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「ちょっといいかな?」



 突然背後から声がかかる。有り得ない。つい最近まで7層が最高到達層だったんだ。ここまで到達する奴がそうそういるとは思えない。アニソンの時みたいにアイの空耳イタズラと言われた方が納得できる。だがダンジョンでアイはそんなふざけた真似はしない。


 オレとミューズは瞬時に振り返り武器を構える。そのまま少しづつ後ろに下がり距離を稼ぐ。後ろと言ってもダンジョンの奥に進む方向なので不利だ。唯一の逃げ道である階段にはソイツがいる。

 ソイツの見た目は普通の人間だ。しかしこの場所で普通の見た目だと却って異常なんだ。まず武器を持って無いし荷物さえ無い。服だって街着だろ。12層までやって来ておいて手ぶら?絶対にあり得ない。怪しさしかない。



《マスター、最大級の警戒が必要です。私の反響定位に反応がありません。目の前にした今現在もです。放った魔素があの場で消失していますので隠蔽ではありませんし同時に幻でもないはずです。異常の極みです。それに聞きましたか?日本語です。こちらはわからないフリをして大陸共通語を》


「何者だっ」オレは共通語で声を出す。


「ごめんごめん。そりゃ警戒するよね。大陸共通語に戻すしこのままの距離でいいから聞いてほしい」



 そう言って階段の途中で足を止めて両手を挙げる。争う気が無いことを身振りで伝えてくるが、依然として怪しさ満載だ。取り立てて整った顔でも大きく崩れてもいない特徴の無い顔。日本人によくあるノッペリとした顔でひどく印象が薄い。背もオレよりは低いだろうが小さいとまでは言えない程度。



「ボクの名はヒロシ。わかるとは思うけど日本人だよ。言葉もそうだしこの黒髪もね。当然転生者であの白い空間も経験してる。突然信じるのは難しいかもだけどこちらから敵対的な行動は絶対しない。いまもその気なら不意打ちできたよ、ね?川崎陸くん」



 相手はかなりの情報を持ってるな。川崎陸だって?そこまで知ってるとはね。わからないフリするのはかえってマズいのか?クソっやりにくいな。突然すぎるぜ。



「・・・こんな場所で背後から声がすれば普通は警戒する。用件は?」


「おお、驚かないね。ボク以外の他の転生者に会ったのかな」


「さぁな」



 その若い男はリクと同じ特徴的な黒髪を片手でかきあげ、ほんの少しの微笑を見せる。



《マスター、いまの質問は何かおかしい。問いかけには極力答えないように》


「安心して。危害を加えたり騙したり、何かを奪ったりしない。こちらから話をするので聞いてもらうだけ。ね、リクくんに得しかないでしょ?」


「・・・・・」


「今日は初回だし特別サービスだ。このダンジョンについて説明するよ。ダンジョンが神の手によって作られたって聞いたことあるよね。あ~いいのいいの、返事はいいから。神っていうのはたくさん存在してて大神のような有名なモノからもっと小さい無名なモノもいるんだ。

 このダンジョンを創造した神は狩猟の大神の眷属神で、まだ若い神なんだよ。なので今はこの上の11層で終わりなんだ。若くてまだ力が小さくてダンジョンだって浅くなるってこと。それがダンジョンマスターをやってるんだよ。日本人のゲーム経験やファンタジー小説の知識があれば理解できるよね。

 そしてこの12層はダンジョンコアの役目を持ってて破壊されたりイジられるとダンジョンが壊れちゃうんだ。小神とはいえ神は神。ダンジョンを壊して悪い関係になりたくないよね。そういう細かい事を知らないと思って今日は言いに来たんだよ。その先は部屋になってるけど何もない。行ってもいいけどあまり無体な真似はしないでね」


「アンタは神の事情に詳しいんだな」


「こんなことくらい国の上層部ならみんな知ってるさ」


「へぇ~上層部なのか」


「ふふ、いいよ乗ってあげる。そうだよある国のね。このダンジョンを出て地上を歩いて身元が割れたらちょいと騒ぎになるかな。手続きしてない不法入国中だしね」


「どこの国だ。どうやってこのダンジョンに入ったんだ」


「グイグイくるねぇ。魔道王国だよ。入り方は秘密。君の出身は?この国なの?」


「・・・・そうかもね」


「やだなぁ警戒しすぎだよ。この世界での君の経歴くらいすぐ調べられるよ。面倒だからしないけど」


「アンタはいつからこの世界に?戻る方法はないってことか」


「ずっと昔だよ。戻る方法は今のところ知らない。ねぇこっちにも質問させてよ。ギブ&テイクでいこうよ」


「・・・いいぜ、答えるかどうかはわからんけど」


「このダンジョンにはなぜ来たの?」


「レベル上げだ」《マ、マスター!!》


「えぇっ!?レベルあるの?も、もしかしてレベルとステータス鑑定とかできるの?すごいっすごいっ!ねねボクを鑑定して!どうかな?お金ならいくら払ってもいいから!お金以外でも何でも用意するから!」


「ちっ、ちげーよ。落ち着けよ。アンタもさっき理解を助けるために前の世界のゲーム的な言葉使っただろ?それと一緒で『強くなる』ってのを『レベル上げ』って言っただけだ。ここには魔獣がたくさんいるって聞いたんだ。だからそれを倒せばもしかしたら強くなれるかもって」


「・・・ふ~ん。な~んか怪しいねぇ。一応教えておくけど魔獣を倒しても簡単には強くならないよ」


「アンタは『レベル上げ』しなかったのか」


「いやむか~しにちょっとしてたかな。こっちの番。そのお仲間は?もしかして転生者?」


「見てわかるだろ。『エルフ』だよ」


「ふ~~む。森人がパーティーにいるとはさすがに予想外だな。噂には聞いてたけどとんでもない美人だねぇ・・・えっ!?ウソっこの人魔獣なの!す、すごいねコレ擬態能力なのかな」


(ミューズのことどうやって見破ったんだ、マズイな)

「こいつはオレの仲間だ。手出すなら覚悟しろよ」


「大丈夫大丈夫。でもそっかぁ~うんうん。なんとなくわかっちゃったかな~。君テイマー系の能力なんだろうね。心配しないで手なんか出さないよ。むしろ応援するよ。さてそろそろボクは行くね。長い間いられないんだ。不法入国だからね。ではまた~!あ、強くなりたいなら大神のダンジョンを最奥まで行って神に会うといいよ~」


「あ、おいっ、もうちょっと話を」









「ほんとにもぅ、しつれいな人でしたね!」


《こちらの能力にアタリをつけた途端すぐの帰還。随分自分勝手でわかりやすいお子様ですね。いくつか情報を握られましたがそれ以上にこちらも手に入れました。収支は上々です。ここからは声に出さずに》


(ああ、まず言わせてくれ。ちょーーぜつ、スーパーウルトラすぺしゃるテンプレだったわ。有り得ないぐらいのな。絶対陰謀張り巡らしてるやーーつ!

 でもアイツ極悪タイプちゃうし、肝心な所で失敗するタイプだ。この時点で断言できる。アイツの陰謀成就しない。うん間違いない。アイツがやれって言ったことはなるべくやらないで、やるなって言ったことをやってやろうぜ、へっへっへ)


《私からもいくつか。まとめますね》



 川崎陸の名を知っている以上、神になんらかのツテがあります。転生者の可能性は極めて高いでしょう。こちらの能力を探りに来たということは自分も何らかの能力持ち。私の魔素が消失したことから魔素を吸収し何かに変換する能力だと思われます。会話の間中ずっと観測していましたが、あえて吸収を抑えていた節がありました。『レベル上げ』の話題の瞬間だけ動揺して大きく吸収してしまっていましたよ。その後すぐまた吸収を抑えていました。

 これらの情報からダンジョンという神の領域に入って魔素を吸収することは、そのダンジョンの神にとって失礼かまたは不都合なモノだと推定できます。それなのに大神、小神のどちらも大して敬っていない様子がありました。これはとても悪い兆候です。強烈に自らの鑑定を求めて来た所からも自分の力にかなりの自信を持っている筈です。最悪神に匹敵するレベルで。

 マスターに会いに来る前に念入りにこちらの調査をしてきたと見えます。つまりはっきりとした目的を持って接触してきたに違いありません。目的は当然こちらの情報です。最近仲間になったミューズの情報が無くアセっていたのはご愛敬です。

 そして彼が一番反応し、かつその反応を必死に隠して抑えた場面『他の転生者に会ったか』『さぁな』です。これは非常に興味深い場面でした。導かれる結論は『マスター以外の転生者はおらず、その事をマスターが知っているかどうかが彼の目論見にとって極めて重要』だと愚考します。

 この推論は更にもう一つの推論を生みます。このゲーム的ダンジョンの基本概念は彼のアイデアでしょう。



 彼自身について:

 転生者

 魔道王国の上層部でその中でもかなり上

 魔素を吸収して活かす能力

 転移に近い移動能力

 変身か幻影を纏う能力

 ミューズを見破る能力(その場にいる必要あり)

 神と同等の力を得ているか敵対している

 ゲーム、ファンタジー、ラノベに精通


 目的:

 こちらの状況と能力の把握

 この場所より先に進ませたくない

 大神のダンジョンに潜らせたい


 その他:

 マスター以外に転生者はいない

 ダンジョンの基本は彼のアイデア



(アイ・・・お前は本当にスゴイ。スゴすぎてわからない所だらけだ。全部理解するのはあきらめるが2つだけ教えてくれ。変身能力とオレ以外の転生者がいない部分だ)


《黒髪以外に特徴を完全に排した顔。これは統計データを持っている私にはすぐわかることなんですが作られた顔です。ヒロシなんていう日本人に極めて多い名前は適当な偽名でしょう。

 この場所にどうしても来る必要性があったが、マスターに本当の姿を見せたくなかったので偽名と偽の姿を使用することにした。つまり変身能力を使用していたか幻影を纏っていたと思われます。

 ちなみにその必要性とはミューズを見破った能力に関係するでしょう。ミューズから漏れ出た魔素を吸収した途端『魔獣だ』と発言していました。吸収した魔素の持ち主のデータを読む、といった所でしょうか。能力までは読めていないようですが、最低魔獣か人間かくらいは把握できるのでしょう。能力を使うためには魔素を吸収する必要があるのでわざわざ姿を偽って現場にやって来たわけです。

 次にマスター以外の転生者について。彼の性格は基本子供で自分勝手で自己中心的。一番聞きたいことを一番始めに質問してしまう。そして求めていた回答がすぐ得られたので途端に話題を変えてしまう。

 普通だったら『さぁな』の後でもう少し探りを入れにいきます。そうでないということは『さぁな』の時点で求める回答が得られたのです。その場合の解はたった一つです。

 彼はマスターが()()()()()()()()()()()()()()()()()、『さぁな』から()()()()()()()()()()()()()()()を悟ってほくそ笑んでいたのです》


(奴とオレ、最低二人は転生者がいるよね?)


《彼は間違いなく転生者ですが今はその立ち位置にいないのでしょう。転生者ではなくなるほどの別の地位に今はいる。おそらくやっかいな事になるでしょう。

 彼の言っている転生者という言葉は私たちが言う転生者とは少し違います。何かの役割、役職の名前と推定します。例えば『勇者』のように》





 この人どこの名探偵さん?ヤバクネ?

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