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 新しい部屋を用意してもらうのを待つ間はホテルのロビーでダベっているよ。オレとアイとミューズだ。もちろん見かけ上はオレとミューズだけ。柑橘系ハーブティーも2つ。これマジうまいしクセになるわ。高いけどね。(小声)


 低いテーブルを挟んで長椅子一脚と普通の椅子二脚が並べられている。オレはこの長椅子がソファ感覚に似ていてお気に入りだからいつもコレに座っている。お尻と背中があたる部分がふっわふわで厚めのクッション状になってるんだ。んで長めの椅子はそのクッション部分が長椅子な分長いのね。この世界スプリングがまだ無いらしいからこの『なんちゃってソファ』が最上級だ。知識チートでスプリング開発したら儲けられるかな?



「あ、あの~ミューズさん、近すぎでは?」



 そしてミューズは何故かオレのすぐ左側に座り両腕でオレの左腕を抱いている。別にイヤじゃないよ?むしろ気持ちい・・・うれしいよ。おっぱいは関係ないよ。



「ず~っとりくさまに会えてなかったのでぇ。補充しなぃとなので~」


「な、なにを?」


「りくさま成分を~なのです」


「そ、そう。オレ何か吸われちゃってるのカナ?怖いな~アハハ」


「ぅふふふ~かわいいところもステキ~」


《ミューズ、人前です。程ほどにしなさい。マスターに今日の面談について報告して下さい。口に出す内容には注意して・・・いえやめましょう。私からミューズの中の旧アイに聞いて私から報告しますのでしばらくお待ちください。

 その間に少し我々3人の中の通信について補足しておきます。マスターの口頭発言及び頭の中での発言は瞬時に3人に伝わります。これは私がミューズに伝えているからであり私の内部発言も同様です。一方ミューズからの口頭発言は聞こえていれば当然全員に伝わりますが、内部での発言は旧アイから外部へ伝達する方法が無いので伝わりません。

 私から鼓膜を通してミューズの中にアクセスし、それをマスターに伝えれば可能になります。ただし内部では非常に複雑な処理をしていますのでどうしてもタイムラグが起きます。なんとか改善したいところですがミューズの中の旧アイは魔素が見えず、操れませんので仕方がないのです》


(いつも大変なんだな、ありがとうアイ)


《いえ。では今日のミューズの面談について報告します。戸籍と探索の認可は無事取得。狩猟組合への加入は却下。これはどうやら特定の組合に勢力が偏り過ぎることを嫌がった上層部の意向のようです。

 現在狩猟組合はマスターの活躍により、以前に比べれば勢いをかなり増しています。今までが低い位置にいたようなのでまだまだ中堅クラスですが。ここにワンダラーだとはいえ森人が加わると、その外見だけでも大きな話題となり勢力に影響を与える可能性があります。さらに影響力の偏りという意味では他の組合にも預けにくい。

 そうかといってこの国では組合に所属しないという事もまた難しく、苦肉の策として組合ではなく斡旋所に所属させるようです。非常勤の会計課課長補佐とのことでなんと役職付きです。ヒラにするわけにいかなかったのでしょうから名前だけですね。勤務義務無し報酬無しです。

 次に上層部が知りたがっていたのはマスターとの関係性です。主従とは伝えていますが本当に人族の下に森人が就いているのか真偽を問いたかったのでしょう。これがマスターを同席させたくなかった主な理由と思われます。ちなみにミューズはその問いに『身も心も捧げています』という意味の回答を5分間にわたって早口で語ったそうです。相手は引いていたそ・・・ミューズっ!マスターの耳に息をふきかけないように!やめなさいっ!!

 その後に切り出してきたのは森人の土地との貿易の拡大または条件改善ですね。こちらはミューズが縁が切れていることを強調し即刻切り捨てています。まさに取り付く島が無いといった有様だったようです。

 最後にミューズの実力を知りたがりました。上層部が何より恐れているのはミューズがダンジョン事故などで死亡することです。ミューズの死が森人との関係に悪影響を及ぼす事への心配ですね。これに対しては自分が座っていた重厚な木製の椅子を叩き壊して力を見せつけたようです。しばらくその部屋は無言のままでした》


「ちょっ、やりすぎだろっっ」


「りくさま~お声がでていますょ」


(すまん、でもやりすぎでしょ?)


《確かに否定はできませんが。その質問の前に随分失礼な会話があったので情状酌量とします。内容は明かしませんが遠回しな言葉で性的で下衆なものでした。個人的にはよくやったと褒めてあげてもいいでしょう。本当に人族は度し難い》


(・・・ミューズ、顔は覚えているか?)


《マ、マスター、怒りを抑えてください。思考回路がショートして私の活動に支障が出ています。その者にはジャミングで手ひどい目にあわせておきますのでどうか。マスターはミューズに甘すぎです》


「うれしぃ~。キュン死しそうなのです」


《ともあれ報告すべき内容としては以上です。その他にも質問や会話はありましたが語るべき程ではありませんでした。

 部屋の準備が終わったようですよ。フロントの人がやってきます。さ、二人ともカップを飲み干して。いきましょう》






「うお~~いい部屋だぁぁ」



 前の部屋よりかなり広い。2倍じゃきかないな3倍くらい?たぶんだけど家具もいい物になってるしベッドも大きくなってる。



「って、えっ!?ロビーの長椅子あるじゃん!!!」


《ロビーで索敵しているときに偶々聞き取ったのですが、この椅子の気に入り具合を見ていたスタッフが他の部屋から急遽運び込んだようですよ》


「ぐぅぅぅぅぅう有能!やったぜサイコーー。ってかアイ、索敵してたの?ロビーなのに」


《はい常在戦場です。いつ何があるともわかりませんので。今まで索敵を切らしたことは数度だけしかありません》


「そ、そうか。それにしてもフロントの人、すごすぎでしょ~~」


《同意します。長椅子だけではありません。部屋の隅にヒッソリと置かれている仕切り用の衝立もかなりポイント高いです。用意だけしておいて使うかどうかはこちら次第・・・というわけですか。人の関係性を見抜くことにも長けていますね。こちらのパワーバランスが把握されています》


「衝立?何に使うのん?」


「やだぁ、りくさまぁ~、そんなのいりませんょぅ」


《マスター、お風呂が個室なのですからベッドと着替えくらいしかないのでは?》


「えっ!?あっうん。ベッドは2つだね。べ、べっ別にそんな意識してないよ。いやマジで。いやいやいや、そんな目で見るなって!いや違うから。ホント違うから、ちゃんと衝立は使います。別々のベッドで寝ます」


「ちぇ~がっかりですぅ」


《おふざけはここまでにしましょう。パーティーメンバーとしてミューズに確認すべき事があります。人として共同生活を円滑に行っていくために。また重大な秘密を共有して保持していくために》


「オレもだ、いろいろ聞きたい」


《ではマスターからどうぞ》


「お?ゴホン。え~と、人間としての基本からいこうかな。食べ物はどうなの」


「食べられますしだいすきっ」


《栄養にもエネルギーにもなっていますね?》


「ぃえ~す」


「睡眠はどうなの?いままで夜は村で寝てた?」


「ねてました~ふつぅでしたょ。わたしの中のアイさんが目覚まししてくれます」


《魔素を使わない技能はほぼ全て使える筈です。時計機能以外にもマップ表示機能なども使えますね。ただしマップ情報自体は私がインストールしてあげないといけません》


「旧アイはともかく、普通に人と見分けつかないじゃん。逆にどこが違うかを聞いた方がいいんじゃね」


《そうですね。では旧アイ関連以外で普通の人間との差を言ってみてください》


「は~ぃ、え~~と・・・ケガした時に治りがはやいかも」


《それはマスターをコピーしているからこその特性です。一般人とは違いますが人間との差ではないですね。同様に力が強い、素早いなどもあてはまります》


「んーと、さいきんわかったんですがぁ、つめや髪がのびませ~ん」


「え、どういうことなのソレ」


《それについては予想していました。悪い方向に予想が当たってしまいましたが。おそらくミューズは外見的にも内部的にも年を取りません》


「ええええええぇぇぇーーーー」



 さすがに言葉を失うしかない。

 しばらく沈黙が続く。当人であるミューズさえもだ。



《ダンジョン10層でのコピー作業を解析したところ、コピーした瞬間を留めておくような、誤解を恐れずに言うなら時間を止めるような要素を発見しました。

 でも安心してください。学習や成長は明らかにできています。レベルアップはまだ未確認ですが問題ないと考えています》


「いや安心じゃねーわっ。アイ、おまえ永遠の存在を創造したんだぞ、わかってる?しかも永遠に成長できるんだったら遠い未来は神とかじゃねーかYO」


《あのコピーは神の技術です。もとより神は不滅でしょうし、そうであればその創造物が不滅であっても何ら違和感はありません。私はその技術を利用しただけです。それに不滅といってもより大きな力にならおそらく滅ぼされます。つまり不滅ではあっても不死ではないでしょう》


「・・・何年たっても姿が変わらないって周りに警戒されるとか?」


《そのための森人です。森人は長寿で有名なんですよ》

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