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 その幼女は両手をオレに向けて広げながら走り寄ってくる。



「ルルをだっこ~~にゃ」


「まてまてまてぇーーーー!ストップ!」



 オレは念のため魔杖を構えて幼女を止める。幼女は素直に止まってくれた。

 背の高さはオレのヒザよりやや高いくらいかな。ほっそりした体つきにキラキラしてる金髪のショートヘア。やたらと大きいクリクリとした目。よく見ると漫画に出てくるネコ目だなコレ。

 最も特徴的なのはもちろん猫耳だ。薄い茶色で小さくて目立たないが金髪によく合ってる。シッポはないな?



「ネコみみのちいさいおんなの子ですの。はかいりょくが、はかいりょくが・・」


「なとなーくルルだとわかってる。わかってるけどいきなり過ぎるだろ。ちょっと説明とかしろって」


「ルル面倒にゃぁ~。リクは目でばっかり視てるにゃ」


《確かに魔素視ならいつもと変わらないルルですね》


「わかったにゃ?もういいにゃ?ではルルだっこーー」



 オレが魔杖を引くとルルは止めた足を再び進めて飛びついてくる。



「にゃはぁぁぁ~人間の身体での抱っこはヤバイにゃ~ルルとろけるにゃ」


「おい、ドサクサに紛れて魔素持っていくなよ。まぁいいから説明しなって」


《お待ちを。埒があかないので接触回線を使ってわたしからルルに高速で問います。そのまま抱きしめて接触を保っていてください》



 ミューズは抱っこの順番を待っていたようだが、今の言葉を聞いていつものようにイジけている。







《それでは今回の出来事を説明しますね。


 まずは肝心な事から。改築は無事問題なく成功。設計通りです。もちろん後ほど実地確認などはするべきでしょう。いままでと違ってこれほど時間が掛かったのは変更の規模の大きさゆえですね。当然と言えば当然です。


 階段だけを追加して階層を稼ぐのはかなりのイレギュラーだったようです。神格が上がったと言っても仮の状態であり、呼び出す魔獣のレベル上限が解放された程度でした。

 今回は正しく階層を追加したと認められているようで12層から22層へと一気にランクアップしたと解釈されています。途中の15層までの分もまとめられてしまってますね。ゆえにルルの神格が大幅に上がり、出来る事が一気に増えた模様です。

 いまその出来る事をルルにリサーチ中ですが、ルル本人でさえ把握できていません。ルル本人とシステム常駐のアイに共同で探らせています。


 いくつか既に判明しています。あらかじめ言っておきます。驚きますよ?マスターは泣いて喜ぶでしょう。期待してください。その期待をさらに上回るでしょうから》


「やけに風呂敷広げるな。そういう時は大概逆のパターンになるのがお約束で、なんだ全然たいした事ないじゃんってなるぜ?」


《その腕に抱いている幼女は?それだけでも驚嘆ですが?》


「はっ!たしかにぃぃーー!!」


《続けます。人間に近い姿を取れるようになったのも神格が上がったからです。この幼女は神であるルル本体ではありません。分身のようなモノだそうです。存在としては亜神に近く魔獣の進化系でもあります。ミューズと同類でしょう。私の予測ではミューズも将来的に亜神になる可能性が高いです。


 この幼女型ルルは黒ネコルルに代ってわたし達についてくるそうです。いままではマスターの傍にいることを優先してダンジョンから出ていましたが、本当は黒ネコルルはこの最下層に居た方が都合がいいそうです。

 ただし少々問題があります。幼女ルルは黒ネコルルのような振る舞いはできません。自由に存在を消したり現わしたり、つまり自分を見せたり見せなかったりができない。パーティーメンバーとして扱う必要があります》


「へぇそうなのか。一緒に来るのは構わないがまた戸籍と探索者の許可証の流れやるのかぁ?あとこのダンジョンから出る方法もだな。なんか既に懐かしいな。ミューズの時を思い出す」


《いいえ不要です。戸籍等は既に手配済だそうです。神と国の上部は繋がっているようですね。この国では狩猟の大神とその眷属神の中で上位の神なら大概の要望は通るみたいですよ。昨日の夜ルルが帰ってこなかったのは、その件で大神に会っていたからだそうです》


「もはやオレ達の持つ神のイメージではないな。めちゃ普通に人とコミュニケーション取ってるやん。しかも国の上層部となんて。俗物かよっ!」


《はい。現にルルはわたし達と親しくしていますしね。それともう一つ。今思いついたのですが、ルルのこのパーティーへの加入は管理ゲート課経由で加入させることにしますので覚えておいてください》


「そうなの?わかったよ。なんか狙ってるんでしょ」


「まえの黒ネコちゃんもだっこしたいのですぅ~もういないのですかぁ。ミューズはさびしぃのです」


「たまになら本体とルル変わるにゃ~」


「わ~ぃ、やくそくですよぉ?」


「入れ替わりができるのなら、最初だけ黒ネコで外にでてくれないか?んで外で交代すればダンジョン脱出の寸劇をしなくていいからさ~」


「もちろんにゃ、ルルわかったにゃ」


「ルルが幼女でついてくるのはいい。人目の無い所でネコに入れ替わるのもいい。戸籍も探索者証も問題ない。でもその猫耳はマズイぜ?」


《ルル、耳を変えられますか?無理?キャラが立たなくなる?でしたらミューズと同じようにフード付きコートかオーバーオールを常用して耳を隠しましょうか。服の変更ならできますね?》


「・・・あ、いま気が付いた。パーティーメンバーが美女に幼女。これってチーレム化してるのでは。やっふぅぅぅ~~テンプレしてるぜぇぇ!」


《新ルルについてさらに続けますよ》


「ちょっとアイさん、流さないでよ。テンプレ達成してるんだぜ?」


《静かに。次は超目玉ですよ。ダンジョンに追加する階層のタイプに屋外型が加わりました》


「ん?・・ちょっとまて・・・

 ・・・・・・!!?


 な、な、な、なんだってぇぇぇぇ~~!

 アレだよな?階段を降りたら、草原が広がっているとか、そういう感じの」


《そのアレです。フィールド型とか自然型、天然型とも呼べるでしょう》


「そ、そいつはやべぇ・・ど、どうしよう。何からやればいいんだ」


《落ち着いてください。すぐにどうこうする必要はありません。今日の改築の結果も見ていないのに気が早いです。少し先にしましょう。いいですね?》


「わ、わかった。フィールド型は今の改築が落ちついてから」


《はいそうですね。フィールド型は今までの通路型と違って出入口を複数持てるのでダンジョン構造をよくよく把握した上で工夫すれば、面白い運用など期待できるでしょう。その分階層コストは高いようですが》



 その時オレは何かのエネルギーみたいなモノが飛んでくるのを感じた。オレの頭の中にだ。なんだコレは?以前にも体験したような、してないような。既視感と違和感がブレンドされて頭の中で蠢いている。だけど一瞬の間に溶けてなくなっていってしまう。

 なくなってしまうと、そもそもそんな事があったこと自体が記憶から薄れていく。何も気にしなくていい、どうでもいい事だったという感触を残して。



「アイ。まった。なんか思いついたぞ。フィールド型は出入口を複数持てるんだよな?例えば2層をフィールド型に変更したとする。当然1層と3層はもともとつながっているままだ。んでさらに2層に出入口を増やしてそれを20層につなぐ、これができるんだよな?」


《本当にやるかどうかはさておき、はいできる筈です。2層を介して1と3と20層がつながりますね》


「今まで漠然とだけどこう思っていたんだ。2層は1層の下にあり、1層は2層の上にあるんだと」


《??・・・続けてください》


「そうじゃなかった。各層は個別に独立してて物理的な位置関係はない。つながってるかそうでないかだけだ。1層の階段を降りたら5層に出ても別に問題ない」


《・・・現実では異常ですがダンジョン的にはおかしくないですね。ですがそれにどのような意味が?》


「今の例で話す。2層はフィールド型で1層と3層をつないでいる。2層に出入口を増やしてそれをさっきは20層につなぐと言ったけど別にどこでもいいよな?物理的な距離は関係ないんだし。例えばオレ達のホテルの部屋につなげば?」


《・・・・・!?ま、まさか、そんなことは無理なのでは。え?出入口が複数とはそういう意味?階層間だけではなくて外界に対しても?》


「どうだ?できないか?」


「え?え?ぇ?なに?なにがぁ?ミューズにもおしえてぇ~」



 皆で話していると黒ネコルルも現れて話に加わって来た。そして幼女と並ぶ。



「リクすごいにゃ。ボクもいま言われて気が付いたにゃ。今日出来るようににゃったばかりですぐ思いつけるにゃんて」


《そもそも下位の神のダンジョンには外界との出入口は一つだけという縛りがあったようですね。昨日までは思いついても出来なかった。今日フィールド型の説明から発想を得て思い至ったわけですか。

 しかも都合よく今日からルルの神格が上がり実行可能になった。いえ実行可能になったからフィールド型の説明を聞くことができたと思うべきですかね。

 確かに外界への出入り口が複数設置可能になっているようです。随分と都合の良い事が重なって来ましたね。これをうまく利用すれば世界中のどこでもすぐ行けてしまう。ファストトラベル装置の完成です》




 オレ、ワープしちゃうぜ!!

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