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「みんな~聞いてくれ。混乱してボーっとしてたせいで待たせてしまったな。すげー事が続けて起こったからショックでね。
アイ、毎度で悪いが今日起こった重要な事、覚えておく事、やるべき事、今後やっていくべき事、VRでお願い。なんとなくでいいから優先順位も」
1 新ダンジョンの実地確認
2 管理ゲート課へ新ダンジョンの探査報告
3 幼女ルルをパーティーに迎える
4 ルルと一緒に最下層へ転移できる
5 フィールド階層の設置
6 世界中へのファストトラベル
7 交換品の検討
8 敵意ある他者の転移対策
9 F5級以下の魔石が作れる ←NEW!
10 L45白虎の魔獣呼び出し可 ←NEW!
「うむ、わかりやすい。何気に新項目があるが今はスルーだ。ところで報告にはまだ時間が早いよな?入ダンしてからある程度時間が経たないと本当に調べたのかってなるし」
《そうですね。その時間までは実地確認をして過ごしましょう》
「管理ゲート課へ報告する内容はまとまってる?オレも考えた方がいい?どこまで報告するのかとか」
《検討済みで問題ありません。準備万端いつでもできます》
「よしっ、今日は1~3番をやる。まずは実地確認だ!1層へいこう」
やる事が決まればオレ達のフットワークは軽い。ルル達は最下層で留守番だ。幼女もだよ。
まずは1層へ転移し階段を確認。階段は地上からの入り口のすぐそばにある。学生時代を過ごした校舎の階段を思い出した。あんな構造になってる。丸くない螺旋階段だね。あとは段数が少し多いかな?確かに9層までどんどん降りていけたよ。
各階層毎にしっかりと時間をかけて探索する。マップに異常が無い事や魔獣の挙動に異常がないかなどだ。魔石ドロップも当然チェックだ。
ただし1~5層くらいだとドロップ率がかなり悪いので、報告用としてルルにもう何個かGとFを作成してもらおう。よく考えたらドロップ用の魔石を量産する必要がなくなったのかもな。ルルが自分で作れるんだから。
9層まで試したら1層まで戻って転移で11層へ。
「オレ達にとって11層といえば紫のアイツだったけど、ここに普通のボアを配置したのか」
《ここから後も比較的レベルの低い魔獣が続きます。空気中の魔素の濃度も低く調整してあります。今日はこの11層の探索までで十分でしょう》
「時間もちょうどいいんだな?よし最下層に一旦戻ってルル達に話そう。んで地上に帰りますか~」
《はい。今日は課長補佐を奮起させてこちらの思惑通りに動くように誘導します。手伝ってくださいね》
お、おい、なんだか不穏だな?大丈夫か?
毎度の課長補佐と面会している。何もない会議室だ。
「ご無事でなによりです。いかがでしたか」
「大きく変わってましたよ。物理構造的な話ではなく内容的にです。ざっと書き記してきたのでお渡ししますね」
アイに相談しながら書いたメモを渡す。ちゃんと今後の展開を踏まえて考えられた物だ。その内容はザックリこんな事だった。
1~9層の階段の位置
8層を除く1~9層のマップに変化なし
敵の種類の変化と大幅な弱体化
階層別の敵種類、特徴、強さ
ドロップする魔石の種類とドロップ率の変化
このダンジョンで初出のG級魔石
「え!?今日だけで9層まで・・・こ、これだけの情報を約半日で?」
「内容をよく見てください。階段の位置の変更のおかげで階層を降りるのはすぐできますし、マップに変化が無いと言っても2割程度を調べて同じだったのでそう判定した、と書いてありますよね?」
「い、いや、それでも尋常ではないと考えますが」
「探索者の力を見くびってはいけませんよ、ハハハッ」
「あの・・こ、この『グレイウルフの強さを20とした時、2層のラビットは3』というのは一体」
「読んで時のごとし、ですよ。強さの目安です」
「えぇぇ・・・それと『ドロップ率2%』なんて数字をどうやって取得したのでしょう。何体の討伐を行ったのですか。さすがに時間が足りない筈ですが」
「しっかりしてくださいよ課長補佐さん。よく読んでみてください。『100体討伐』『全ての層で討伐はしていない』『深層から浅層へドロップ率が順次下がる傾向を見出し推定算出』ですよ?1層の2%なんて実測してられませんよ。計算ですよ計算」
「は、はぁ・・・」
「疑う姿勢は大事ですがもっと優先すべき事があります。私も報告をすると約束した以上自信を持って書いていますし、嘘も見栄もないと誓います。ひとまず信じて動いてくれませんか」
「ひとまず動く・・・これほどの情報、後追い検証するだけでも年単位になりそうです。とても嬉しくありがたいことなのに悲鳴を上げたい気分です」
「1年なんてそんな悠長な事言っていては駄目です。今渡したデータ分だけでも今日中にレポート化して上へあげてください。至急チームを作って検証を1週間以内でお願いします」
「1週間などと!いくらなんでも無理です」
「完全な検証を求めてるわけじゃないんですよ。最初は実験数を減らしたりして簡単な確認だけでもいい。第一次検証とでも銘打っておけば十分です。追加検証しますってね。なんだったら追加検証込みの予測数字をさも本物の結果のように表示してしまっていい」
「な、何を言ってるんですか。そんなことは、いえそれより何故そのように急がせるのですか」
「内容を見て気が付きませんか?本当に?もしそうなら今後の接し方を考えさせていただきますよ。さぁ落ち着いて見直してください。気になるところは?」
「・・・・・・・」
課長補佐は顔を真っ青にして必死にメモを見ているな。ちょっとかわいそうだったかもしれん。アイがガンガン脅せってテキスト打ってくるからさ~。多少のウソもいいから大袈裟な事を言ってこっちの思惑を通せってさ。
「・・・8層のことでしょうか」
「そんな小さな声で!もっと自信を持って!正解ですよ、やりましたね。それが世間に広がったらどんな事が予想されますか?」
「・・・騒ぎになって注目を浴びます。このダンジョンを訪れる人が増えるかもしれません」
「かもじゃないですよ!絶対増えます。課長補佐さん想像していてください。噂を聞いてやってきた多くの人、この受け付けに来てまず何を言いますか?」
「・・・私だったら詳しい情報を求めます」
「ね?絶対的に情報が欲しいんですよ。でもこのままでは何も答えられない。わかりませ~ん、調べてもいませ~んって答えるんですか。その中にちょっと頭の回るヤツがいたら、全力で検証してデータを他所で発表して自分の手柄にしてしまいますよ。上の偉い人達はそれを見て『なんでキールのダンジョン情報をキールの管理部の者が知らないんだ』ってなる。その時課長補佐さんはどう言い訳するんです?」
「そ、そんな・・・」
「さっきも言いましたがおおよそのデータでいいんですよ。第一次報告で。先に出したモン勝ちなんです。過去の文献を探さないと行けないほどのレアケースなんでしょ?誰よりも先んじて声を大にして主張するんですよ。それだけで出世確定です。乗るしかないこのビッグウェーブに!」
「わ、わたしが出世なんて・・・」
「欲が無いのが美徳なんて考えてませんよね?もしそうなら大間違いです。あなたがこの件に関して積極的に動かないことは、管理ゲート課キール支部の、ひいてはキールの街全体の発展を阻害することになるんですよ。わかってます?あなたが出世して、そして率先してこの街を引っ張るんです」
「・・・おおげさすぎまs、カンベンしてくだしゃひ」
「8層の実益が広まればこの街は変わりますよ。人が増えます。人が増えれば物も増えます。当然カネも動いて経済が回ります。わからないとは言わせませんよ」
「・・・・・・・」
「とにかく時間との戦いなんです。もう始まってるんですよ?今日からまともに寝られる日はずっと先です。休日なんて言葉は辞書から削除です。とりあえず検証専任チームを作ってください。代表はあなたで」
「・・・・・・・」
「これだけ言ってもダメですか。しょうがないですね切り札を見せましょう。1週間以内に8層のマップを完成させて提出しますよ。マッピングしながら討伐して1000体レベルのドロップ率データも出します。1~3層までのマップはあるんですよね?『同じマップである』事の確認だけなんだし魔獣も弱いので領軍でも1日で終わるでしょ?これで1~3と8層のマップとドロップ率データが1週間で発表できますよ。それ以外の層についてだって今日わたしが渡したデータを補足的に加えればいい」
「・・・・・・・」
「今日中のレポート化と提出、まずはこの一歩からお願いします。本当に嫌なら無理にとは言いません。あなたの気持ち次第ですよ。では今日はこれで失礼します」
オレはやり過ぎだとアイに文句を言いながら受け付けで魔石を換金していた。そこへ奥から課長補佐が青い顔をしてまるで幽鬼のようにノッソリとやってくる。そして低い声で一言。
「リク様・・やってみます・・やらせてください」




