表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/76

50

 何かイベントが発生する時って重なってやってくることない?ひとつひとつは確実にこなせるのに、いっぺんにやってくるもんだからアセる。昔を思い返すとそういう日が不思議と多かった気がする。一日でいいからズレて欲しかった~なんてことが。

 今日がまたその日になった。やるべき事とやりたい事が朝イチから目白押しだ。どうしてもやるべき事からやってしまうのは社会人として当然なのか、ただの小心者なのか。自然とやりたいことか後回しになってしまう。なんか日本人ぽいよね。


 まずは村を出てキールに向かう。オレ一人なら全力疾走だがそういうわけにもいかない。今日からは二人パーティーだからな!ニヤニヤ。一般人から見たらミューズの能力だってブッ飛んでるけど、どう急いだってキールまで数時間はかかる。一般人なら半日から一日だしね。外がまだ薄暗い夜の内から動き出したが、キールに着いたのは普通に朝。

 本当ならミューズからもっと話を聞きたかったが後回しにする。そのまま急いで斡旋所に向かう。人前で話せないことが多すぎてどうしてもね。

 ミューズはフードを被ったままでいさせているので斡旋所の中で若干目立つ。フードを取ったらもっと目立つので仕方がない。急いで受け付けのリオラさんを探しミューズを紹介する。狩猟組合の大規模な仕事があるので、それが終わったら相談できないか交渉する。



「ごめんなさい。上層部との面談予定は変えられないわ。それに元々このひと一人の方が都合がいいみたいなの。リクくんは組合に行って来てちょうだい。心配しないで、悪いようにならないわ。むしろこちらは恐る恐る手探りの対応なんだから。強気でいなさいな」



 一瞬迷ったがアイも大丈夫と言うのでミューズをリオラさんに預ける。くれぐれも発言には気を付けろよ?とアイに伝言させる。本音は一緒についててやりたかったけどこれもまた我慢だ。やるべき事を優先する。

 組合へ走る。到着するとヴィルさんが遅いって怒鳴ってくるが口だけだな。やたら上機嫌だ。上機嫌と言うよりは興奮気味なのかな。作戦も仕込みも完璧らしいしオレの実力もある程度把握してるから成功は約束されてるようなもんだ。今日のこれがうまくいけば今後につながりそうだしね。



「リク。今日は譲るが近いうちに必ず囮役はオレがやるからな」



 あ~はいはい。こっちは名目だけもらえばいいから。どうぞどうぞ。今日はヴィルさんが真似できる範囲で、せいぜいわかり安く良い動きをしてあげよう。しっかりと学ぶんじゃよ、ホッホッホ。

 狩り自体は拍子抜けするほど楽に終わった。まぁアイの助言に従ってポイントへの誘導中に体力を削ってあげたし、足も外からはわからないように弱らせたしね。逆に失敗する方が難しい。

 いずれオレ無しでやる事を考えたらあまりやり過ぎはよくないのでは?とアイに聞いたら、



《確かにその通りですが、今回は『成功体験を共有する』事の方が優先ですので》



 ということだそうだ。ふ~~んって思っただけだったが、組合に帰ってきたらみんな『自分たちの力でグレートボアを倒した』という実感とその喜びで大興奮。組合員同士の連帯感も爆上げ。すごい効果だ。やってよかったよ。

 そして組合ではもう一つイベントが起こっていた。ミューズが上層部との面談を終えて狩猟組合の受け付けの所でオレの帰りを待っていたんだが、バススが完全に恋に落ちてた。あいかわらずフードは被っているが近くでその美しさに気が付いたんだろう。



「リクさんとは、こ、こっ、コイビトなんでしょうクカカぁ」



 なんて不憫な子・・・



 他の組合員がミューズに気が付いて騒ぐ前にヴィルさんに軽く挨拶して急いで帰る。言っておくけどまだ今日は終わってないよ?イベントはどんどん重なる。

 バススがオレ宛の伝言を持ってた。ひとつは整備課だ。武器ができたわけじゃないが相談したいことがあるらしい。もう一つはダンジョン管理ゲート課だ。


 もうこの際だ。こなせるだけイベントこなすぞ。整備課へGO!だ。目的地に向かいながらミューズに今日の結果について最低限の事を聞く。戸籍おっけー、探索者資格おっけー、狩猟組合への所属はダメーって感じらしい。気になるところはあるが全部後で確認だ。最大の目的である戸籍と探索許可があればいい。

 整備課へ到着するとフェラリウスさんが応対してくれる。覚えてるかな?ヒト族ヒト科ドワーフもどきの鍛冶師さんだ。あいかわらず外見はドワーフで間違いない。



「呼び出してスマン。本製作に入る前にどうしても確認しておきたいことがあってな。いくら鉄の棒だといってもこれだけデカくて高価だから気に入ってもらえる物を作りたい。そのために長さと握りの感覚を確かめておきたいんだ。これは木で作った模型のようなものだ、これを使ってくれ」



 そう言ってドワーフもどきはいくつかの木製の棒を差し出す。注文してある長さの120cmで断面が円と八角形のがあるな。それよりかなり短いが握り確認用の直径が違う物も複数ある。短い方のは八角形のみだ。オレ達は初心者なので長さにそれ程こだわりは無い。120cmの方を持って構えたり軽く振り回してすぐOKを出す。大事なのは棒の太さ、つまり握り安さと重さだ。



「太さは慎重に確かめてくれよ。重さが全然違ってくる。武器として使うなら別の武器と言っていいくらいの差だ。下手すると持ち運べなくなるぞ。重さの目安はこの鉄の端材で」


《マスター、鉄の純度にもよりますが直径3cmだと約7kg、直径4cmだと約12kg、直径5cmだと約18kgです》


「ええ、しっかり確認しますよ。ただオレ達は探索者なので重さはさほど問題じゃないんです。むしろ重い方が威力が出る。ミューズ、どの径がいい?」


「断然4cmです。重さは少し物足りませんが握り安さの方が重要だと思いますし背に腹はかえられません」


「完全に同意だ。フェラリウスさん4cm径でお願いします。値段が倍になってもいいので納期を早められませんか」


「倍って・・・倍にしても納期は半分にならんぞ?まぁ最前は尽くす。あと木製の模型は持って帰って触り続けてくれ。何か思いついたり気が変わったらすぐに来てくれ」



 こんな感じでサッと決めてきた。気に入らなければ作り直せばいいしな。さて次へ行こう!ダンジョン管理ゲート課だったな。魔石の買い取り値段UP!のお知らせとかだったら嬉しいんだがなんの用事だろうか。

 全く違った。なんとパーティーメンバー募集の件で面接希望者がいるってさ。ぶっちゃけると完全に忘れていたので一瞬ポカーンとしてしまった。ミューズが既にいることも原因の一つだろう。内心のアセりをなるべく隠しながら日程について相談して8日後とする。

 場所はここキールのダンジョンで1~4層以内で戦闘も有りとした。探索者の選定なんだしそりゃ闘いもありにしないとね。

 ついでに新しいパーティーメンバーとしてミューズを紹介。身分証を渡して手続きをしてもらう。これで次回来た時にすぐ入ダンできる。フードは被っているが体型的にミューズが女性であるとわかるので、受け付けの女性陣の間では剣呑な雰囲気が流れていたようだ。オレは気が付かないフリを貫いて女性陣とは目を合わせないようにしていた。


 これで終わりだな?よ~し帰ろう!


 いや大変だったわ。もう無いよな?大丈夫か?フラグ立ってるか?へし折ったか?・・・うむ平気そうだ。やるべきは全てやった。ホテルへ帰って後回しにしてた色々な事をやろう。やりたかった事ばかりが残ってるよ。何から話そうか考えつつホテルの受け付けへ。



「リク様、お連れ様がいらっしゃるようですが本日のお部屋はいかがいたしましょう?」


「え!?あ~、えっと、急に部屋を増やすって言っても困りますよね?いつからなら2部屋にできそうですか?」


「もちろん本日すぐに対応可能でございます」


「あ~うん、うん、ん~うん。デスヨネー、2部屋お願いします」


「リク様、別々の部屋など有り得ません。私にはリク様のお世話と護衛もありますので。

 受け付けの者、リク様のために最上級の大部屋と最上級のもてなしを用意してください。金に糸目は付けぬ。それだけの価値があるお方です」


「コラーーなに言ってんの!すいません今の無しで。少し大きい部屋かツインルームでお願いしますです。最上級でなくてよいです」


「承知しましたご要望の通りに。ただお連れの麗人、奥方様でいらっしゃいますか?仰る事は全くその通りでございますよ」


「ふふふ、受け付けの者はよく理解できているようです。なかなかによい宿ではありませんか」



 ミューズが超上機嫌だ。おまえチョロすぎ。つーか奥方は否定しないのかよ。



「ありがとうございます。リク様と共にあなた様をお迎えできましたことはこの上ない喜びです。お部屋の準備が整うまであちらのロビースペースでおくつろぎください」



 何の茶番なんだよ。

 ミューズ、どっからそのキャラひり出してきた?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ