表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/33

《課題達成時には提供できるようにご褒美の準備をしておきます。

 では第一段階を始めましょう。

 自然回復量の増加と、周囲からの吸収です》


(どんな方法? どうすればいい?)


《まずはご自分で模索するべきかと》


(少し待ってほしい。考えをまとめる)



 さて。もちろん方法なんて知らない。

 ではどうする?

 いつも通りだ。オレにはラノベという転生教本がある。テンプレートに従うだけだ。少し考えた後、アイに伝える。



(アイ。魔素枯渇すると、オレの回復量もしくは容量、またはその両方が変化する可能性がある。昨日の夜の再現だ。処理速度を上げて調整してみてくれ)


《承知しました。

 安全な速度で魔素を減らしていき、すべての変化を詳細に記録します。

 また、万が一に備え魔素視の制御を共有しておきます。マスターが気絶してしまうと、マスターの眼を通して見えている魔素が見えなくなってしまいますので》


(もちろんいいよ。いちいち断らなくてもいいさ。実験中、眼をずっと開けてた方がいい?)


《不要です。

 普段はマスターの視界を利用していますが、本来魔素視は眼を必要としません。気絶した場合を考慮しているのは、制御権の委譲自体ができなくなりますので。

 では魔素を消費していきます。安全な場所にお座りください》



 アイは宣言した通り、ゆっくりと魔素を使っているようだ。消費が進むにつれ、少しづつ違和感を感じ始める。なんだろうな?


 例えるなら肌寒い空気の中で一枚づつ衣服を脱いでいくような。一歩一歩何かが迫ってくるような。

 明確な悪い予感といったものではない。じっとりと汗ばむような薄い焦燥感が、ひとつ、またひとつと積み重なっていく。


 考えがうまくまとまらない。回復の変化を体感できるかもしれないチャンスを無駄にしてしまいそうだ。なんとか集中を・・・・


 進む先に何やら危なそうな崖が見え隠れし始めたか? と思った矢先。



《マスター、ほぼ1割です。これ以上は危険があるため停止します。

 こちらで調整して3割まで戻します。

 全てのデータは完璧に取得しました。解析を始めますのでこのまま休息を》


「ふぅぅ~~~~」



 思わず深くため息がでてしまった。息を整えながら、アイの反応を待つ。



《マスター、ご慧眼です。

 保有している魔素がゼロに近づくほど、単位あたりの回復量に増加が見られました。

 ただし保有量が元にもどるにつれて、回復量も元に戻っていく模様です。

 また、容量の増加は観測されていません》



 枯渇を繰り返せばワンチャン、容量大化あると思ったんだがダメだったようだ。この世界、微妙にテンプレ匂わせておいて、でも肝心な所は外してくるよな?

 ドラ〇ンボー〇方式の鍛錬法は通用しないか。



《マスター、報告します。

 ただ今の実験により、魔素回復を促すプロセスが観測できました。

 へその少し下、体の奥側で魔素が活発に動いてい・・・・


「はいでましたー。『丹田』いただきました!」


《その部位で螺旋に近い円運動が見られました。あきらかにこの円運動に比例して回復量が増加しています。動きを再現しますので目を閉じ、体を楽にし、感じてください》


「『丹田に意識を集中し気を練るのじゃ!』的なアレですねっっ」


《マスター、声に出てます。しかも前の世界の言語です。

 周囲に言葉を理解すると思われる生物の反応はいないので聞かれはしないですが、ご注意を》


(マジ? 日本語使ってた?)


《当初からマスターとの意志疎通には日本語を使用しているのでその影響と思われます。

 現世界のリクが使う大陸共通言語に比べて日本語は圧倒的に複雑であり、かつ語彙が極めて豊富。同じ意味を持つ別の単語が複数存在もします。あげくのはてに多くの他国言語を取り入れた上に『カタカナ』、さらに表意文字『漢字』まで使い、習得難易度はマウントフジです。

 反面、言葉や表現方法が多彩なため感情の起伏や心情、意図、ニュアンスなどを正しく伝えるという目的に対してとても有効です。ゆえにマスターと私の間の通信には日本語を使用しています。


 開始します、集中してください》


(バッチこ~い)



 目を閉じて、体の中心に意識をむけ集中力を高めていく。


 自分の体の中や外にある魔素の存在が、だんだんはっきりしてくる。目で視ているわけではなく、感じているんだと今なら理解できる。


 魔素はオレの身体中を駆け巡り、体の表面で一時的に滞留し、再び中にもどって動き続けている。まるで心臓からでた血液が全身を巡るのと同じように。

 体の外に出た魔素の中でほんの少量ではあるが、そのまま周りに拡散していってしまうものもあるようだ。


 体の中心部にいくつか魔素が集中してる部分がある。その中でも特に丹田が多い。

 丹田で輝きながらクルクルと忙しなく動く魔素をじっくりと観察する。



(これは円というより・・・螺旋・・・・いやメビウスの輪?)



《マスター、マスター!

 集中しすぎです! ある種のトランス状態になっています。

 力が強くなりすぎて、こちらで魔素の制御ができなくなっています!

 すぐに中止してください!》


(いや・・・大丈夫だ。なんとなくわかったから)



 丹田だけにフォーカスしていた状態から全体に視点を戻し、身体中を巡る流れを把握する。その流れを途中で丹田に誘導し、『メビウスの輪』に沿って動かし勢いをつける。

 十分に勢いがついたら再度体にもどしてやる。


 これの繰り返しだ。


 輪を出てきた魔素は明らかに増加しており、魔素視にはとても濃く、強く輝いて見える。続けるとこの輝きが体全体をどんどん満たしていく。




 夢中になって循環させていたが、気が付くともう限界まで達していたようだ。



(どうかな? 一応満タンまでやってみたけど)



《驚異的な回復力です。ただし常用はできません。

 効果を得るまでに時間がかかりすぎます。また、集中するあまり無防備になっていました》


(時間はどれくらいだった?)


《1時間を超えています。特別な環境の時以外は使用しないでください》


(1時間!? ちょっとやりすぎたか。すげーおもしろくて止められなくてさ。テヘペロッ)


《時間と場所を選ぶとはいえ、フル回復の手段を得たのです。悪くない収穫です。

 正直に言いますといきなりこれほどの成果を得られるとは想定していませんでした。極めて有益なデータが取得でき、魔素器官の機能構造もおおよそは理解できました。これにより普段使いの回復法と、その訓練法を構築しました》


(あんまり難しくしないでね)


《簡単ではないでしょう。しかし心配無用です。

 自転車と同じです。1度コツを掴んで慣れてしまえばもう心配いらないはずです》


(人間の機微にずいぶん聡くなったな!?)


《魔素が一旦回復したため、記憶処理に充てています。学習速度が上がっています。

 さて訓練法についてです。

 今の実験においてマスターは、魔素器官に体中の魔素を流し込み、なんらかの回転運動をさせた後再び取り出す、という作業を行っていましたね?》


(魔素器官って丹田の部分のこと? うんだいたいそんな感じ)


《ではこれからは魔素を送り込まないままに、回転運動だけさせてみてください。

 最初はゆっくりでも、うまくいかなくても構いません。

 最終的には息をするように無意識にできるようにお願いします》


(ずっとアイドリングさせておく、みたいなことか。

 そんなんでうまくいくかな?ギアいれてアクセル踏まなきゃ進まないよな?)


《アイドリングとは言い得て妙です。確かに直接的な推進力は生まれません。

 しかしながらアイドリング中はそのエネルギーを利用して少量ですが充電しています。アクセルを踏む時は、充電して貯めた物を大量に消費し一気に速度を出すときです》


(車に例えたのは失敗だったか。なんだかうまく言いくるめられた気がする。とにかくやってみるよ)


《あくまで自然に、無意識を目指してください。

 常に別の事を行いながら同時に訓練してください。

 この手法がうまくいけば、自然回復量の増加に目処がつきます》


(あと吸収ってのはどうしよう)


《ひとまずこの訓練に集中です。

 先ほどの実験データを分析したところ、現在知り得ているいかなる周囲環境であっても、吸収訓練に適したものが無いとの推測が出ています。誤解を恐れず言うなら、もっと濃い魔素環境が必要です。いま訓練しても失敗する可能性が高いと思われます。今後の検討課題とします。


 では魔素器官を回しながら帰りましょう》

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ