球技大会
長くてごめんなさいm(__)m
「今日のホームルームは、球技大会のメンバー決めだ。まぁ、出たいのに名前を書け」
って、先生が言う。
何で、球技大会なんてもんが、あるんだろう?
運動全般、苦手な私にとっては、苦痛でしかない。
「梓。一緒に出ようぜ」
って、王子こと流崎紫音くんが言ってきた。
嫌々。
私が出ると、他の人に迷惑が・・・。
「・・・ってことで、オレと梓は、バレーで・・・」
って、いつの間にか決められてるし・・・。
トントン・・・。
背中をつつかれた。
「梓。仕方ないから、あたしも一緒に出てあげる」
って、後ろの席の朋子が声をかけてくれた。
「朋子・・・ありがとう・・・」
半泣きの私の頭をポンポンと軽く叩く。
「メンバーが、決まったから今日から、各自練習しろよ」
って・・・。
今日からなんだ。
ハァーー。
気が重いよ。
「梓。頑張ろうな」
紫音くんが笑顔で言う。
その笑顔、今の私には、きついです。
放課後。
紫音くんが。
「着替えて、体育館に集合な」
何て、やけに張り切ってる。
「そんな嫌な顔しない」
朋子が、苦笑してる。
「だって・・・」
「あいつも一緒なんだから、大丈夫だって・・・」
朋子は、彼に目線を送る。
そうだけど・・・。
「ほら、着替えに行くよ」
朋子に背中を押されて着替えに向かった。
体育館に行くと、他のクラスも練習していて、自分達のメンバーが見つからない。
「どこだろうね?」
キョロキョロと探してると。
「キャーー。紫音くーん」
って、黄色い声援が聞こえてきた。
「声の方へ行けば、間違いないんじゃない」
朋子が言う。
「そうだね」
私たちは、他の生徒の邪魔にならないように移動した。
やっとも思いでたどり着いたものの、女子の壁が出来てて、中には入れない。
これをどけて、中に入るの?
朋子を見る。
朋子も入る気になれないみたいで、手を挙げて首を横に振ってお手上げだって顔をする。
「どうする?」
「まぁ、柔軟してから、二人でパス練習しようか」
朋子の提案に頷き、隅の方で柔軟体操してから、パス練習を始めた。
だけど、私が下手すぎて、ラリーなんか続くはずなく。
「ごめん。朋子」
「気にしない。梓の運動音痴は、知ってるから・・・。何回失敗しても構わないよ」
朋子が優しく言ってくれるから、少しは気が楽になる。
なかなか上手くいかなくて、ガムシャラに練習してた。
「こんなところに居た」
頭上から声がする。
見上げれば、紫音くんが真顔で立っていた。
「あっ・・・」
「何で、こんなところで練習してるんだよ」
怒ってる。
「だって・・・」
「“だって“じゃないだろ!行くぞ」
腕を引っ張られる。
「ちょつ・・・朋子・・・」
朋子を振り返ると、後ろを着いてきてる。
・・・が、苦笑を漏らしてる。
他人事だと思って・・・。
ついた場所では、クラスメンバーが揃っていて、練習していた。
「どこに行ってたのですか!」
有美さんが、物凄い剣幕で言う。
どこだっていいじゃん。
私がいない間に、紫音くんと仲良く練習してたんでしょ(ちょっと、嫉妬してたりして・・・)
私が居たって、足手まといなだけだし・・・。
心の中で、やけっぱちになっていた。
「隅で、パス練習してたけど」
朋子が、私の代わりに答えてくれる。
やさぐれてる私には、説明する気なんてない。
「チームプレイなのですから、乱さないで欲しいですね」
って、腕を組んで、こっちを睨む有美さん。
「すみません・・」
嫌々、謝った。
円陣になって、パス練習をしだす。
・・・が、私のところに来る度にラリーが途切れる。
「ごめんね・・・」
さっきから、謝ってばかり。
「やる気がないのなら、外れててください!」
あ・・・。やる気がないわけではない。上手くいかないのだ。
足手まといな私は、そこから抜け出して壁際に移動する。
ハハハ・・・。
声にならない声。
私には、無理だよー。
最初っから、諦めてる自分が居た。
こんな隅っこに居てもすることがないので、私は、ボールを持って外に出た。
人気の無いところで、壁向かってトス練習。
なかなか上手くいかない。
どうしたらいいのかな?
自分なりに練習する。
これは、本屋さんにでも行って、本を買って読んで練習しなくては・・・。
「梓。こんなところに居た」
声がかけられて、振り返ると朋子が迎えに来た。。
「朋子。今日、本屋さんに付き合って・・・」
「いいよ。あいつは、どうするの?」
女子に囲まれてる彼を見る。
「・・・いいよ。どうせ、あの子達と一緒に帰るんだろうし・・・」
「そっ・・・。じゃあ、着替えたら、帰ろ」
「うん」
私たちは、更衣室に向かった。
着替えを済ますと本屋さんに向かう。
「何を買うの?」
「バレーの基本入門?みたいなの」
私が言うと。
「そんなの買わなくたって・・・」
朋子が、苦笑いしてる。
「そうなんだけど、さぁ・・・」
「ねぇ。それなら、康幸さんに特訓してもらえばいいじゃん」
康幸さんとは、私のお兄ちゃん。
「お兄ちゃんが、私のために動くはずないじゃん」
「そんなのわかんないじゃん。康幸さんなら、きっと動くんじゃない?」
確信があるのか、自信満々に言う。
「あっ・・・。噂をすれば・・・」
目の前にお兄ちゃんの姿。
「おっ、梓。どうした?浮かない顔だな」
お兄ちゃんが、心配そうに顔を覗き込んできた。
「康幸さん。梓にコーチしてあげてください」
朋子が、真顔で言う。
「あっ、朋ちゃん。・・・って、いきなり、何の話?」
「梓の運動音痴、知ってますよね」
「うっ・・・まぁ、な」
「今度、球技大会があるんですが・・・」
朋子が、粗方説明すると。
「そっか・・・。まぁ、梓がやる気あるなら、コーチするけど」
お兄ちゃんが、私を見る。
「いいの?迷惑じゃないの?」
「何で、迷惑だなんて思うんだよ。妹のことだからな、少し力になりたいと思うのが、普通だろ」
お兄ちゃんが、私の頭を叩く。
ポン。
って、音がする。
「お願いします」
私は、頭を下げた。
「よかったね」
朋子が、小声で言う。
私は、それに頷く。
「じゃあ、着替えて、公園で練習するか・・・」
「うん。じゃあね、朋子。また明日」
「また、明日ね」
「朋ちゃん、教えてくれてありがとう」
お兄ちゃんが、笑顔で言ってる。
お兄ちゃんと並んで家に帰ると、動きやすい服装に着替え、玄関に行く。
玄関では、ボールを持って待ってるお兄ちゃんが居た。
「さっさと行って、やるぞ」
「はい」
公園に着くと、お兄ちゃんのスパルタコーチが始まった。
「梓。ボールから逃げるな。向かっていけ!」
って・・・。
うーん。
「梓は、何でも一生懸命に取り組むところがいいんだよ。出来なくても、ちゃんと向き合う姿勢をとっていれば、誰にだって認められる。諦めるなよ。オレは、それまで練習に付き合ってやるから」
お兄ちゃんが優しく言う。
「うん。・・・私、頑張るよ」
心の中で、もう一度呟いた。
球技大会前日。
「梓。今日も練習でないの?」
朋子が聞いてきた。
「うん。あそこで待ってる人居るし・・・」
門に視線を送る。
「だったら、呼び込んで、一緒に練習しようよ」
「えっ。だって、迷惑・・・」
「なわけないでしょ。ほら、呼んでおいで」
「う・うん」
私は、教室を出て、門まで走った。
門の所の人垣を掻き分けて。
「お兄ちゃん」
って、声をかける。
「梓。行くか・・・」
「ちょっと待って・・・。朋子が、コーチして欲しいって・・・。だから、中に入ってきて・・・」
「いいのかよ・・・」
慌てるお兄ちゃん。
「いいんじゃないの?ほら行こう」
私は、お兄ちゃんの腕を引っ張った。
他の生徒に注目されてるが、今は無視。
体育館の入り口で、朋子と会った。
「朋ちゃん、いいの?」
「いいよ。梓、着替えておいで」
お兄ちゃんを朋子に任せて、着替えに行った。
着替えを済ませて、体育館に戻ると。
「キャーーーッ!」
って、黄色い声援が、体育館に響く。
またか・・・。
私は、声のする方に足を向ける。
そこでは、お兄ちゃんと紫音くんの二人が、ラリーしてた。
何で?
朋子を見つけて。
「いやぁさぁ。流崎が。さぁ、人の話も聞かずに康幸さんに勝負を仕掛けちゃって・・・」
ハァ?
また、何があったの?
紫音くんが、お兄ちゃんに勝負を挑むのは、おかしいよ。
「・・・ということで、梓。止めてきてね」
朋子が、私の背中を押す。
ちょ・・・ちょっと・・・。
私は、二人の前に出たが、気付くはずもなく。
「二人ともやめて」
私の声も届いてないらしい。
もう、何してるんだよ!
「いい加減にしてよ!何で、二人が争ってんのよ、お兄ちゃん、紫音くん」
大声で言う。
紫音くんが、私の方を向いた。
「お兄ちゃん・・・?」
呟くから、頷いた。そこにボールが飛んできて、紫音くんの頭に当たった。
すると、ヘナヘナと崩れるように座り込んだ。
「梓。こいつなんなんだよ。朋ちゃんと中に入って、練習を見てたら、急に声をかけてきて、勝負しろなんて言うからさ・・・」
そっか、お兄ちゃんに紹介してなかったけ・・・。
「なぁ、梓。梓が練習もせずにこの人と居たのって・・・」
紫音くんが、弱々しい声で聞いてきた。
「・・・うん。お兄ちゃんに特訓してもらってた。これでも、お兄ちゃん、バレー部に入ってたから、きっちり、基本を叩き込まれてました」
私が、笑顔で言うと。
「ハァーーーーーー。マジか・・・」
と、特大の溜め息。
何?
なんの溜め息?
「その通り。梓が、運動音痴だからな。基本を徹底的に教え込んでた」
お兄ちゃんが、補足した。
「・・・で、梓。こいつは?」
えっ・・・と、何て言おう。
すると、紫音くんが素早く立ち上がって。
「梓さんとお付き合いさせてもらっています、流崎紫音です」
紫音くんが、堂々と名乗った。
「そっか・・・。こいつが・・・。まぁ、梓の中身で気に入ってるのが、よくわかったよ」
お兄ちゃんが言う。
「よろしくな」
お兄ちゃんが、紫音くんの肩を叩いた。
「はい」
紫音くんも頷いてた。
「練習、始めよ」
朋子の声で、周りも練習し出した。
円陣を組んで、パス練習をした。
球技大会当日。
体育館にメンバーが集まり円陣を組むと。
「とりあえず、初戦突破を目指して、頑張ろう」
紫音くんが声をあげる。
「オー!」
皆が、声をあげた。
うん。
私も、足を引っ張らないように頑張らないと・・・。
気合いを入れてると。
「梓。気合い入りすぎ」
紫音くんが、苦笑しながら言う。
「だって・・・。皆の足引っ張るのだけは、嫌なんだもん」
頬を膨らませる。
「それが、ダメなの。無理しすぎて、怪我されるのはやだし・・・」
口を尖らせる。
「梓は、いつも通りに一生懸命にやってればいいんだよ」
うーん。
それって・・・。
「っていうか。ちょっといい?」
彼は、私の腕を引っ張る。
人気の無い場所に来たところで、ギューって、抱き締められた。
何?
「昨日は、ごめん。お兄さんに嫉妬してた」
って、突然の告白。
「あの人と居るときの梓、とっても嬉しそうだった。太刀打ちできないと思ってたから・・・」
どこで見てたんだろう?
でも、紫音くんが弱音を吐くなんて・・・。
「紫音くんが、そんな風に思うこと無いよ。お兄ちゃんは、紫音くんのこと、気に入ったみたいだし・・・」
「エッ・・・。そうなのか?」
動揺する紫音くん。
「うん。紫音くんのこと、気に入ってるよ。もっと、鍛えてやるって、言ってたもん」
私が言うと、紫音くんの顔が歪んだ。
「お手柔らかにって、言っておいてくれるとありがたい」
って、苦笑する。
「ねぇ、梓。キスしていい?」
エッ・・・。
「・・・うん・・・いいよ」
そして、唇が、重なる。
「充電完了っと・・・」
紫音くんが、ニコニコしてる。
私はというと、恥ずかしくて顔を逸らしてる。
「梓は、大人しく俺に従ってなさい」
って、耳元で囁かれた。
あんなに練習したのに、結局足手まといの何者でもありませんでした。
はぁ……。
梓のお兄ちゃん、優しいですね。
自分には、兄はいないので、羨ましいです。
(そういや、お兄ちゃん久し振りの登場ですね。どこに出てるか、わかりますか?)