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短編まとめ

祈り

作者: 猫面人

汚い連載が終わったからキレイな話が書きたかった。

 生への渇望は、私にとって祈りに近しいものだった。

 昔から病弱で、家の外に出たことがない。いつも、二階の窓から外の世界を眺めていた。そこはあまりにも美しく、眩しかった。目が眩むような、鮮やかな世界。この家をいつか抜け出して、精一杯羽ばたいて生きたい。

 私は蛹。今はまだ、自分の意志では動くことさえできない。だが、きっと生まれ変わる。その日を信じて、ただ待っていた。蝶として羽ばたく日を。

 しかし現実は非情だった。私は死の宣告を受けた。神がいるとするならば、それはきっと薄情者だ。私に蛹のまま死ねと言うのだ。

 悔しかった。何もかもが憎かった。どうして私だけ、どうして。いつの間にか私は、あんなに欲していた世界を、ひたすらに憎んでいた。

 私だけが幸せになれない。そんな世界いらない。そんな風に考えることもあった。しかし、神さえ見捨てた者に、どうして世界を変えることができようか。私の存在はあまりにちっぽけで、ひたすらに醜い。涙があふれた。止まらなかった。

 ああ、生きていたい。ただ生きていたい。私はまだ、世界のほんのひとかけらしか見ていない。あの丘の向こうにはどんな景色が広がっているのだろう。そこはどんな匂いがするのだろう。

 そうだ、外に出よう。どうせ、あと一週間も生きられない。

 死を受け入れたとき、私の生への渇望は、より深く、より強くなった。それはもはや祈りではない。

 さあ、飛び立つのだ。世界へ。


ミーンミンミンミン…

 

書いててだんだん蝉かな?ってなってきた

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― 新着の感想 ―
[良い点] 短い話ながらも言葉選びが上手いのか、読んでいて自然と情景が頭に思い浮かぶようでした。 [一言] 後書きの蝉かな?で笑いました。
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