祈り
汚い連載が終わったからキレイな話が書きたかった。
生への渇望は、私にとって祈りに近しいものだった。
昔から病弱で、家の外に出たことがない。いつも、二階の窓から外の世界を眺めていた。そこはあまりにも美しく、眩しかった。目が眩むような、鮮やかな世界。この家をいつか抜け出して、精一杯羽ばたいて生きたい。
私は蛹。今はまだ、自分の意志では動くことさえできない。だが、きっと生まれ変わる。その日を信じて、ただ待っていた。蝶として羽ばたく日を。
しかし現実は非情だった。私は死の宣告を受けた。神がいるとするならば、それはきっと薄情者だ。私に蛹のまま死ねと言うのだ。
悔しかった。何もかもが憎かった。どうして私だけ、どうして。いつの間にか私は、あんなに欲していた世界を、ひたすらに憎んでいた。
私だけが幸せになれない。そんな世界いらない。そんな風に考えることもあった。しかし、神さえ見捨てた者に、どうして世界を変えることができようか。私の存在はあまりにちっぽけで、ひたすらに醜い。涙があふれた。止まらなかった。
ああ、生きていたい。ただ生きていたい。私はまだ、世界のほんのひとかけらしか見ていない。あの丘の向こうにはどんな景色が広がっているのだろう。そこはどんな匂いがするのだろう。
そうだ、外に出よう。どうせ、あと一週間も生きられない。
死を受け入れたとき、私の生への渇望は、より深く、より強くなった。それはもはや祈りではない。
さあ、飛び立つのだ。世界へ。
ミーンミンミンミン…
書いててだんだん蝉かな?ってなってきた