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オレの今の役目は魔素をルルに貢ぐことだ。ルルのおやつ程度の量じゃないぜ?ダンジョンが一件建っちまうくらいのトンデモ量だ。それがどれくらいだって?知らんっ!
必要な分ならどんだけでもやってやる。貢いだ先のご褒美がスゴイんだ。どうやらこのダンジョンを好きに改造できちゃいそうなんだよ。ヤバクネぇ?いままでオレTueee的な物語に寄せて走ってきたけど、ここにきてダンジョン運営系もやれそうなんだよ。
もちろん今でもオレTueeeが一番だよ?でもたまに違う漫画だって読むし違うゲームだってやるじゃん。
ダンジョン運営系ってさ、なんつーかいろいろ「お得」に感じるんだよ。まず自分の好きに階層構成していくところが箱庭系のゲーム感覚だし、作ったダンジョンへ探索者が入ってくる部分はタワーディフェンスゲームの要素に通じてるだろ。
あとは貯めたDPを使ってランダム要素の高いアイテムを手にれるとこなんかそのまんまガチャゲーだしさぁ。たぶんちゃんと考えればもっと色々な楽しみがあるんだろう。
まぁ何が言いたいかってさ、ダンジョン改築にちっと本気だすってこと。そのためにはきっちり努力だってしてやるさ。
やりたいことを思いっきりやるためには、やりたくないことも思いっきりやんなきゃいけないんだ。
わかってるぜ先生、名言だよな。全回復法に集中だっ!じゃんじゃん魔素を生産するぜ。そんだけじゃねぇ。もっと上手くできるようになってやる。そして貯めまくったDPで爆買いだ。
あ、いま思いついたんだけど、魔素を使って魔獣を作ったり階層を変更したり以外になにかできないかな?定番なら武器防具アクセサリに交換とかさ。貴重な薬品とかアイテムとか。ここにきてレアアイテムの殿堂エリクサとか来ないかな。まぁいまはいいや。
さぁルルよ、受け取るがいい。本気のオレの生産量を甘く見るなよ。
そしてがんばってるのはオレだけじゃない。アイもミューズもだ。ミューズはさっそく保護強化の練習を始めてる。魔素視でちらっと見ていたが苦労してるのがすぐわかる。今日初めて魔素を見たんだから当然だ。でも表情はいつになく真剣だよ。なんかありがとう、って感じ。これはオレのわがままだしな。
《今のマスターの気持ちをミューズに伝えておきました。もともとやる気でしたがさらに煽っておきました。もはや魂を燃やし尽くす勢いです。期待できます》
「お、おぅ。ほどほどにな・・・」
もちろんアイだってやってくれている。自分を3つに分けて、ミューズ、オレ、ルル、って並列に動いてるんだってさ。八面六臂の大活躍だぜ。ついさっき頼んだばかりなのにすでにミューズの鍛錬は始まってるし、ルルからの情報収集は終わってて今後のプランも設計済だってさ。
唯一ルルだけが部屋の端っこに行って惰眠を貪ってるな。ぬぅ、でもカワイイから許す。ネコは正義。
こうしてしばらくのあいだ魔素生産と鍛錬と睡眠に努力した後、ここまで来る途中の11層で手に入れた少しの魔石を持って本日は帰宅となった。
ルルはめちゃ普通についてきたが、オレ達以外には姿を見えないようにしていたようだ。ホテルの部屋に帰った後、ミューズにしこたまかわいがられていたが、オレの方が抱かれ心地がいいらしく冷たく振られていた。
そんな様子を見ながらもアイは鬼教官なのでミューズに今日の訓練を復習させていたよ。ミューズは泣きながら木の棒を握っていた。オレはオレで全回復法を実行している。なんとダンジョン以外でも魔素をルルに渡せるんだ。オレは驚いたけどルルは当たり前でしょって雰囲気だった。
いつもに増して今日という日は濃い一日だった。新武器を使い始め、他の転生者に遭遇し、ダンマスに会う。普通の物語なら話を分けてちゃんとそれぞれの見せ場を作るもんだ。やれやれ。
その日の夜はルルがオレのベッドで一緒に寝ると言い出し、それに対抗したミューズもオレの布団に入ってきた。オレは興奮してガチガチに緊張していたが、いつの間にか眠りに落ちていた。
おかしくねぇ?
もしかしてアイ、オレになんかしてないか?これに関しては前科があるからな。あの10層の時のさ。問い詰めてもアイはとぼけるばかり。
次の日、朝5時に起床してみなでメシを食う。みな=二人だけどね、ハハッ。メシを食った後の休憩中もオレは全回復法を続行だ。1時間ほどしてダンジョンに向かい昨日と同じように作業を再開。
ミューズはかなり苦戦しているようだ。オレの魔素視だと昨日からほぼ進展が無いように見える。逆にオレの方はかなり効率が上がってる。もはや驚きの進化レベルだな。
何を変えた?
始めは丹田における回転速度や方向、回転幅なんかに拘って細かく実験していたがイマイチだったよ。多少の改善につながったけどね。まぁ数パーセントかな?
こりゃいかんと思って大胆にアプローチを変えてみた。ここで『吸収』の登場だ。オレってば吸収は苦手だったよね?そうその通り。正確に言うと吸収じゃない、発想元が吸収だっただけだ。
まわりにある魔素を丹田に無理矢理押し込んで、自分の魔素を加えて回してやったんだ。アイが危険性を訴えてきたがオレに不安はなかった。もちろんちょいと工夫もしてる。取り込む時に自分の魔素で周りの魔素を包んでやった。これで吸収はできてはいないけど中に取り込めるようになったんだ。
そして丹田で回す時はその包装に使った自分の魔素ごとぶん回す。これでうまく行ってしまったよ。ワハハハ。卵白を泡立てるシーンを思い出したよ。やったことないけどイメージ的にね。
これでまわりの魔素が枯渇しない限り全回復法が途切れることがなくなった。大量に回して大量に渡しても、種魔素は周りにいくらでもあるからな。オレは包装用の自分の魔素を少し確保しておくだけでいい。あとは全部渡してしまう。
そうすると次の段階は全回復法自体の時短が課題になりそうだ。少しずつ改善していこうと思う。
そんなこんなで数時間、魔素を生産し続ける。当然ミューズは鍛錬してるしルルは寝てる。ミューズの方がかなり旗色が悪いようだ。ほぼ進歩が無いらしい。全員ルルのところに集まって休憩しながら作戦会議だ。
アイが思い切って方針の転換を告げる。魔素は結構溜まってるので魔獣を呼び出すことにしたらしい。つまりミューズは実践訓練に移行だ!
呼び出す魔獣はダンジョンベアーでLV22に相当するらしい。熊だな。ただし呼び出すルルの感覚なので本当にその通り出てくるかは未確認。当然ミューズが闘うが最初の数戦はオレがサブで待機しておく作戦だ。
休憩を終え12層の大部屋の中央にミューズを配置し木の棒を構えさせる。オレはある程度離れて待機。弓か木の棒かで迷ったが即応性を考えて木の棒を持つ。ルルは大部屋からの隠し通路で上から見学。アイはミューズにVR中継を続けている。
アイがルルに合図を出して部屋の中央にダンジョンベアーを出現させた。突然現れたダンジョンベアーは熊としては小ぶりな体格でスタンダードな黒毛、模様はなくシンプルだ。ポップの影響だろうかその場で一瞬だけフリーズしている。
それを見逃すほどミューズはボケちゃいない。あらかじめ施しておいた身体強化でぶん殴りにいく。同時にオレは注意深く魔素視を行いこの敵が想定外の強さではないと判断。少しだけ緊張を解く。
ミューズの動きが速い!あっという間に接敵し頭部に強烈な一打を送り込む。右上から左下への袈裟懸けだ。しかし敵もさるもの頭部への一撃を腕でカバーしてくる。が、ミューズの圧倒的な腕力と強化された木の棒が腕のガードを吹き飛ばしそのまま頭部へ炸裂。やや浅かったようでダンジョンベアーはふらつくも未だ倒れない。
ミューズはそれを見て振り切った木の棒をとって返し、今度は棒の逆側の端で左下から右上へ袈裟懸けを重ねる。まるで燕返しの様な切り返しにダンジョンベアーは何もできない。今度こそまともに頭部に入ったようであっけなく消えて行く。
さぁどうだ!!!
一瞬のラグの後、産まれ出た魔素塊はフラフラとミューズに近寄り・・・吸い込まれた!
「やったーー!!」
「わーぃ、わーぃ」
「にゃ~ん」
《ふふ、やりましたね第一段階突破です。ですが保護強化は相変わらずですので油断しないように。せっかくVRで魔素が見える中の戦闘なのですから活かして下さい》
飛び上がって喜んでいたミューズはしゅ~んとなってる。
アイさん容赦ないっす!




