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 貧しい小さな村に、ノースは産まれた。山から強い風が吹きつけてくる村で、固い地盤と強い風は植物が育つのには向かず、村は農耕や牧畜で生計を立てる事が困難だった。山を一つ越えた先には港街があり、困窮した村人達は街へ出稼ぎに出るようになった。街道から外れた村は街まで道らしい道がなく、山道に慣れた村人の足でも片道一時間以上かかったが、村人に残された活路は他に残されてはいなかった。

 そんな貧しい村で、ノースはさらに苦しい生活を強いられていた。ノースの父は全く働かず、妹のマリアを宿した身重の母と子供だったノースが必至に稼いだお金を酒代につぎ込み、夜遅くまで街の酒場を飲み歩いた。そして、父は暴力的でもあり、さえない女と結婚して失敗したと母を殴り、役に立たない子供だとノースを殴った。

 マリアが生まれた後もその生活は変わらず、産後の身体で無理をして働いたのがたたり、母は重い病気を患った。ノースは病気の母の為にいままで以上に働いたが、それでも稼ぎは減り、父はますます荒れた。病気の母や幼いマリアにも父は手を上げ、父が家にいる時は怯えて暮らすしかなかった。

 ノースが子供から青年に変わる頃、病気の身体で働いて弱っていた母は、冬の寒さに勝てず、春を迎える前に死んでしまった。その日、父は母が死んで酒代が減ったといつも以上に暴れた。ノースを殴って鬱憤を晴らし、しばらくして酒を飲みに出た。

 そして、父が家に戻ることは二度となかった。

 酒場の帰り道に、父は崖から落ちた。かなり酔っていたらしく、足を踏み外して落ちたのだろうという事だった。

 父が死んだと知り、ノースは喜んだ。これからは妹と二人、怯えることなく暮らすことが出来ると安堵した。

 しかし、その平和はすぐに壊された。

 父は街で借金を作っていたのだ。父が死に、借金取りがノースに取り立てに来た事で発覚した。借金の額は一、二年で返せるようなものではなかった。ノースは昼も夜もなく働き、何とか返そうと努力したが、身体はすでに限界が来ていた。


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