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ささやかな物語

壊れたオルゴール

作者: 優悠


私の部屋にある小さな棚には『 タカラモノ』と呼んでいる小物が多く並んでいた。


仲良くなりたいと密かに憧れていた先輩と一緒に見に行った映画の半券に、初めての彼氏とのデートで行った海辺で見つけた綺麗な貝殻……。ほかにもそんな思い出が詰まったものが並んでいた。


一見ガラクタのように見えるそれらは全て私の宝物だ。


その中に一つ、オルゴールが一緒に並んでいた。


アコーディオンを持った牛のオルゴール。


しかしそれはもう、音を奏でることは無かった。


音を奏でることをしなくなってから、私はこのオルゴールへの記憶を日に日になくし始めていた。


いつ、だれに、どうしてもらったのか。


確か大切な人だったのは覚えているのに。


確かまだ幼かった頃だったような気がするのに。


その音色を聞けばすべての記憶は嘘のように私の元へと帰ってくることだろう。


そう思えば『タカラモノ 』と呼ぶこの物たちの存在も急に曖昧になる。


もしもこの貝殻の一部が欠けてしまったら、

もしもこの半券が色あせて映画の題名を隠してしまったら、

私はすべての記憶を失ってしまうのだろうか?


カタチをなくしたら、その存在は時間とともに消えてしまう……


どれだけ大切にしていても、本来のカタチをなくせば、本来の存在にはなれない。


かなしいね。


さみしいね。


私は壊れたオルゴールをひと撫でして、棚へ戻す。


このオルゴールの記憶は失くしても『大切なものだった』記憶はここにあるから。


それは紛れもなく私の宝物だから。



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― 新着の感想 ―
[一言] 記憶の奥底に、オルゴールは奏で続けられている。 そんな気がしました。
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