった。

昨日、目をつけていたアクセサリー店に入る。


「いらっしゃいませ」


「加護の付いた、アクセサリーが欲しいんだけど、お勧めとかあります?」


「お客様の職業は?」


「俺は学者で、彼女は職人です」


「ニアさんについては知ってますよ。製作をお願いすることもありますから。ニアさん腕が良く注文通りのものを作ってくれますから。ほらこの髪飾りとか。紙には見えないでしょう」


お店の人が奥から出してきた、ニアの作品は大輪の薔薇のモチーフに霞草をあしらったもので、繊細に細部まで良く作り込まれていた。


「へぇ、ニアには才能があるんだな」


「えへっ、まあね」


誉められて嬉しそうなニア。ニアの突発的な発言で旅に連れていくことになったが、街の人にも大切にされているし、もしかしたらこの街に留まった方が幸せなのではと、考えてしまう。


「本当に、俺に付いてきていいのか?お兄さんを探したいなら、代わりに探してきてやるから、ここで待っててもいいんだぞ」


「いいんです。一刻も早く兄に会いたいし、大人しく待っているのは、性に合わないから。それとも、ユウさん、私を連れていくの嫌ですか?」


「いや、そんなことはない。一人旅と寂しいしな。ニアが居てくれると華がある」


「うわぁ、そんなこと言ってくれるんですか。嬉しい!」


「いや、深い意味はない。真剣にとらないでくれ、ニアのお兄さんに殺される!」



「お客様…、お熱いのはよろしいですけど、他所でやってくれませんか…」


ただでさえ狭い店内で、悠とニアは邪魔になっていた。


「すいません」


「お客様にお勧めは、この防御力を高めるネックレスと、知性を高めるブレスレットですね。お買い上げですか?お安くしておきますよ」


「ああ、そうだな」


学者と言ったので戦闘用というよりは、身を守れそうなものを勧められた。とくに、悠もそれについては異論はなかった。


「ちょっと聞きたいんだが指輪は売ってないか?ブレスレットだと少し邪魔でな…」


悠としては剣を持った時に手首でじゃらじゃらしてたら、邪魔になると考えてのことだった。


「お客様、今、指輪と仰いました?でしたら他のお店でお買い求めください。こちらでは売っておりません」


なぜか怪訝な目で見られた。異世界ではこちらの常識が通じないこともある。このお店で売ってないということは、指輪はアクセサリーでないのだろう。食べ物か何かを指輪と呼んでいるのだろうか?


「なあ、ニア、俺はこの世界の常識に疎いので説明してくれないか?指輪はアクセサリーじゃないのか?」


「いえ、確かにアクセサリーですよ。小型で加護も得られるとあって人気は高いですよ。ただ、ちょっと高くて、貴族ぐらいしか買わないんですよ」


確かに悠の入った店は、冒険者向けなので高級品は売ってないのだろう。


「なるほどな、ということは沢山作って売ったら大儲け!」


「できたら、私もやりたいですよ!」


「何か問題があるのか?まさか、利益のために生産量が制限されているとか?」


「そんな、面倒な話じゃないです。単純に作れないんです」


「何で?」


「ひとつ作るのに何かいっぱい魔力が必要なんですよね。特に指輪の穴の空いている部分が、難しくて」


確か、お店のブレスレットも革ひもを編み込んだものか、チェーン状になっていて端で留めるものであった。そういえば、この世界で穴の空いた人工物をほとんど見かけてなかった。


「ふーん、なるほどな」


「一説には穴の空いた空間で魔力が無限に増幅され、制御が難しくなるとか」


「無限?無限に増幅されたら爆発するぞ!それに有限から無限はそう簡単に作れない。それは、厳密に無限なのか?無限は軽々しく使えない言葉だ!」


「えっ?ごめんなさい…」


数学をやっているうちに、無限という言葉にうるさくなった悠。他学科の友達が回数が多いことの比喩で、無限と使っていたので指摘したら、それ以来避けられてしまった。反省したもののその癖はぬけない。



「ん、あれ?爆発…?」


悠は何かを思い付いたらしい。道端で突然座り込んで考え始めた。


「ユウさーん、どうしました?おーい!」


「…」


「大丈夫ですかー?」


「…」


いくらニアが声をかけても、悠は考えに没頭して返事をしない。


つんつん…


つんつん…


ニアが反応しない悠にしびれを切らしてをつっついた。やっと悠は顔をあげニアに気がついた。


「あぁ、ごめん。ちょっと良いこと思い付いて、思考が別の世界に飛んでた」


「ユウさんがやっと戻ってきた。何を思い付いたの?」


「まだ、内緒だ。成功してからな」


「ふーん、そう」


ニアのことを放ってまで、考えていたことを教えてくれないのが、気に入らないらしく、拗ねている。


「これから見せるよ。この辺りの鍛冶屋で使わせてくれそうなところない?」


「本当?でしたら、私の兄の友人がやっている所が近くにありますよ」


「じゃあ、案内してくれないか?」



そうして鍛冶屋に悠とニアは向かった。





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