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 私が聞き出した答えを繋ぎ合わせ、推定を加えて組み立てていくとこのような話になります。


 人が神に願いを請うて祈りと信仰を捧げる。神は人の願いを聞き届けさらなる信仰を求める。この願いと信仰のサイクルが思想ではなく実在しているのがこの世界です。人々は神の存在を信じているのではなく()()()()()のです。


 大昔はこのサイクルを利用して信仰心によるエネルギー収集を行っていました。信仰心と魔素は密接に関係があったとされています。信仰心が魔素を動かし、その魔素が神々に届いてエネルギーとなっていたのでしょう。しかしこの方法は非常に効率が悪かったようですね。せっかく集めたエネルギーを願いを聞くためにまた消費してしまうからです。とはいえある程度願いを聞き届けないと信仰が続かない。このジレンマと効率の悪さに辟易した神々はよりよい手段、よりよいサイクルを模索していました。


 そんな時にある者が大地に満ちる豊富な力『地脈』に目をつけます。なんとかしてこの力を転用できないかと試行錯誤した結果新しい仕組みが生まれます。このサイクルの『願い』を魔石に『信仰』を魔獣討伐にする。こうして出来たのがダンジョンなのです。願いと信仰のサイクルが魔石と討伐のサイクルに置き換わった新しい形なのでした。


 この時点では今後ダンジョンが爆発的に普及し、まるでそれと交代するかのように信仰が薄れていくことを誰も予想していません。


 ダンジョンの良い点はリソースが地脈であるので神々の力を使う必要がないところです。一度しっかりとしたダンジョンを作ってしまえば後は延々とエネルギーが集まり続けるのです。これは画期的な発明でした。当時の神々はこぞってダンジョン建設に心血を注いだでしょう。

 人々も現在とは違って魔素との親和性が高く、比較的簡単に強くなって魔石を手に入れる事が出来ていました。ダンジョンは空前のブームとなり大量の魔石が産出されます。その影響で高品質の魔石が低価格で手に入るようになり、それにつられて魔道具もより安くより便利に進化していきます。

 経済とは興味深いもので魔石に端を発した好景気はあっという間に関連品へと普及し、さらにその関連品へと普及の波が広がっていきます。こうして次々と波が広がった結果、社会全体が経済的繁栄を享受しました。


 好況な経済がしばらく続いた後、当然来るべき事がやってきます。おわかりですね?そう不景気です。この空前の魔石バブルの時代はバブル崩壊と言う形で幕を閉じたのでした。こんなところにもサイクルはあるものですね。

 バブル崩壊の影響を最も大きく受けた魔石は価格が大暴落につぐ大暴落。誰もダンジョンへ入らなくなってしまいます。人がいなくなればエネルギーが手に入らず、エネルギーが無ければ良いダンジョンを作る事ができない。ダンジョンが無ければさらに人は来なくなる。まさに負のスパイラル状態。

 バブルの最初期に大きなダンジョンを建設できた一部の神だけが力を増やし続け、それ以外の神は燻り続けるという格差神界の到来です。現代における大神とその他の神との差はそうやって生まれたのではと推測しています。これが最低でも二千年以上前の話になります。


 一方で人はダンジョンに入らなくなった上に信仰も失くしてしまいました。さほど必要とされなくなった魔素に対する親和性をどんどん失っていきます。そのまま永い年月が過ぎた結果人は魔素を感じる事がなくなり、あまつさえその存在自体も忘れ去っていきました。

 一般人にとって魔素は未知のものになり、ダンジョンというものは極一部の特殊な人間が魔石を求めて探索を行う危険な場所、という漠然としたイメージの物に成り下がりました。


 こんな現代の状況の中、若手の小神であるルルが焦りと憤りを感じていたのは至極当然と言えるでしょう。それゆえ可能性が無限大のマスターの魔素に一も二もなく飛びついてきたのでした。



 ここまで背景となる物語を出来るだけ簡略化し現代の事象に置き換えてお伝えしてきましたがいかがですか。クドくて長すぎたでしょうか。ササッと読み飛ばされている気配をなんとなく感じています。

 問題ありません飛ばしてください。つらつらと書いてある内容はこの物語の主題に沿った典型的でありふれた(テンプレート)物ですから。

 ああ、いけませんね。マスターにメタ発言は禁止されていたのでした。忘れてください。



 マスターの魔素に魅了されたルルから引き続き情報を引き出していきます。マスターの魔素の価値についてです。端的に結論から言いますとマスターの魔素は神でした。


 つまりマスターは神。


 失礼。今の部分も忘れてください。その価値に言及する前におさらいをしておきましょう。無限に近い地脈の力を効率良く神の力(エネルギー)に変換するのがこのダンジョンシステムです。この変換率を聞き出すことで神の力とマスターの魔素の効果的な運用を検討します。


 100の地脈のパワーと10の神の力、あわせて110の力で魔獣を産み出すことができます。それが討伐されれば90の神の力と討伐者に与えられる魔素塊10が得られます。残った10の力は変換損失分です。いま挙げた数字は相対値であり絶対値として誤解しないようにお願いしますね。全ての魔獣が110のコストで生産できるわけではありません。


 一方、ルルによるとマスターの魔素1は神の力1000に相当します。マスターの魔素1をルルに渡して地脈の力と併せると110の魔獣を100体産み出せるのです。その100体を全て討伐した場合、手にする神の力は9000に跳ね上がります。想像していたモノと桁が2つ違いました。うれしい驚きです。さすが私のマスターです。

 おわかりでしょうか?マスターの魔素1全てをそのまま神の力にしてしまうと1000ですが、魔獣変換すれば9倍の9000になるのです。恐ろしい変換効率です。それだけ地脈は強くかつ豊富だということなのでしょうか。注意点としては魔獣変換して得た神の力を再度魔獣変換することはできないようです。無限ループは不可能なようですね。

 とにかく魔獣変換は9倍の効率だということだけ理解してください。数字を細かく書いてしまいましたがこれだけ抑えていただければ十分です。


 ここまで情報が確定してしまえば方針も定まりました。しばらくの間は魔獣を生産し続けて討伐していきます。その先において貯めた神の力を使い、ダンジョンの改築を行っていくことにします。

 魔獣の討伐に際しては当然レベル上げも兼ねますし、不信感を与えない程度の適切さで魔石も納入する必要があるでしょう。


 マスターにおいても全回復専任の方針は変更。レベル上げも行ってもらいます。マスターのレベルが上がるということは魔素容量が上がっていることを意味します。魔素容量が上がれば全回復における単位あたり回復量も比例して増えるのでより効率化できるでしょう。ただし最初だけはある程度の神の力を貯める必要があり、マスターは全回復に集中してもらうことになりますね。


 マスターのレベル上げもできることになり、同時に最高効率であることも満たしている。ふむ、大変よろしい。急ぎマスターに報告し褒めてもらいましょう。いえ、少しだけイジワルしようかしら。


 ちなみに階層における通路構成の変更は数百万のオーダーで神の力が求められ、階層自体の追加は数千万のオーダーのようです。はるか遠いようですがマスターとミューズのレベルが上がれば現実的な数字になるでしょう。ダンジョンなんていう物を創り出せる神の力も畏怖すべき物ですが、それの1000倍の価値を持つマスターの魔素とはいったい何なのか。


 そして次がルルへの質問の最終段階になります。生産可能な魔獣の種類とその強さです。さすが森の獣を統べる神、生産可能な魔獣は全て森に住む獣の類となるようです。代表的なモノは兎の種族、狼の種族、猪の種族、熊の種族といったところでした。

 それぞれの種族にさらに複数の種が存在しており、ある程度の段階的な強さを持つようです。このダンジョンのボアを思い出してみれば把握し易いですね。まさにあの仕様なのでしょう。紫だけは例外な気もしますが。


 初期段階としてミューズのレベル上げに適した魔獣を検討してみます。現在のミューズは生まれた時のままのレベル19です。必ずミューズより強い敵が必要ですからレベル21~22程度の魔獣が理想でしょうか。魔素容量表記で1300~1500といったところでしょうか。

 一方マスターのレベルは現在22なので容量で言うと1520に相当します。つまりマスターと同じ魔素容量の魔獣を選出すればいいわけですね。最初なので分かり易いのは助かります。主にルル側の方が、ですけど。


 さて、手に入れるべき情報を手に入れましたし方針も全て決まりました。リソースを分けた3人の手伝いに回ることにしましょう。

 私の論理回路は一番の鬼門であるミューズ側のヘルプに回るよう結論付けてきます。しかし感情が論理を抑えてマスター側に来てしまいました。マスターに話したい、反応を見たい、褒めてもらいたい、ボケツッコミもしたい。いったい私はどうしてしまったのか。何故こうも簡単に論理を否定するのか。あ、いえ、実際は否定できなかったので最終判断中のステータスをループさせ実効的に保留しているだけでしたが。

 少しでもマスター側に近づくために無駄に高度な処理をしています。素早くマスター側の私と合流してマスターの様子を観察したい。ミューズ側に行くのが効率的だと理解しつつもできない。なんなのでしょう、この無駄を無駄とも思わせない高ぶった感情は。まるで恋する乙女のようです。







 あっ

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