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数学だって役に立つ  作者: ウサギ
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2.市街地


宿に行く前に少し、市を歩いてみることにした。明日の買い物のための下見である。


国の中心にある街らしく市は栄えていた。ニアはよくここで買い物をするらしく、お店の人に声をかけられていた。


「ニアちゃん、新しい商品仕入れたよ、どうだい?」


「こっちには、隣の国から入ってきた珍しい果物があるよ!食べてみない?」


「ありがとう。今日は見てるだけなので、お構い無く」


「それにしても、ニアちゃんがお兄さん以外の人と歩いてるなんて珍しいわね」


「お兄さんニアちゃんのこと溺愛してたものね。ニアをたぶらかす男は、みんな葬ってやるって」


「あの人ならやりかねないよ、ニアちゃんの隣の兄さん気を付けな!」


ニアの兄がそんな人だとは一言も聞いてなかった悠。せっかく彼を見つけても、ニアの隣にいるだけで葬られてしまうかと思うと、怖くなった。ニアの兄が強いというなら、悠では簡単に負けてしまうだろう。


「ね、ねぇ、ニア。お兄さんってどんな人?」


「えっとね、とっても優しいよ。私が風邪を引くと付きっきりで看病してくれるし、欲しいものを言ったらすぐ買ってくれるよ」


ニアに優しいのは分かった。シスコン以外の情報が欲しい。


「ニア以外の人にはどんな感じ?」


「私がお世話になっている人だからって、みんなに丁寧な態度をとって、人当たりがいいって言われてるみたい。あっ、でも私が男の子と話すとすっごい目で睨んでたかも。見た目はちょっと怖いけど、大丈夫!」


「いやいや、俺、男だからそれヤバイよ!」


ニアの兄と会った暁にはやはり覚悟を決めた方が良さそうだ。ニアが取りなしてくれるのを祈るばかりである。



ちなみに、ニアに兄の写真を見せてもらったが案の定というか、強そうだった。騎士団長(団長を務めるだけあってかなり鍛えてる)の体格を1.5倍にした感じで、街中で会ったら絶対に目を合わせたくないと思った。





ニアも女の子なので買い物が好きだった。今日は見てるだけと言いながら、これ使えそう!とか言って色々買い込んでいった。


「ニア、これ以上買っても持てないよ?そろそろ帰ろう」


「えー、まだ買い物したい。でも買ったら片付けないといけないものね。今日はここまでにして後は明日にしようかな」


やっとニアが買い物をやめると言ったので、悠はニアを家まで送ってから、宿に行くことにした。





「じゃあな、明日また迎えに行くよ。今日買ったものは片付けておいてくれよ?それもって旅には行けないからな」


「任せておきなさい!」


ニアは何か企んでいるようで口許が笑っていた。

様子を見るに自分に被害が及ぶ類いのものでないと判断した悠は、見なかったことにした。


「おう、それじゃ、おやすみ」


「おやすみなさい、ユウさん」





ニアが家に入ったのを見届けて、宿に行った悠。

神官に言われた場所に行ってみると宮殿のような建物が一軒。まわりに他に宿らしい建物はない。


「いや、これ宿なのか?誰かの邸宅じゃないのか?」


しかし、他にそれらしい建物はない。


「行くだけ行ってみるか。あの神官場所間違えてないよな…。違ってたら宿の場所聞けばいいか」


そして、周りをきょろきょろ見回しながら恐る恐る建物に入る悠。ただの不審者もしくはこそ泥にしか見えない。


「すいま…「お帰りなさい、ご主人様!」」


突然の出迎えをうけた悠。一瞬メイドカフェか何かかと思ったが、よくよく見てみるとメイドだけでなく執事のような人もいた。さらに、壁際には全身を鎧に身を固めた騎士がいた。


「まちがえました、ごめんなさい!」


宿屋の場所を聞くという気も起こらず急いで逃げる悠。いやいや、騎士に不審者として追い払われたらひとたまりもないよ!と焦っていた。


「お待ちください、ユウ様ではないのですか?」


執事の発した言葉に、悠の動きが止まった。


「えっと、俺の名前は悠ですが、様をつけられる地位におりません。人違いではないですか」


「リリアーネ様のお客だとお聞きしたのですが、違いました?」


「あぁ、はい、そうですけど…」


「ユウ様の特徴として、黒髪で他は可もなく不可もない容姿なので特筆すべき特徴はないと伺いました」


どうやら自分で間違いないらしい。悠は、自分の容姿に自信があるとは思ってないので、否定はできないが、もうちょっと言いようがあるだろうと思った。自分の特定がそれでなされたと思うと少し悲しいが仕方ない。それに特徴がないことが特徴とは逆説的である。とにかく執事に悪気はない。リリアーネの言葉をそのまま伝えただけだ。


「はい、それは俺です」


「では、奥へどうぞ。お部屋に案内します」


「ありがとうございます」



そして案内された部屋はやっぱり立派なだった。


「俺の住んでる所より一部屋が広いよ…」


悠は、地方から出て東京の大学に通っているので、一人暮らしをしている。当然、収入はアルバイト頼みの大学生なので、そんなに広いところに住めるわけでない。特に大学の近くは地価が高いので、家賃も高く仕方なかった。


おもいっきり広いベッドで転がり、お風呂に入って一日の疲れを癒した。午前中に連れられた騎士団での訓練のお陰で全身が筋肉痛である。



ちなみに、夕食の時に聞いたところこの建物は、迎賓館で、主に外国の王族をもてなすのに使われているらしい。リリアーネ様の大切なお客なのでお泊めしたとのこと。

ということは、この部屋のよく分からない置物もきっと高価である。壊したらシャレにならないので、悠はそれ以降、部屋のベッドで跳び跳ねたりしないことを心に誓った。



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