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 ミューズのやる気がすごい。なにかのスイッチが入ったらしい。それを見ていたオレも負けていられない。なんだかんだ言って楽しんだモノ勝ちだよな。オレも楽しくなってきたぞ。



「やってやんよ!どんどん来い!」


「おぉ~!ミューズもやっちゃいますぅ」


《盛り上がってますがミューズ。あなたはもうレベル31です。ここまでの何戦かは魔杖の試し打ちでしたから仕方ありませんが、基本的に経験値が消えてしまうので倒すタイミングが難しいですよ》


「ぇ~どうすればいいですかぁ」


《私が手を出した後に討伐すればよいのです》


「んじゃこうしたらどうかな。アイが手を出した熊にVR表示で色でも付ければわかりやすいよな」


「てんさいあらわる!りくさましゅてきぃ~」


《悪くないですね。採用します。ではミューズは白熊のみ討伐可としましょう。マスターは当然どちらでも構いませんが黒熊を優先で》



 ミューズと二人、競い合いうように熊を倒していく。もちろんミューズは白熊だけなので手を出すまでに少しタイムラグが生まれて不利だけどね。

 ルルも魔獣の召喚にかなり慣れて来て、オレ達二人と阿吽の呼吸だ。いいところで過不足なく3~5体ずつ呼び出してくれる。それを二人で叩くわけだがすごい処理スピードだ。

 ここから調子にのって魔獣変換前の神の力を枯渇寸前まで魔獣の生産に使ってしまった。オレのレベルが36になった所で一旦休憩する。魔獣変換前の力の貯金がほぼなくなってしまったが、その分変換後の神の力は9倍に増えている。



《マスターのレベル34から36までで107体を討伐。う~ん?計算と少しズレていますね。ふむ、ミューズ、一体ミスしましたね?》


「てへぺろっ」


《107体でおおよそ4700万の神の力を得ました。戦闘時間は12分半ほど。二人でですが実に7秒で1体倒しています。計算していてだんだん恐ろしくなってきました。一か月ぐらい真面目にやればルルは大神にも匹敵するのではと》


「YOU!なっちゃいなよ、BIG-GODにさっ!」


《ネタが古い上にセンシティブで最悪です。触れるべきではありません》


「ゴメンて、悪かったよ。じゃー回復すっから。その後またやろうぜ。みんなは休憩しててくれ」



 30分程の時間をかけて全回復法。ルルに渡して魔獣変換を二人で討伐。これを2回繰り返しレベル38になったところで本日は終了する。

 ホテルに帰って寝る直前くらいにみんなと話し合い、深夜に7層分追加しておくことにした。明日になれば全22層になっている予定だ。そして明日からは階層追加ではなく、階層を改築するための力を貯めていくことにした。







 階層を改築するための力の貯金の1日目。階層は22層になっている。当然呼び出せる魔獣の上限はL45のハズだ。もはや人類で討伐できる魔獣ではないだろう。

 呼び出せる魔獣のレベルだけでなく他にも出来る事は増えているようだ。神格が上がって何が変わったか興味があるところだ。だがここで問題が発生する。


 ルルによるとL45の魔獣は白い森虎になるらしいんだがどうも呼び出せないらしい。神格は満たしているが何かが足りない気がするとのことだ。もしかしたら亜神ではないかとも言っている。亜神とは神になりかけている半神のような存在らしい。ルル自身も通った道だそうだ。

 この話を聞いてアイがその魔獣にL45の白虎と名付けていた。()()()()な名前で少し笑った。


 では逆にルルに呼び出せる魔獣はと尋ねるとL38のフォレストタイガーとL40のブラックタイガーだと言う。これはアイが勝手に呼んでる名前ではなく、森深くに住むそういう名前の虎が本当にいるそうだ。

 ブラックタイガーはフォレストタイガーの亜種であり、人の味を覚えてしまった獰猛で危険な虎だ。とても希少らしい。もちろんダンジョンに呼び出すそれとは姿だけが一緒で強さは雲泥の差だ。


 まずはL38フォレストタイガーを1体を相手にして様子を見る。これは大量に倒した後でアイがまとめたデータなので結果論になるが、L38フォレストタイガーのステータスは平均20程度であった。

 対するオレも同じL38。一番低い段階の強化を行ってステータス平均30だ。レベルは同じだがステータスが段違いなので、当然楽勝で安全域を守っているつもりだった。

 やっぱり油断はいけないね。思わぬ苦戦をすることになる。


 何があった?


 特殊スキルのような技を使ってきたんだよ。魔獣のスキルってさ、アイが観察してきたように『噛みつき』とか『体当たり』みたいにその魔獣の種族の一般的な行動範囲内だったんだよ。いままではね。

 そうではない特別なスキルと呼べる行動は初めての事だった。驚いたし久しぶりにまともなダメージをもらったよ。あれれ、実質初ダメージだっけ?


 後でアイが俊足[5]と命名し分類したそのスキルは一瞬にして距離を移動するものだ。ゲームプレイヤーだったら縮地とでも言っていたかもしれないな。

 とにかく初見でこの技は回避できなくて何度か喰らったよ。アイによるとオレの防御幕の魔素が5%ぐらい削られたらしい。つまり20回もらっちゃうと生の身体に直撃も有り得るわけだ。死んじゃうね。マジ恐怖。

 特に俊足[5]で尚且ついい所に噛みつかれた時はヤバかった。ゲームならクリティカルだな。一気に15%程度も減ったらしいよ。牙みたいな一点に力が集中する攻撃は魔素の防御を抜いてくるね。噛み傷がついて出血した。

 さすがにその時はミューズが参戦してカバーしてくれて、注意をミューズに逸らした虎の不意を突いてオレが瞬殺した。


 でもそのうちに目が慣れてきたし、魔素視で見てると準備動作が丸わかりなことに気が付く。さらに直線移動しかできないこと、連続で使用できない事が判明して問題なく討伐できるようになった。あっという間にザコ落ちだ。ただ乱戦は難しいかもしれないな?


 このL38フォレストタイガーをメインに進めていく。まずはオレ自身をL40にした。その後慎重にミューズをパワーレベリングしていく。あっとう間にミューズL38の出来上がりだ。

 当然次はL40のブラックタイガーとなるはずだったが、新たなスキルの存在を危惧して中止する。だって致命的なスキルとかあるかもしれないじゃん。毒とか睡眠とか麻痺とか石化とかさ。よほどの事が無い限りL38フォレストタイガーで回していくことになった。


 ここまで来たら量産体制が確立できたに等しい。オレは全回復と戦闘を繰り返すしミューズは戦闘と休憩の繰り返しだ。こんな感じで一日目を終了した。経験値的にミューズだけでは討伐できない事がくやしい。効率がかなり落ちてるが仕方ない。多少なりともオレが手を出さないといけないからね。



 ここからはダイジェストになる。


 貯金の二日目。想定外のトラブルが起きたのは一日目だけだった。よく言えば安定したダンジョン活動で、悪く言えば刺激のない退屈な戦闘ばかりで飽き飽きだ。前にも言ったことあるかもだけど嫌じゃないよ?レベル上げってそういうもんだから。

 俊足[5]はもう絶対に当たらない。別の魔獣が類似の技を使ってきたとしても対処できると思う。戦闘中に魔素視を維持することを覚えたよ。そうすれば技の発動が予想できるからね。痛い目を見ないと人は学ばないもんだ。逆に言うと痛い目にあったから戦闘中に魔素視を維持することを覚えたわけだ。

 この日はL41まで上がり終了。L42にかなり近いL41のハズだ。


 貯金の三日目。もはやルーティン化した作業である。ひたすら同じ事の繰り返しだ。戦闘中の魔素視の維持に慣れてきて自然体に近くなる。技だけじゃなく魔獣の次の行動がなんとなくわかるようになってきた。そのことをアイに言ったら、その技能を使いこなしたらスキル欄に追記してくれるそうだ。やったぜ!その日はL42で終了した。



 流れのまま帰る準備をしようとしていると、アイがやりたい事があると協力を要請してくる。もちろん否は無いので話を聞く。



《まずはルル。現在呼び出し可能な魔獣の種族、種類、レベルなどの全データを教えてください。大量のデータになると思われますので、いつものようにまとめてやり取りしましょうか。マスター、ルルとの接触通信が必要です。ルルに触ってください》


「わかった。ミューズ聞いてただろ?ルルを渡すんだ。いつまでも抱っこを独占するなよ」


「むぅ~」



 オレがルルを抱いてナデナデしている間、アイはルルとずっと交信していたようだ。5分ほど経った頃、どうやら作業は終わったらしく次の指示を出してくる。



《ルル。このダンジョンのシステムの機能に入らせて欲しいのです》


「にゃ?またアレをやるにゃ?」


《察しがよいですねその通りです。歓迎できないのは承知しています。今後、このダンジョンの改築を進める上で大きく役立つと確信しています。ルルの不利になるような事はないと誓います》


「もういまさらにゃりにぃ~。しょうがないにゃ」


《ありがとうございます。内容について補足します。ここまでずっと魔獣を呼び出してレベルを上げて神の力を稼いできました。呼び出せる魔獣の種類とレベルにやや不便さを感じていませんでしたか?その呼び出せる種類に幅を持たせたいのです。そのための観察と解析です。

 ダンジョンシステムの中に入った私が自由に機能を使用できればとも思いますが、実際そんな事は有り得ません。仮にも神の権能なのですから。システムの内容をよく調べて助言する程度であくまで実行するのは神であるルルです。

 ドッペルゲンガーの時を思い出してください。私が神の権能を使用したように感じているかもしれませんが、実際は利用しただけであり実行したのはこのダンジョンのシステムであり神なのです。私の力など砂粒ほどでありそれに比べて神の力のなんと壮大なことでしょう。宇宙かよっ!です》



 アイの言葉は理路整然としていて明快だ。もはや美しくさえある。

 宇宙かよっ!がなければね。

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