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《マスター、魔素器官に意識を取られすぎです》
(わかってる! わーかーっーーてーーーるっ! そんなやいやい言わないで)
森から施設への帰り道。アイに散々突っ込まれながら歩いている。
そんなすぐ出来ると思う? いや出来ない。(断定)
オレ、2つのこと同時にやるの苦手なんだよ。1点集中! これは得意なんだけどね。
《マスター、足が止まっています》
アバババババ・・・・もうだめポ。
《マスター》
(なにっ!! いまできてるよ!? やれてるじゃん!? 遅いけどさっ)
《マスターは昨日、教会に行こうと考えていらっしゃいました。向かいましょう》
(えぇぇ・・・・うん、確かに。旅と街に関する助言をもらおうと考えてたよ。教会の人に話を聞きたいの?)
《はい。それもありますが、マスターの記憶によると教会には蔵書があります。そちらが主目的です》
(そんなん読んでる時間ないよ。こんな田舎だから冊数が多くはないけど、1日や2日でこなせる量でもない)
《問題ありません。
私が読みます。マスターはページをめくるだけで結構です》
マスターとはいったい・・・・
この後もアイに何度も指摘されつつ教会へと足を運ぶ。
教会では聖職者の大先生に街での暮らしと風土、習慣、斡旋所の概要、注意点などを聞いた。とても有意義な時間だった。
その後、急かしてくるアイに押され本を閲覧させてもらう。田舎のくせに100冊を超える量があり、アイを喜ばせていた。次から次へと読み進むアイ。オレはページをめくるだけの道具になりさがっていた。
しかも読むスピードがとんでもなく、ページをめくるのが間に合わない。道具としてさえ活躍できていなかった。
あまりにも、次!マスター次!と言ってくるから、身体強化してページをめくったら魔素が無駄に減るといって怒られた。
1時間ほどかけて20冊弱をめくり終える。あまりにも長くペラペラしてると怪しまれるかもしれないので、ここらで終了する。また見せてもらいに来る、と告げて施設に帰った。
教会の蔵書なんて宗教的に偏りすぎた内容じゃなかった? と聞いたら、
そういうデータとして取り込むので問題ない。
教会らしく神話、寓話、童話の類が多かった。
それらはこの世界の成り立ち、歴史を読み解く上で大きく役立つ。
ということだった。
アイは終始ご機嫌で饒舌だった。
多くを語りかけてくれたが、特に丹田の運用については才能があるとベタ褒めしてくれた。今朝、会話をし始めた時は機械的で冷めた反応しかなかったが、随分進化したようだ。
翌日。
家事手伝いと読書を終える。その流れのまま森に入り、設置した罠を確認。獲物を回収する。
もちろん全てを訓練しながら行っている。訓練にも苦労しているが、身体強化を使用していないことも苦しい。
身体が重い。
いや本来ならこれが普通なんだけどね?便利なものがあれば使わずにいられないのが人だよね。
(アイ、身体強化つかっちゃだめかな?)
《あと数日、記憶のスキャンが終わるまでおまちください。
それに身体強化なしの魔素器官の稼働観察は、今後機会が極端に減る可能性が有ります。ゆえに良いデータになります》
(ふむ。あと数日なのか。オレの記憶のスキャン、そんなはやく終わるの? 2人まとめて数十年分あるハズだが?)
《作業の98%はアドレッシングです。
簡単に言うと、必要な時にすぐ呼び出せるようにしるしをつけているだけです。
優先度の高い項目に限りパターン化や最適化等を実施し、データベースに落としています。
例を挙げるなら言語学習です》
(説明がやさしい! わかりやすいっ! そんなことも学習するんだな、助かるよ)
《マスターのレベルに合わせるのが現在の最適解ですので》
(おいっ! KUTSUJYOKUだなっ! マスターの威厳はどこっ)
もちろん馬鹿にしてるような雰囲気は伝わってこないし、オレだって本気で怒っているわけじゃない。会話しながら、じゃれあっているようなものだ。アイの学習が進み、操る言葉が巧みになり、感情?らしきものの芽生えもある。ノリツッコミが大好物のオレにとって朗報だ。
仲良くやっていきたいものだ。
身体強化はあきらめて、森の中で獲物を捌いた後、ほどよい岩に座り休憩する。
(話したいことがあるんだがいいか?もちろん訓練はできる限り並行して行うから。
陸の方の記憶、『ラノベ』ってジャンルの本、小説や漫画あるよな?
オレ、この手の物語が好きでさ、いろいろやりたいことがあるのよ)
《マスターの趣味の把握は優先度大のため、完璧に網羅しております。
なんでもご希望をお伝えください。AI魔法が生まれた経緯を鑑みれば、私はその実現のためにあると言っても過言ではありません》
(話がはやくていいな。手始めにステータスとレベルを見れないかと思って)
《表示します》
(えっ!?)
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【名前】リク
【LV】2
HP 22/22
MP 16/50
STR 5
VIT 6
DEX 12
AGI 12
INT 2
【スキル】身体強化[2] 弓[3] 算術[1]
【ユニーク】魔素視
【称号】転生者
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「キタコレェェェェェーーーーーーー」
「ふぉぉおぉっぉぉおおぉーーーーー」
「かつる! コレでかつる!」
「INTが2! 2て!?
オレそんなダメな子? プギャーー!!!!!!」
《マスター、声が出てます。
斬新な表現がいくつもありますね。記録し学習します》
オレは感動している。
信じられないが涙さえ流している。
この世界で記憶を取り戻し、初めて試したこと。
初めて唱えた言葉。
何も起きなくて落ち込んだ。
せっかく転生できたのに、思ったものではなかった。
テンプレを信じたかった。
それが今やどうだ!
《マスター》
(あいよ! どうした! ついにステータスを手に入れたオレ様を呼んだか!?)
《このステータスは私がラノベを参考にイメージ表示しているものです。
数値などは適当です》
(・・・っっっ)
オレはその場に倒れた。
その場に倒れたままオレはアイに悪態をつく。
(てめーふざけんなよっ!それだけはやっちゃいけねー冗談だっ
適当な数字だと!?
割と作りこまれてて信じちまったよ!
めちゃめちゃ勉強してんな!
許さない、ぜ っ た い に 許さない)
うおおおお、マジでゆるせねぇぜ。なんなんだこの仕打ちは、怒り心頭にハッスルファイアーだ。漫画なら今オレの背後に『ゴゴゴゴゴゴ・・・』って効果音出てる。問い詰める。とことん問い詰める。
責任を取ってもらう!
《マスター、お待ちください。誤解です。
私の理解ではステータスとは『そういうもの』です。
数値自体に精度は全くありません。
少し長くなりますが聞いてくださいますか?》
(・・・・・・)
オレはしょうがなく、一応聞く姿勢をとる。
《例えばです。
STR10の人とSTR15の人が腕相撲をします。
ステータス差はとても大きく1.5倍です。
STR15の人が100%勝利しますか?
答えは否です。
体調、精神状態、自分のおかれた状況、周囲の環境。
経験、技術、相手との立場の違い、勝負に賭けられた物の価値。
あらゆる要素が複雑に絡んで結果は出ます。
数字はおおよその目安、いえ、本来人の在り様を数字だけでは表せない。
『そういうもの』なのです。
これだけではありません。HPというパラメータがあります。
HPがゼロになる、イコール死とされます。
HPが残り1では? 瀕死と表現されます。
体を半分削られたとします。
その時HPは半分でしょうか?
答えは否です。
体を半分もなくした時点で即死です。即死した時HPは半分なのかゼロなのか。
では傷の程度、深さのみを数値化してHPとしますか?
体を欠損した時はすべて即死として?
HPが1減る程度の微細な傷をHP100の人が100回受けたら死亡でしょうか?
このように単純数値化は困難で、あやふやなのです。
つまり『そういうもの』です。
さきほど適当な数字だとお怒りでしたね。
適当とは『適している』『当たっている』という意味です。
表示したパラメータは、マスターの大量の実測データを基礎とし、多くのラノベデータから算出、学習した上で『そういうもの』補正を加えた数値です。
『そういうもの』なので正確ではありませんし、全てを表現はできません。
ですが統計的には正確なので、なんとなくそれらしい数字にはなっているのです。
いかがでしょうか?》
(・・・・・・・・・・・・イヤだ)
(そんな小難しいことは聞きたくない、わかりたくない、イヤなんだ。
レベルあげてステータス強化して、オレTueeeeしたいだけなの!
キャッキャウフフしたいだけなのっ
なんならうまく騙してくれよ!
それになんだよっ それらしい数字になってるのかよっ
INT2も間違いじゃないのかよっ)
《あ、すいません。
それはマスターを煽るためにわざと下げました。
テヘペロッ》
オレは再びその場に倒れて気絶した。




