表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悦楽の儀式  作者: 香住景
1/9

0.プロローグ

 人間の内臓を初めて掴んだ時の感触は、とても柔らかくて、温かくて。

 あれは、今思い起こしても身震いがする。

 腹の底から熱いものがじわじわと全身に広がって、動悸がする。息が荒くなる。頭の芯がぼやけて、白くなって、何が何だか分からない。無性に笑いが込み上げてくる。

 あの瞬間、とてつもないエクスタシーを感じた。セックスなんて比じゃない。それ以上の快楽だ。

 おまけにまだ温もりを持っていた死体は、日頃その美貌を振り撒いて周囲から持て囃されていた女。けれどもう二度と動くことのない彼女は、唇が苦しげに歪み目も上向き、見るも無惨な顔となっていた。

 だがそんな醜態すらも、愛おしく感じた。むしろ生きている時より、ずっと、ずっと美しい。

 自らの手で切り裂いた死体の腹部から、腸を握り締め自慰をした。何度も何度も、気の済むまで。生きていた中で最も恍惚とした時間だった。

 ああ! あのときの言い知れぬ悦びといったら! あれは凡庸に生きていたんじゃ決して味わうことのできない感動。もしもう一度体験できるのであれば、どんなことでもしよう。何もかも全てをかなぐり捨てたって構わない。あの行為以上に心が動かされるものは、きっともうこの世にはない。

 そうだ、もう一度だけ。もう一度だけ、あの快感を。大丈夫。うまくやれば、バレやしない。あれだけの大仕事をやり遂げたんだから、大丈夫だ。次だって、簡単なことじゃないか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ