1.序章06
「なぁ、ニア、一つ聞いておきたいんだけどいいか?」
「はい、なんでしょう?」
「ニアって戦えるの?これから道中魔物が出たり盗賊に教われたりすると思うけど、俺は他人を守りながら戦えるほど強くないぞ」
「えっと、私戦えません!ただ身を隠蔽する術には長けているので、ユウさんが戦うの見守ってます!」
「……」
戦力を当てにしてただけに、がっかりする悠。
どうやら自分で何とかしないといけないようだ。
悠は今後の指針の伺いと、あわよくば誰か戦力を貸してもらいたく、リリアーネのもとに戻ることにした。
神殿にたどり着いた。ニアは滅多にここまでくることがないらしく、立派な建物に目を輝かしていた。中には入ったとこはなく緊張しているようだった。
「リリアーネさん、ユウです。戻ってきました」
「お帰りなさい、勇者になって帰ってきました?」
「この短期間で、さすがにそれは難しいですよ…」
と、ここでユウの陰に隠れていたニアに気付いたリリアーネ。なぜかリリアーネとニアの目線が激しくぶつかった。
「リ、リリアーネさん?この子はニアって言います。これからの旅に同行させようと思います」
「あら、そんなに幼い子を連れていっては可哀想ですよ。代わりに私が一緒に行ってあげるわ」
「リリアーネ様、私そんなに幼くありませんよ。もう14歳です!それに、いくらリリアーネ様でも、私と悠さんの仲は引き離せません!」
「ニアさん、悠さんを呼んだのは私よ。私が付いていくのが筋だわ」
悠を巡って笑顔でにらみ合う、リリアーネとニア。というか、正確にいうとリリアーネは旅に魅力を感じていた。冒険=面白そう!と考えているらしく好奇心の赴くままに付いていこうとした。
ついでに、ニアをからかうのが楽しそうだった。
「むぅー」
「私も、行きますよ!」
この膠着状態を破ったのは、控えていた神官だった。
「リリアーネ様、何を仰られているのですか。貴方がここに居ないと国は滅びますよ。国の結界を支えられるのはリリアーネ様だけなのですから。そろそろお仕事に戻ってください」
そうして、リリアーネは神官に引きずられて奥へと消えていった。
そして、リリアーネを仕事に戻したのだろうその神官だけが戻ってきた。30歳すぎの男性だが、疲れて見える。いつもリリアーネのフォローにまわっているのだろう。上司がダメだと部下が大変なのはどこの世界でも同じようだ。
「我が主がご迷惑をかけました。話は聞きました。もし、我が国を救ってくださるなら、予言した賢者様に詳しいことを聞くのがよろしいでしょう」
「はい、俺としては国を救うのは構わないんですけど、もとの世界に戻れます?」
「そうですね、失望させるようで申し訳ないんですけど、私たちの方でもユウさんがどうやって来たのか分かりかねておりまして。手は一応尽くしてみますが…」
「うーん、それは残念だな」
もしこれが本当にゲームだとしたら、クリアしないと帰れないのではと、薄々思っていた悠。知りたいことも色々あるし賢者に話を聞きに行くのが良さそうだ。賢者というからにはリリアーネより頼りになるだろう。
「そうそう、ユウさん。賢者様は東の塔におられます。ただ、最近の長雨で道が崩れているという話も聞きます。気をつけてください」
そして、悠は神官に装備を整えるようにと銀貨を渡された。そして、今日は遅いからもう休むようにと宿を手配してもらい、宿と市の場所を丁寧に教えてもらった。
よく気の回る神官である。リリアーネよりこの神官がトップに立った方がいいのにと悠は思ってしまうのであった。
アドバイスを頂いたので、ここまでの分全体を加筆、修正しました。
アドバイスありがとうございました。