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ほらほらホラー

ナサケハヒトノタメナラズ

作者: うどん

情けは人の為ならず。

意味、『情けは人の為だけではなく、いずれ巡り巡って自分に恩恵が返ってくるのだから、誰にでも親切にすべきである。』




一般的にクレクレ集り屋さんが使う言葉であり、

情けを掛けられる側がこれをいう場合、その恩恵を返されることは極めて稀である。

恵まれない方々と交流をしましょう。


学校の廊下にそんなポスターが貼ってありました。


『そのポスターを読むと世界の何処かにいる恵まれない方と文通で交流を図りましょう。

文章の翻訳はスタッフが行いますので日本語で構いません。』


そんな内容でした。

私は早速応募することにしました。


そして応募して暫くすると文通相手の住所と名前が送られてきたので手紙を出すことにしました。



『始めまして。高良(たから)玲奈(れな)と言います。キジコさん、これからよろしくお願いします。』



最初は当たり障りなくと思い、そのような内容を送りました。

それから2週間後、返事がきました。


『こんにちわ。お腹が空いているので、食べ物を下さい。』



いきなり物を要求されたので、少々驚きましたが、貧しい人と言うのは切羽詰まっているものと思い、

仕方がないので、その次の手紙を入れる封筒に飴と煎餅を入れて贈りました。




そして2週間後、キジコさんから返事がきました。


『わたしからのプレゼントです。それとまたお菓子を下さい。』


私宛に届いたキジコさんからの封筒には黒曜石と、キラキラした珍しい虫が入っていました。




また、私が返事と共にお菓子を入れて送ると、その2週間後に返事がきました。


『お菓子もっと下さい。それと、あなたの周りの色んな事教えて下さい。』



私はこの時初めて、お菓子の要求以外の内容を受け取ったので嬉しくなって、

この時から家の周りの風景や学校の事。家の事を書くことにしました。

この時の封筒には、乾燥した押し花の様なものが送られてきました。私はそれをブログにアップすることにしました。



それから2週間後、風邪をひいて数日休んでいる内に、

何時の間にか廊下のポスターは消えていましたが、

キジコさんからの返事はやってきました。


『うらやましい。普段何をしてますか?』



私はそれに対してスマートフォンでのゲームやSMS、ブログにアップするための思い出作りをしていると返事をしました。

それからまた2週間後。


『スマートフォン欲しいです、下さい。』



流石にそれは上げられないし、通話料も払えないことを送ると、



『あなたはけち。じゃあテレビを下さい。それでいいです。』



そんな返事が返ってきました。

テレビも送れないと返事をすると、


『だったら何をくれるの。何かと交換でもいいです。』


と返事が来たので、ごめんなさいと謝ると、



『あなたは恵まれてるのに。』



と返事が返ってきました。

この時には良く解からない枝とツタを組み合わせたリングの様な物が一緒に同封されていました。


流石に幾ら日本人が裕福でも、タカって当り前。恵んで貰えて当たり前と言う態度を取られると気分が悪くなりましたので、

返事をしばらく見送る事にしました。



そして一か月程経つと、キジコさんから手紙がきました。


『両親や家やテレビや冷蔵庫はあるんでしょ。うらやましい。わたしも欲しい。』



そんな内容でした。同封されていたプレゼントは薄い紙の人形でした。

最近、ブログの方は閲覧してくれるファンも付いたようで上がり調子でしたが、

この文通の方は少し相手がハズレ(・・・)だったかなと思わなくもありませんでした。

少し、横暴だったので、



『あなたにもしそれらが無かったとすれば同情しますが、流石に大切なものはあげられません。』


と送り返しました。





それから2週間後、何時もなら返事が来るころになっても返事が来なかったのですが、

その更に1週間後に返事がやってきました。

流石にその内容を見たとき、私は絶句しました。

その手紙の内容は、


















『あなたが欲しい。下さい。』






































この話には続きがあります。


高良さんはそれから手紙のやり取りを一切やめる事にしました。

その旨を無くなったポスターに書いてあった事務所の連絡先に送りましたが、返事は来ませんでした。

代わりに文通相手からの手紙もそれ以降無くなりました。

そして、ブログと部活と勉強に精を出して半年の月日が経ちました。


彼女が下校して帰宅していると、よく解からない人型が向こうからやってきました。

ボロボロの服を着ていて、足は裸足。その足もとても細く浅黒い色をしていました。

浅黒いといっても汚れているような黒だったり、鬱血した様な黒と言う意味で、

健康的な日焼け色ではありません。

それ以外の箇所はフードを深く被り、包帯でグルグル巻きにした両手が服代わりの布から見えているぐらいです。

身長は丁度高良さんと一緒。



その様子は異様でした。

少なくとも日本でそのような姿をしている人を見た事はありません。

そもそも生きた人間かも疑わしいのです。


高良さんはその相手を避けようと敢えて道の反対側を歩こうとしましたが、

その相手は高良さんの方にわざわざ寄ってきて彼女にこう言ったのです。







「アナタトワタシ、コウカンシヨ。」


















次の日から、高良さんは学校に来る事無く、心配した同級生がメールを送ると、

『テレビやお菓子に恵まれてシアワセ。』


と返事が来たそうなのですが、それっきり、彼女とは連絡が取れなくなってしまったそうです。

得体の知れないモノであっても、

単純に恩知らずな外国人であったとしても後味の悪いお話でした。

皆さんも、くれぐれも不用意な優しさを見せて付け込まれることの無き様。

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